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IASBは、自然依存電力を参照する契約についての修正を最終化
iGAAP in Focus財務報告|月刊誌『会計情報』2025年3月号
トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス
注:本資料はDeloitteの IFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。
この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレター1をご参照下さい。
本iGAAP in Focusでは、国際会計基準審議会(IASB)が2024年12月18日に公表した「自然依存電力を参照する契約」に関するIFRS第9号「金融商品」及びIFRS第7号「金融商品:開示」の修正の概要を解説する。
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背景
利害関係者は、IFRS第9号の要求事項を再生可能エネルギーを購入する物理的引渡し契約に適用する場合に、企業が適用上の課題に直面することを指摘していた。これは以下の理由による。
- 再生可能電力の源泉の特徴と、電力が販売される市場の設計及び運営
- 参照する生産施設から生産される電力を生産された時点で購入することを購入者に義務付ける(一般にフィジカル電力購入契約(PPAs)と呼ばれる)という生産量買取(pay-as-produced)の特徴、及び購入者が生産された電力量が生産時における購入者の電力需要と一致しないリスクのほとんどすべてに晒される。
利害関係者は、企業が「バーチャルPPAs」、すなわち参照する生産施設から生産される電力量について実勢市場価格と契約上合意された価格との差額の純額決済を必要とするPPAsに対してどのように会計処理するかについても、IASBが検討することを要請した。
IASBは、この問題を議論し、2024年5月に公開草案「再生可能電力に係る契約」(ED)を公表した。IASBは、EDについて受け取ったコメントを検討した後、これらの修正を最終化することを決定した。
修正点
範囲
本修正は、自然依存電力を参照する契約に適用される。これらの契約は、電力が統制できない自然条件に依存する源泉から生成されるため、企業が基礎となる電力量の変動性に晒されるという契約上の特徴によって特徴付けられる。この変動性は、通常、太陽光及び風力のような再生可能な電力の源泉に関連している。自然依存電力を参照する契約には、自然依存電力を購入又は販売する契約と、そのような電力を参照する金融商品の両方が含まれる。
見解 IASBは、本修正を他の種類の電力契約に拡張するかどうかも検討した。しかし、利害関係者は、他の種類の契約に対して、上記の特徴を有する契約に対するものと同じ懸念を提起しなかった。したがって、IASBは、本修正の範囲を拡張しないことを決定した。 |
「自己使用」の免除
自然依存電力を参照する一部の契約では、発電時に企業が電力を購入し、引渡しを受けることが要求される。当該契約上の特徴により、企業は、電力を使用できない引渡し間隔中に電力を購入することが要求されるリスクに晒される。また、契約に基づいて電力が取引される電力市場の設計及び運用では、指定された時間内に未使用の電力量を売却することが要求されるため、企業は未使用の電力の売却を回避する実際上の能力を有していない可能性がある。新たな適用指針では、企業がIFRS第9号2.4項で自己使用の要求事項を適用する場合、当該売却は、企業の予想する使用の必要に従って保有している契約と必ずしも整合しないわけではないと規定している。企業は、契約期間中の電力の正味購入者であり、将来もそうであると予想する場合、予想する電力使用の必要に従ってそのような契約を締結し、引き続き保有する。企業は、電力を売却したのと同じ市場で未使用の電力の売却を相殺するのに十分な電力を購入する場合、電力の正味の購入者である。
見解 2名のIASBメンバーは、この自己使用免除の拡張に反対した。IFRS第9号に従って、企業は、現金(又は他の金融商品)で純額決済できる非金融商品項目を購入又は売却するデリバティブ契約を公正価値で測定することが要求される。ただし、当該非金融商品項目の受取り(又は引渡し)の目的が、企業の予想される使用(又は購入又は販売)の必要に従っている場合を除く。そのような契約の全部又は一部を純額決済する実務は、受取り時に容易に利用可能な市場で非金融商品項目を売却することを含め、企業の予想される使用に対する受取りの目的と整合しない。彼らの見解では、本修正は誤解を招く情報を生み出す可能性がある。なぜなら、たとえ企業が一定期間について、契約に基づいて引き渡される電力を使用せず、代わりに売却することを合理的な確実性をもって知っている場合であっても、企業はIFRS第9号の当該要求事項から免除されるからである。 |
企業が電力の正味の購入者であるかどうかを判断する際には、企業は、過去、現在、及び予想される将来の合理的な期間にわたる電力取引について、合理的で裏付け可能な情報(過度のコスト又は労力なしで入手可能)を考慮することが要求される。企業は、自然条件の季節的サイクルによる生成が予想される電力量の変動性、及び企業の事業サイクルによる電力需要の変動性を考慮して、「合理的な期間」を識別する。企業が正味の購入者であったかどうかを判断する際には、「合理的な期間」が12か月を超えることは認められない。
見解 IASBは、未使用の電力を売却する企業が少なくとも同量の電力を適切な時期に購入することを確保するための「合理的な期間」の要求事項を含めていた。IASBは、「合理的な期間」を短期間とすることを意図している。EDにおいて、IASBは、合理的な期間として1か月の例を挙げた。しかし、IASBは、電力生成の自然の源泉の季節サイクル及び企業の事業の周期性などの要因が、企業が購入により売却を相殺するのにかかる時間に影響を与える可能性があると指摘した。したがって、IASBは、最長12か月を設定することを決定し、これをフルサイクルと考えている。 |
ヘッジ会計の要求事項
自然依存電力を参照する一部の契約は、予定電力取引のヘッジ手段として指定される場合がある。本修正は、このようなヘッジ関係について、企業がヘッジ手段で参照されている発電設備によって提供されると予想される自然依存電力の変動量と合っている(aligned)予定電力取引の変動量をヘッジ対象として指定することを認めている。IFRS第9号の他のヘッジ会計の要求事項は、このようなヘッジ関係に引き続き適用される。
ヘッジ手段として指定された自然依存電力を参照する契約のキャッシュ・フローが、本修正に従ってヘッジ対象として指定された予定取引の発生を条件としている場合、この予定取引は可能性が非常に高いと推定される。
また、本修正では、IFRS第9号に新たに追加された要求事項に従って、企業が予定電力購入をキャッシュ・フロー・ヘッジの変動名目金額を有するヘッジ対象として指定するための1つの可能な方法を示す例も追加されている。
見解 IASBは、変動電力販売のヘッジにおいては、販売量と自然依存電力を参照する契約の対象となる電力量とは通常完全に合っており、経済的には数量のミスマッチを通じたヘッジの非有効部分は生じないため、数量の不確実性によるヘッジの非有効部分は生じないことを認識した。しかし、IASBは、予定電力取引に対するヘッジの非有効部分は、特に電力の購入の場合、他の源泉から生じる可能性があると指摘した。したがって、本修正の下でヘッジの非有効部分を算定するために、企業は、実際の経済的影響を表すヘッジ対象とヘッジ手段の価格差異又はその他の差異の測定に含めることとなる。 |
見解 1名のIASBメンバーは、ヘッジ会計の要求事項の修正の拡張に反対した。このIASBメンバーの見解では、企業が自然依存電力を参照する契約の変動数量を指定することが認められるべきであるが、同様の経済的特徴を有する他の契約についてはそうすることを妨げるべきであるという原則に基づく理由はない。したがって、同氏は、ヘッジ会計の変更が要求される場合、これらはIFRS第9号の包括的な修正の一部として検討するべきであると考えている。 |
開示
本修正により、企業は、IFRS第9号の自己使用の要求事項を満たす自然依存電力の購入契約に関する情報を、財務諸表の単一の注記で開示することが要求される。特に、財務諸表の利用者が、これらの契約が将来キャッシュ・フローの金額、時期及び不確実性、及び財務業績に及ぼす影響を理解できるような情報を、企業は開示することが要求される。これらの目的を達成するために、企業は以下を開示することが要求される。
- 企業を以下について晒す契約上の特徴に関する情報
- 基礎となる電力量の変動性
- 企業が電力を使用できない引渡し間隔中に電力を購入することが要求されるリスク
- 報告日時点の契約から生じる未認識のコミットメントに関する情報。以下が含まれる。
- これらの契約に基づく電力の購入から生じる見積り将来キャッシュ・フロー
- 契約が不利になる可能性があるかどうかを企業がどのように評価するのかに関する定性的な情報(この評価を行う際に企業が使用する仮定を含む)
- 報告期間における企業の財務業績への影響に関する定性的及び定量的情報。特に以下の情報。
- 契約に基づいて行われた電力の購入から生じるコスト。当該購入した電力のうち引渡しの時に未使用となった電力の量に関する情報を別個に開示する。
- 未使用電力の売却から生じる収入
- 未使用の電力の売却を相殺するために行う電力の購入から生じるコスト
企業は、キャッシュ・フロー・ヘッジ関係で指定された自然依存電力の購入又は販売契約について、IFRS第7号23A項に従ってヘッジ手段の契約条件について開示する情報を、リスク・カテゴリー別に分解することが要求される。
企業が、(IFRS第9号の自己使用の免除を満たすかどうかに関わらず)企業の電力購入に関して締結された自然依存電力を参照する他の契約に関する情報を財務諸表の他の注記に開示する場合、当該企業は、上記の単一の注記にそれらの注記への相互参照を含めることが要求される。
また、本修正には、開示要求を若干減少させたIFRS第19号「公的説明責任のない子会社:開示」の修正が含まれる。
見解 EDにおいて、IASBは、企業が再生可能電力の契約条件を開示すること、及び純損益を通じて公正価値で測定されない再生可能電力の契約については、報告日における公正価値、又は契約の残存期間にわたり契約における販売者が販売すると見込んでいる又は販売者が購入すると見込んでいる再生可能電力の量のいずれかを開示することを企業に要求すべきであると提案した。利害関係者は、情報の一部が商業的機密であり、他の契約、事象又は取引に対して要求される情報と不釣り合いである可能性があると指摘した。さらに、これらの契約の公正価値の見積りは複雑であり、高いレベルの測定の不確実性の影響を受ける。したがって、IASBは、開示要求を上記のものに限定することを決定した。 |
発効日及び経過措置
本修正は、2026年1月1日以後開始する事業年度から発効する。早期適用は認められる。
IFRS第9号における自己使用免除の修正は、適用開始日(企業が最初に本修正を適用する日)の事実と状況を用いてIAS第8号に従って遡及的に適用することが要求される。適用開始日は、報告期間の期首であり、年次報告期間以外の報告期間である場合がある。
企業は、これらの修正の適用を反映するために過去の期間を修正再表示することを要求されないが、事後的判断を使用せずにそうすることが可能な場合は、修正再表示することが認められる。企業が過去の期間を修正再表示しない場合、以前の帳簿価額とこれらの修正の適用開始日における帳簿価額との差額を、その報告期間の期首の期首剰余金(又は、適切な場合には、資本の他の内訳項目)に認識することが要求される。
自然依存電力を参照する契約が、自己使用の要求事項に対する修正を適用した結果としてIFRS第9号の適用範囲外となる場合、企業は、適用開始日において、IFRS第9号2.5項に従って、この契約を純損益を通じて公正価値で測定するものとして取消不能の指定を行うことが認められる。
企業は、ヘッジ会計の要求事項の修正を、適用開始日以後に指定される新たなヘッジ関係に将来に向かって適用することが要求される。企業は、本修正に従って同じヘッジ手段が新たなヘッジ関係に指定される場合には、適用開始日において、自然依存電力を参照する契約がヘッジ手段として指定されているヘッジ関係を中止することが認められる。
以上
1 英語版ニュースレターについては、IAS Plusのウェブサイトを参照いただきたい。
(https://www.iasplus.com/en/publications/global/newsletters/igaap-in-focus/2025/ppa-amendments)
本記事に関する留意事項
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