調査レポート

ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの醸成

テクノロジー領域での女性人材の採用・リテンションを実現するために

デジタルトランスフォーメーションの加速に伴い、企業内でテクノロジー機能を果たす組織の役割は一層重要性を増しています。企業は高い専門性を備えた希少な人材の獲得競争を迫られていますが、その一方、テクノロジー領域で従事する女性の離職率は男性よりも高く、人材確保を阻害する一因となっています。女性の定着・活躍に向けて、企業はどのような対応をとりえるのか、本稿ではテクノロジー領域を題材に施策とそのポイントについて解説します。

日本語版発行に寄せて

企業が追求すべき価値が、「経済的価値」から「社会的価値」へと変わりつつある。重要な経営アジェンダの一つとしてDiversity&Inclusion(D&I)が認知されて久しいが、近年ではグローバルではもちろん、日本においても「“違い”に応じた異なる対応を行うことで、不当な差が放置される状態を変革すべき(=Equity)」という視点が付加された、Diversty,Equity,Incusion(DEI)が注目を集め、多様な人材が活躍する組織のあり方が改めて問い直されている。

本稿は、人材獲得において厳しい競争を強いられているテクノロジー領域にフォーカスし、優秀人材確保のために必要不可欠な女性の獲得・定着を、如何に進めていくか、その施策例と、あらゆる組織でマイノリティグループの活躍を推進していくために必要なポイントを示唆している。

まず、人材獲得には、雇用と教育の一体化が有効であることが示されている。新卒採用・長期雇用を前提とした日本企業では、「中途採用=即戦力」の前提でタレントマネジメントの仕組みが構築・運用され、中途入社者には思い切った教育投資は行なわれないケースも多い。しかしながら、本稿の例からは、未経験者・ブランクのある人材に対する積極的な教育プログラムの提供が新たな人材プールの開拓や自社・自社ビジネスを理解している元従業員の再入社につながることがわかる。高度な専門性を求められるテクノロジー領域でさえも、未経験者の教育やブランクある人材の再教育が可能であり、その効果が人材獲得のみならず入社後の活躍にもポジティブな影響を及ぼすということであれば、その他の業界・領域においてもぜひ挑戦すべき取り組みであると考えられる。

また、女性が離職せず留まる動機の上位項目として「報酬」「仕事と生活の統合・両立を可能とする柔軟性」があげられている。性差による偏見解消や、家事や育児の責任が重くなりがちである女性の働き方改革に関しては、日本企業でも既にあらゆる施策が打たれている。一方で、ステレオタイプな女性社員像を前提とした施策のままでは、活躍を前提とした定着につながらないということも、実感され始めているのではないだろうか。本稿では「当事者の欲求やニーズを探った上での、よりパーソナライズされたアプローチこそが鍵」との考察が示されている。つまり、「女性だから」ではなく、一人ひとりの「個性」に着目した施策こそが必要であり、女性社員の活躍が少しずつ進みつつある日本企業において、今後のさらなる検討事項として重視すべきポイントである。

歴史的背景や社会構造上の違いの影響も多分にあるものの、日本企業のD&I/DEI推進は、海外企業と比較して後れを取っている。しかしながら、日本よりもD&I/DEI推進が進んでいるであろう海外企業、特に労働市場がグローバルに開かれているテクノロジー領域においても、女性の獲得・定着の課題は日本企業と同様に存在しているのである。その解決に向けた上記のような取り組みは、同じ課題を持つ日本企業でD&I/DEI推進に取り組まれる皆様にも、十分に参考にしていただけるのではないだろうか。

 

解説者紹介:

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
マネジャー 大熊 朋子
※所属・役職は執筆時点の情報です。

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