洞察

病院施設整備のための建設コンサルティング

~ER・BIM・CMの活用~

老朽化した施設の大規模改修や、新築・移転を検討される病院が増えています。しかし病院の特殊性を踏まえて必要な検討の観点を提示し、より良い病院整備に向けた方法論を提案できる人材は限られています。本記事では、一級建築士の建設コンサルタントが、病院整備におけるよくある課題とそのソリューションをご紹介します。

はじめに

医療法改正により、各都道府県において地域医療構想の策定・検討が進む中、急性期・慢性期病床の過剰、回復期病床は不足状態など各地域の状況が明らかになりつつあります。今後の診療報酬改定なども見据え、地域における病院の役割や経営の見直しを進めていく中、長期的な経営戦略として病床機能の転換をはかったり、老朽化による維持管理コストの増加や競争力低下を鑑み老朽化施設の整備について検討を開始する病院が増えています。

病院施設整備における課題とは

上述の背景から、病床転換や増築・建替え等を選択するケースが多くなっています。事前に十分な検討を行う事がその後の建築計画はもとより経営にとっても重要であることは言うまでもありません。特に既存病院を利用しながら整備を行う場合、まず施設の現状を把握することがポイントとなります。稼働中の病院運営に支障が出ないような工事期間の設定・工事計画を立てる事も大切な要素です。

第二に多くの病院が1980~90年代に建てられ老朽化が進んでおり、大規模修繕が必要な時期を迎えています。加えて他の用途の建物と比較し運営時間が長く、多くの人が利用することから内装材・設備などの劣化が早まりやすい建物です。メンテナンスは建物を長く使えるようにするだけでなく患者様から選ばれる病院になるためにも大切で、計画的な実施と将来のコストを把握することが必要です。

第三に病院はオフィスビル等とは異なり、それぞれに求められる病床数や機能が違う個別性の高い建物です。さらに診療部門と管理部門との連携、様々な医療機器を有している点など設計時の検討事項が多く複雑です。また、経営側や病院スタッフといった直接病院に関わりがある人々だけでなく、病院によってはまちづくりの中核を担う場合もあり自治体、医師会など関係者が多く存在します。病院整備は合意形成が長期化しやすい事が課題です。

課題に対応できる建築の専門家を交え、整備計画を進めることが効率的で効果的です。

病院施設整備の前に知っておくべきこととは

ご相談事例で多いのが、既存病院を稼働しつつ増築・病床転換などを行うケース、土地購入・遊休地活用で病院の移転建替を行うケースです。

まず既存病院を稼働しつつ整備を行う場合、現在使用している病院・職員寮・駐車場等の各施設において劣化がどの程度進んでいるか、新築時から現在に至る使用過程の中で関係法令に抵触するような不適切な使用状況がないか、アスベストなどの建物環境リスクがないかなど、建物診断(ER:エンジニアリング・レポート)を行い建物所有者が今後抱えるリスクを定量化することが重要となります。

つぎに建替用地を選ぶ際、土壌汚染などの利用履歴がないかを調査することが必要です(土壌汚染リスク評価)。対象地やその周辺における工場や事業所の立地履歴、関連法令等の規制の把握は土地取得における重要な判断材料となります。

この他、地震・津波・水害などの災害情報も安全性確認のうえで大切なポイントです。貴院や移転候補地がどのような地域に指定されているのかを確認することが将来の対策につながります(ハザードマップ調査)。

まずERにより現状を知ることで、病院を継続使用するために必要なコストの目安、将来の建替計画、病院売却や購入計画を立てるための基礎情報が得られます。

発注者と設計・施工者間の合意形成、設計・施工者選定や工程・コスト管理

病院施設整備の特徴の一つとして、前述のとおり多くの関係者が存在することが挙げられます。各メンバーの設計に関する意見の取り纏め、どの設計会社・施工会社を選定するのか、工事期間やコスト面についての交渉など、発注者である病院長らが行うのはハードルが高く大変な労力を伴うというお声を多く頂きます。

デロイト トーマツ グループの一員であるデロイト トーマツ PRS株式会社(以下「デロイト トーマツ PRS」) では、CM(コンストラクションマネジメント)コンサルタントが、発注者をサポートし事業構想から完成後までトータルでお手伝いをします。

CM(コンストラクションマネジメント)コンサルタントサポート
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例えば、事業構想の段階では発注者側の設計要求を整理し、どのようなスケールの病院が建つかケーススタディを行います。プロジェクトの初期から関わることで手戻りの少ない設計が可能となり結果としてコストを抑制できます。整備方針が決まった後も各段階で工事費の確認や検証を行う事によりコスト削減が実現できるのもCM導入のメリットです。

CM導入のメリット
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一方、合意形成に役立つものとしてBIM(ビルディング・インフォーメーション・モデリング)があります。コンピュータ上で実物の建物と同じような3次元モデルを作って設計等を進めるもので、イメージがつかみやすいことからプロジェクトの初期段階から導入しています。設計がより身近に感じられることから、利用者視点からの希望や改善点などの意見が引き出しやすく、プロジェクトに対する認識の違いも減らすことができます。

見える化 イメージ
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また、これまでの図面といった専門的な資料による説明では、改修後のイメージが湧かず完成後に「思っていた内容と違った」ということがあります。BIMを用い院内の詳細な仕様もCGで表せます。その他タブレット端末などを使っていつでもどこでもリアルタイムに設計を確認できたり、VR化(ヴァーチャルリアリティ)により建物内部を実際歩くようにして確認することもできます。

VR化(ヴァーチャルリアリティ)
出所:AUTODESK社が提供するREVITのサンプルデータを使用しています

完成後の計画的なメンテナンスが建物を長く使用するうえで重要な要素であり、運営コストの削減が経営戦略上重要なポイントです。BIMは設計時に入力した情報をFM(ファシリティーマネジメント)に活用することでメンテナンスコストを抑えることができるといわれています。

災害に対応した病院、省エネルギーに配慮した病院

近年の大規模地震により地震対策への関心が寄せられています。患者様や職員の安全確保・被災後の早期復旧など検討すべき課題は少なくありません。デロイト トーマツ PRSでは構造設計のプロフェッショナルによる構造設計評価や耐震診断・耐震補強設計業務を提供しています。病院の耐震性について現状を把握することが災害対策の一歩であり、長期的な経営戦略にも関係が深い要素です。

一方、省エネルギーに配慮した病院改修も関心が高いトピックです。自治体で補助金制度を設けているところも多く推進がはかられており、一例として太陽光発電・LED照明器具の導入・屋上断熱等があります。省エネ化による改修費用が増加したとしても長期的に見て運営費用は抑えられ、トータルでコストダウンをはかる計画が可能です。前述のBIMを活用したランニングコストの試算も検討できます。

デロイト トーマツ PRSは一級建築士によるプロ集団で建設全般のコンサルティングを行っています。デロイト トーマツ グループは、お客様の様々なニーズに対応できる体制が整っています。是非この機会にご活用ください。

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