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2024年度介護報酬改定:生産性向上推進体制加算の算定方法を分かりやすく図解

2024年度介護報酬改定において、生産性向上推進体制加算が新設されました。生産性向上推進体制加算の目的は、①継続的なテクノロジーの活用、②利用者の安全、③介護サービスの質の確保、④職員の負担軽減、⑤業務改善が挙げられます。また、生産性向上推進体制加算には、加算ⅠとⅡの区分があります。今回は、生産性向上推進体制加算の新設に係る背景・概要・加算Ⅰと加算Ⅱの算定要件について解説します。

1. 生産性向上推進体制加算の背景

  • 生産年齢人口が減少していく一方で、介護需要が増大していく環境下において、介護人材の確保が喫緊の課題となっています。
  • 介護人材を確保するためには、介護従事者の待遇を改善することが重要です。
  • 介護人材の確保に関する別の観点として、介護ロボットや ICT 等のテクノロジーの導入等により、介護サービスの質を確保するとともに、職員の負担軽減に資する生産性向上の取組を推進することが重要です。
  • 厚生労働省は介護従事者の生産性を向上させるために、令和元年度に「介護サービス事業者における生産性向上に資するガイドライン」を策定し、令和2年度に改訂版を策定しました。
  • テクノロジーの導入に関しては、平成27年度から地域医療介護総合確保基金を活用した導入支援等が実施されていますが、他業界と比較しても、介護業界におけるテクノロジーの導入・利活用は遅れていると言われています。
  • 現在の介護現場の状況及び将来の社会情勢の変化を踏まえると、介護業界全体で生産性向上の取組を図る必要があるため、2024年度の介護報酬改定において、生産性向上推進体制加算が新設されました。

 

2. 生産性向上推進体制加算の概要

生産性向上推進体制加算の加算Ⅰと加算Ⅱの主な算定要件

  • 加算ⅠとⅡの関係は、加算Ⅰが上位区分です。
  • 加算Ⅰは100単位/月、加算Ⅱは10単位/月を算定することができます。
  • 両加算の違いとして、加算Ⅱは生産性向上に資する取組成果の報告は要件としていませんが、加算Ⅰは取組成果の報告が要件となります。
  • また、加算Ⅰでは加算Ⅱの要件に加え、介護機器等のテクノロジーを複数導入する必要があります。
  • さらに、加算Ⅰには介護業務分担による介護助手等の活用等が求められます。
  • 当該加算の基本的な制度設計は、生産性向上の取組を段階的に支援していくこととし、原則として、加算Ⅱを算定し、一定の期間、加算Ⅱの要件に基づいた取組を進め、加算Ⅰに移行することを想定しています。
  • 加算Ⅰ及び加算Ⅱを同時に算定することはできません。

 

3. 生産性向上推進体制加算のポイント

生産性向上推進体制加算の加算Ⅱから加算Ⅰへの段階的な移行

① 生産性向上ガイドラインに基づいた業務改善

  • 厚生労働省が策定した「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」では、業務の改善活動を通じて介護現場の職場環境をより働きやすく変えていくための道標が示されています。生産性向上推進体制加算は、上記の生産性向上ガイドラインに基づいた業務改善を継続的に行うことが求められます。

②介護機器等のテクノロジーの選定・業務整理・導入

  • 介護機器の選定にあたり、事業所の現状の把握と業務面において抱えている課題の洗い出しと業務内容の整理が必要です。
  • その上で、各職員が担うべき業務内容と見守り機器・インカム・介護記録の効率化に資するICT機器の活用方法を明確化し、洗い出した課題の解決のために必要な種類の介護機器等のテクノロジーを選定します。
  • 加算Ⅱでは見守り機器・インカム・介護記録の効率化に資するICT機器のうち、1つ以上を使用し、インカムは同一の時間帯に勤務する全ての職員が使用することが求められます。
  • 加算Ⅰでは、見守り機器・インカム・介護記録の効率化に資するICT機器を全て使用し、見守り機器は全居室に設置し、インカムは同一の時間帯に勤務する全ての介護職員が使用することが求められます。
  • 見守り機器は利用者がベッドから離れようとしている状態又は離れたことを感知できるセンサーであり、当該戦災から得られた情報を外部通信機能により職員に通報できる利用者の見守りに資する機器とされています。
  • インカムはマイクロホンが取り付けられたイヤホンを指し、職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器とされています。
  • 介護記録の効率化に資するICT機器は介護記録ソフトウェアやスマートフォン等であり、複数の機器の連携を含め、データの入力から記録・保存・活用まで一体的に支援するものとされています。

③委員会の設置と定期的な運営

  • 委員会は、管理者だけでなく、ケアを行う職員を含む幅広い職種やユニットリーダーの参画が求められます。
  • 委員会の開催頻度は3か月に1回以上とし、議事概要の作成と提出が必要です。
  • 委員会では、「利用者の安全及びケアの質の確保」「職員の負担の軽減及び勤務状況への配慮」「介護機器の定期的な点検」「職員に対する研修について」検討を行います。
  • 委員会は、オンライン会議等によって開催することが出来ます。

④厚生労働省への実績データの提出

  • 厚生労働省は、事業所による取組の実績報告をもとに、当該加算を算定する介護サービス事業所における生産性向上の取組の進展状況を定期的に把握・分析することとしており、当該分析結果等を踏まえ、加算の見直しを含む必要な検討をします。
  • 加算Ⅱでは、「利用者の満足度等の評価」「総業務時間及び当該時間に含まれる超過勤務時間の調査」「年次有給休暇の取得状況の調査」の実績が求められます。
  • 加算Ⅰでは、加算Ⅱで求められる実績に加えて、「介護職員の心理的負担等の評価」「機器の導入等による業務時間の調査」の実績も求められます。

⑤職員の業務効率化・ケアの質の確保・職員の負担軽減

  • 加算Ⅰを算定するには、加算Ⅱの要件に加えて、業務内容の明確化や見直しを行い、職員の適切な役割分担を実施する必要があります。
  • 具体的には、業務の細分化と平準化、介助に集中して従事する介護職員の配置、介護助手の活用、介助を伴わない業務の一部の外注などが挙げられます。

⑥厚生労働省への取組成果の報告

  • 加算Ⅰを算定するには、生産性向上の取組成果を厚生労働省に報告する必要があります。
  • 取組成果の報告内容は、次の3点です。1つ目は「利用者の満足度等の評価」の結果で悪化がみられない、2つ目は「総業務時間及び当該時間に含まれる超過勤務時間の調査」の結果で超過勤務時間が短縮している、3つ目は「年次有給休暇の取得状況の調査」の結果で年次有給休暇の取得日数が維持又は増加していることです。
  • 原則として、当該加算は加算Ⅱの算定から段階的に加算Ⅰの算定移行を想定していますが、加算Ⅰを最初から算定しようとする事業所の場合は、別途実績の報告内容に違いが発生します。

 

参考:厚生労働省 令和6年度介護報酬改定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38790.html

執筆

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社
ヘルスケア

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2024/8

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