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速報!2024年介護報酬改定

2024年の介護報酬改定を読み解く

2024年は地域包括ケアシステム・地域医療構想のゴールである2025年を目前とした、6年に1度の診療報酬と介護報酬のダブル報酬改定の年です。人件費や物価の高騰により、介護サービス事業所の経営状況は悪化の一途を辿っています。今回の介護報酬改定を的確に読み解いて、地域で介護サービス提供体制を持続的に確保するための介護経営が求められます。

1.2024年介護報酬改定の背景

2025年までの診療・介護報酬改定スケジュール

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  • 全ての団塊の世代人口が後期高齢者になる2025年をゴールとして、地域包括ケアシステムと地域医療構想が推進されており、2024年はゴール直前の介護報酬改定に当たります。
  • 2年に1回の診療報酬改定と3年に1回の介護報酬改定が重なるダブル報酬改定は、6年に1回のことであり、前回の2018年は、診療報酬と介護報酬ともに大きな改定内容でした。そして、今回の2024年においても、大きな改定になるという前評判であり、ダブル報酬改定を通じて、医療と介護の連携がさらに加速すると予測されます。

2.2024年介護報酬改定の概要

介護報酬改定の基本方針

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参考:第199回社会保障審議会(介護給付費分科会)(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16033.html
第239回社会保障審議会(介護給付費分科会)(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37407.html

介護報酬改定率の変遷

  • 2021年における介護報酬改定の基本方針は5本柱でしたが、2024年は4本柱で構成されています(その他を除く)。
  • 1本目の柱は「地域包括ケアシステムの深化・推進」であり、2021年の「感染症や災害への対応力強化」が「地域包括ケアシステムの推進」に組み込まれて1テーマになりました。医療・介護の連携推進は在宅と高齢者施設等ごとに対応力強化が求められており、看取りや認知症等も引き続き重点的な取り組みに位置付けられています。また、高齢者虐待防止の推進と福祉用具貸与・販売の見直しに関する取り組みが新たに追加されています。
  • 2本目の柱は「自立支援・重度化防止に向けた対応」であり、2021年からの継続テーマですが、リハビリ・機能訓練、口腔、栄養を一体的な取り組みとして強調されています。科学的介護においては、LIFEの導入段階から利活用段階に転換していると考えられます。
  • 3本目の柱は「良質な介護サービスの効果的な提供に向けた働きやすい職場づくり」であり、2021年の「介護人材の確保・介護現場の革新」から、生産性向上と併せて働きやすい職場環境づくりを包含して推進に関する取り組みが掲げられています。
  • 4本目の柱は「制度の安定性・持続可能性の確保」であり、2021年以前からの継続テーマです。その他の項目は今回の改定で整理された事項がまとめられています。
  • 2024年の介護報酬改定率はプラス1.59%であり、過去3番目に高い改定率でした。プラス1.59%のうち、0.98%は処遇改善に係る財源と明記されており、介護サービス事業所の収益増加につながる基本報酬・加算等には残りの0.61%の財源が当てられています。
  • 2015年の改定以降、5回連続のプラス改定だったにも関わらず、介護サービスの収支差率(平均値)は年々低下傾向にあり、介護経営は厳しさを増しています。

3.2024年介護報酬改定の改定内容

①賃上げ・物価高騰の対応

  • 基本報酬は、一部のサービス(訪問介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看)を除いて、全てのサービスで引き上げられます。
  • 基本報酬が引き下げられる訪問介護等の一部のサービスにおいては、処遇改善加算で最も高い加算率(14.5%~24.5%)が設定されています。

②ICT等のテクノロジー導入

  • 2018年・2021年の介護報酬改定において、見守り機器等のICT導入が評価されるようになり、介護老人福祉施設で夜間人員配置基準等の緩和が認められておりました。一方、2024年では介護老人保健施設、特定施設、認知症グループホームにおいても、同様の緩和措置の対象サービスが拡大します。
  • 施設・居住系サービス、多機能系サービスにおいて、見守り機器等のテクノロジー導入や業務改善の取り組み実績を要件とする「生産性向上推進加算」が新設されました。今回の改定で初めてテクノロジー導入が増収につながる加算という形式で評価されたと言えます。

③医療介護連携の更なる推進

  • 施設系サービスにおいて、協力医療機関を定めることが義務化されます(居住系サービスは努力義務)。協力医療機関とは、在宅療養支援病院、在宅療養後方支援病院、在宅療養支援診療所及び地域包括ケア病棟を有する病院が該当します(診療報酬側で定義)。それに伴い、施設・居住系サービスにおいて、協力医療機関と入所者の現病歴等の情報共有を行う会議開催等が要件化された「協力医療機関連携加算」が新設されます。
  • 介護老人福祉施設では、配置医師・協力医療機関と緊急時の対応方針について、年に1回程度の見直しが義務化されます。介護老人保健施設では、近隣医療機関等に空床情報の共有等を評価する初期加算の上位加算が新設されます。他にも様々な介護施設と医療機関との連携を推進する改定が行われます。

④感染症対策

  • 施設・居住系サービスにおいては、感染対策向上加算を届出している医療機関と協定締結が努力義務になります。協定締結医療機関と連携した取り組みを要件化した「高齢者施設等感染対策向上加算」が新設されます。
  • 2021年の改定で義務化された新興感染症や災害対策の事業継続計画(BCP)が未策定の介護サービス事業所に対しては、「業務継続計画未実施減算」によって、施設・居住系サービスは1/3、他のサービスは1/10の基本報酬が減算されます。

⑤リハビリ・口腔・栄養の一体的取り組み

  • 施設系サービスにおいて、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の情報を関係職種の間で一体的に共有しながら、必要に応じてLIFEのデータを利活用する取り組みがリハビリテーションマネジメント計画書情報加算や個別機能訓練加算で要件化されます。また、訪問・通所リハビリテーションにおいても、同様の取り組みがリハビリテーションマネジメント加算で要件化されます。

執筆

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社
ヘルスケア

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2024/2

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