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諸外国における医療情報の活用状況

諸外国における医療データとテクノロジーの活用状況と日本の医療機関に求められる今後の対応について説明します

諸外国では、情報連携基盤の構築、データ標準化のルールと体制が整備され、医療情報のデータ利活用が医療費の最適化・医療従事者の負担軽減・患者体験の向上・医療の質の向上に繋がっています。こうした諸外国での動向を踏まえた医療情報とテクノロジーの活用に関する現状と併せて、日本の医療機関に求められるこれからの対応と課題について触れていきます。

医療情報の連携・利活用について

医療情報の利活用の必要性

医療情報は貴重な社会資源であり、医療の発展と社会的利益に寄与する形での利活用が期待されています。医療情報の利活用には、治療に使用する一時利用と、研究・開発やイノベーションに使用する二次利用があります。一時利用におけるデータ品質を向上させることで、二次利用の促進が期待でき、その成果を社会に還元することが可能となります。

諸外国におけるデータ利活用状況

近年、データ利活用が進んでいるアメリカやイギリス、フランスでは、これまでEHRが急速に普及していることに加えて、情報連携基盤の構築やデータ標準化のルールと体制が整備され、データの利活用が進んでいます。一方、日本はデータ標準化の遅れにより、データ利活用の進展が他国に比べて遅れているのが現状です。この課題を解決するためには、早急な体制の整備が求められています。

アメリカとイギリスのデータ利活用事例

  • アメリカではMACRA法による支払保険料のインセンティブ制度が進められています。医療データの量から質への転換として、4つのカテゴリに分類し医療機関を評価しています。「医療の質」、「相互運用性の向上」、「医療プロセスの改善」、「コスト」の観点からそれぞれ指標化され、配転割合に応じた評価を実施し、年間あたりの支払保険料につき最大±9%の調整を実施しています。
  • 欧州ではEHDS(European Health Data Space)法案によるヘルスデータの一次利用と二次利用の整備が進んでいます。一次利用のインフラ(MyHealth@EU:各国間でのPatient SummaryとePrescriptionの交換が可能)では、2025年までに25か国が段階的に参加を予定しており、2023年2月時点で一次利用が可能な国は11か国(エストニア、オランダ、クロアチア、スペイン、チェコ、フィンランド、フランス、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ルクセンブルク)となっています。二次利用のインフラ(HealthData@EU:各国にHealth Data Access Bodyを設置し二次利用におけるデータ収集やデータ許可を発行する仕組み)では、2022年10月から2年間の予定でパイロットプロジェクトを実施中であり、各国のヘルスデータインフラ(フランスのHealth Data Hub、フィンランドのFindata等)や欧州医薬品庁、欧州疾病予防管理センター等、計16組織でコンソーシアムを組成し、データソースプラットフォーム(Node)のネットワークの開発、二次利用のインフラをEU全域に展開するための実現性、関心、能力の評価、がんや感染症領域における二次利用ユースケースの実証などを実施しています。
  • イギリスでは、公的な医療保険サービスであるNHS EnglandがSecondary Uses Service(SUS)を展開し、GP(診療所)や病院などの医療機関から外来や入院のデータを収集し、データ利用サービスを介して、医療機関などに対してケア管理(パフォーマンス改善、フォローアップ等)や経営ベンチマークなどのサービスを提供しています。

参考:米国メディケア・メディケイドサービスセンターサイトhttps://qpp.cms.gov/mips/explore-measures?tab=qualityMeasures&py=2023

参考:NHS England公式サイト https://digital.nhs.uk/services/secondary-uses-service-sus

 

日本の医療機関における今後の対応

日本では、政府が進める医療DX2030の中で、公的情報連携基盤となる「全国医療情報プラットフォーム」に注目が集まっています。このプラットフォームでは、今後「電子カルテの情報共有サービス」の運用が開始される予定で、電子カルテシステムに格納されている3文書6情報をHL7FHIR形式で収集し、全国の医療機関が参照・取得できる仕組みが提供されます。

これを契機に、データ利用の目的にも変化が見込まれます。これまでは医師同士による他院との診療情報の共有や院内でのデータ集計・利用に留まっていましたが、今後は多職種間の連携や患者中心のケアへの活用、リソースの自動配分・予測、リアルタイムデータを用いた遠隔モニタリング、研究・開発の促進といった高度な利用が進むと考えられます。さらに、データの標準化や共有、システム統合の流れも日本で急速に進展することが予想されます。

この急激な変化の中で、医療機関は外部との共有や連携を考慮したデータ利活用の在り方を検討する必要があります。準備を怠ると、国やベンダーから受けるサービスに格差が生じる可能性があり、職員の働き方や患者への価値提供、経営管理や生産性においても、病院間の格差が広がる恐れがあります。

執筆

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社
ヘルスケア

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2024/11

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