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令和6年度診療報酬改定~生活習慣病管理料~
199床以下が狙うべき加算である生活習慣病管理料について
令和6年度診療報酬改定において、生活習慣病管理料は①療養計画書の簡素化、②月1回以上の治療管理要件の廃止、③検査料を包括しない「生活習慣病管理料2」の新設、④特定疾患療養管理料から生活習慣病の除外、という改定が行われました。199床未満の病院において、経営改善を進めるためには、生活習慣病管理料の算定に向けた対応が肝要となります。
目次
- 1. 生活習慣病管理料改定の概要
- 2. 令和6年度診療報酬改定による変更点
- 3. 生活習慣病管理料の算定要件
- 4. 生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い
- 5. 生活習慣病管理料の改定におけるポイントまとめ
1. 生活習慣病管理料改定の概要
令和6年度診療報酬改定において、生活習慣病の治療管理を評価する「生活習慣病管理料」の見直しが行われました。
生活習慣病等に対する質の高い疾病管理を行うため、生活習慣病を有する患者に対して、効率的かつ効果的な疾病管理及び重症化予防の取組を推進するべく、生活習慣病管理料の算定要件の見直しが行われています。また、特定疾患療養管理料の対象患者の見直しにより、生活習慣病である糖尿病、脂質異常症及び高血圧が除外されました。
これらの背景には、令和4年度入院・外来医療等における実態調査において、生活習慣病を主病とする外来の患者の約90%に対して特定疾患療養管理料を算定していることが判明したことに加えて、生活習慣病管理料の算定が困難な理由の回答結果を考慮したうえで、見直しにつながっていると考えられます。
データソース:中央社会保険医療協議会「令和5年度 第2回 入院・外来医療等の調査・評価分科会 入院・外来医療等における実態調査」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00188.html)
2. 令和6年度診療報酬改定による変更点
生活習慣病管理料は改定により、生活習慣病管理料(Ⅱ)が新設されたことに加えて、生活習慣病管理料(Ⅰ)の点数がそれぞれ40点ずつ引き上げられています。
■生活習慣病管理料の改定(項目・点数)
令和6年度診療報酬改定前まで、生活習慣病を有する患者の算定は、包括される範囲が広く算定の難度が高い代わりに点数が高い生活習慣病管理料と、点数は低いものの制限が少ない特定疾患療養管理料を比較して、各医療機関にて算定が行われていました。
■算定要件の主要な変更内容
本改定で特定疾患療養管理料に規定される病名から生活習慣病の病名が削除されたことから、外来における生活習慣病に対する管理料は生活習慣病管理料に集約され、同時に定期的な治療管理の要件が削除されるなどして、算定要件は緩和されています。
別表第一 特定疾患療養管理料並びに処方料及び処方箋料の特定疾患処方管理加算に規定する疾患
3. 生活習慣病管理料の算定要件
生活習慣病管理料は、初診以外の生活習慣病を主病とする患者に対して療養計画書を策定し、署名を得たうえで交付することで算定が可能となります。
■ 生活習慣病管理料の主な算定要件
- 許可病床数が200床未満の病院又は診療所であること
- 初診料を算定した日の属する月でないこと
- 糖尿病の患者は在宅自己注射指導管理料を算定していないこと
- 生活習慣病を主病とする外来の患者の同意を得て療養計画書の策定及び説明を行い、生活習慣に関する総合的な治療管理を行った場合に、月1回に限り算定する
- 初回は療養計画書に患者の署名が必要であるが、2回目以降は療養計画書の内容を説明し、十分に理解したことを医師が確認したうえで、その旨を療養計画書に記載した場合は署名が不要であること
- 生活習慣に関する総合的な治療管理に係る療養計画書は患者に交付を要するが、2回目以降は当該療養計画書の内容に変更がない場合はこの限りではない。ただし、患者又はその家族等から求めがあった場合や、概ね4月に1回以上は交付を要する
療養計画書の策定や説明、交付を行うため、特定疾患療養管理料に比べて医師の負担は増加することが予測されます。ただし、療養計画の作成や説明は医師のみが負担するのではなく、多職種が連携して対応することが認められています。例えば、療養計画書の説明を医師が行ったうえであれば、追加の説明や署名の取得を看護師等が診察室外で行うことを疑義解釈上認めています。
4. 生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い
生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)において対象患者は同一ですが、算定において留意すべき点は管理料に包括される範囲が異なることです。
生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらを算定するかは病院の判断に委ねられている一方で、生活習慣病管理料(Ⅰ)を算定した月から起算して6ヶ月以内は生活習慣病(Ⅱ)に切り替えることができないことから、算定基準を病院の実態に即して作成しておくことが望ましいです。
5. 生活習慣病管理料の改定におけるポイントまとめ
- 生活習慣病が特定疾患療養管理料の規定する病名から削除されたこと
診療報酬改定前は生活習慣病の治療管理を行っていた場合、生活習慣病管理料と特定疾患療養管理料のどちらかを選択できていたものが、診療報酬改定によって生活習慣病管理料に集約されました。 - 生活習慣病管理料から少なくとも月1回の治療管理要件が削除されたこと
生活習慣病管理料の算定要件が見直され、1月に1回以上の総合的な治療管理を行う要件が廃止されたことで、2ヶ月に1回等の頻度で治療管理することが可能となりました。 - 生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)は管理料に含まれる範囲が異なることから、医療機関の考えや患者に適した算定を行うこと
生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)は医療機関がどちらを算定するか選択ができますが、200床未満の病院では受診時に、検査や注射を要するかがポイントになると考えられます。
療養計画書に、高血圧症の場合は血圧、糖尿病の場合は血糖やHbA1c、脂質異常症の場合は総コレステロールなどの検査結果の記載項目が設けられていることから、糖尿病や脂質異常症の管理のための採血の頻度を判断基準とすることも考えられます。 - 生活習慣病管理料の療養計画書の署名は、2回目以降については内容に変更が無く、医師の十分な説明を行うことで患者の署名と交付を省略することができる
初回は署名と交付が必須となりますが、2回目以降は内容に変更が無ければ省略が可能です。ただし、患者から交付の要請があった場や、4ヶ月に1回以上は療養計画書の交付が必要となります。 - 療養計画書の交付や説明は、医師が説明したうえであれば多職種が行うことを認めている
療養計画書の説明を医師が行ったうえであれば、追加の説明や署名の取得を看護師等の多職種が診察室外で行うことが認められていることから、運用により、算定の負担を多職種で分担することが可能です。
参考:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html)
参考:中央社会保険医療協議会「令和5年度 第2回 入院・外来医療等の調査・評価分科会 入院・外来医療等における実態調査」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00188.html)
執筆
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社
ヘルスケア
※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2024/9
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