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令和7年度以降に向けてベースアップ評価料を使って取り組むべきこと
2024年度の診療報酬改定において、医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取組みとして、「外来・在宅ベースアップ評価料」、「入院ベースアップ評価料」が新設されています。ベースアップ評価料を算定する上で、算定によって期待する効果及び得られた原資の分配方法等を検討した上で進めることが重要と考えます。
目次
- ベースアップ評価料が新設された背景と、ベースアップ評価料の算定に求められるもの
- 令和7年度以降はベースアップ評価料の使い方を含めどのように取り組むべきか
- 病院全体で不足する職種や年齢層についてどのように焦点をあてるか
- 賃上げに係る原資の安定的な確保に向けた課題は何か
ベースアップ評価料が新設された背景と、ベースアップ評価料の算定に求められるもの
ベースアップ評価料は、昨今の食材料費、光熱費等の物価高騰の状況や、他業界の賃上げの状況等をふまえ、医療分野の人材確保や賃上げを図るために令和6年度の診療報酬改定で新設されました。ベースアップの目標値は、令和5年度に対して、令和6年度で+2.5%、令和7年度で+2.0%となっています。ベースアップ評価料を算定して得た原資の賃上げ配分方法は2パターンあり、令和6年度にまとめて引き上げる方法と令和6年度と令和7年度の2年間で段階的に引き上げを行う方法があります。職員への具体的な賃上げ方法は原則として基本給又は月次支払いの手当の引き上げとされています。ベースアップ評価料を算定する要件として、令和6年度及び令和7年度における職員の賃金改善計画の作成と、定期の改善に係る状況について定期的に地方厚生局長等に報告することが求められています。
令和7年度以降はベースアップ評価料の使い方を含めどのように取り組むべきか
ベースアップ評価料算定のため、取り急ぎ令和6年度の職員賃金改善計画の作成を行った医療機関も多いと聞きます。そのため、ベースアップ評価料の職員への分配方法は、ベースアップ評価料の対象となる職員へ均等分配を選択した医療機関も多かったと思われます。
一方、令和7年度の職員賃金改善計画の作成までは時間があり、労使協議の時間も生まれるため、病院全体で不足する職種や年齢層を確保するための投資的な意味合いでベースアップ評価料を使い、地域での採用競争力を高めるものとしてみることはどうでしょうか。
また、賃上げを維持するためには安定的な原資の確保は不可欠と思われます。原資確保の観点からの取組みも行ってみてはどうでしょうか。
病院全体で不足する職種や年齢層についてどのように焦点をあてるか
令和7年度のベースアップ評価料における職員への分配方法として、本当に必要な職種、年齢層等を見極めて、原資を投下する人材戦略としての使い方があります。本当に必要な職種、年齢層等を見極めるためには、医療機関の将来の戦略を検討し、経営戦略に基づいて必要な人材像を明確にすることも必要ですが、各職種は適切な職員数なのかという観点も必要と考えます。そのためには各職種の業務範囲を明白にすることが必要です。各職種の業務範囲を明白にするために検討するポイントとして、下記に例として示します。
- 一般外来において、看護師の配置は本当に必要か?(医師・医師事務作業の体制で対応できないか)
- 病棟業務において、看護師が行う業務は、他職種に切り出せないのか?
- 医師の当直明け等において、医師間で分担できる業務はないのか?あるいは、NP等の確保で代用できることはないか?
- 総合診療等の活用により、慢性期化した患者の主治医の負担を分散する等の必要はないか?
- 記録作成に現在係る時間は本当に必要か?
- 在宅強化等で既存の職員配置で工夫の余地はないか?
賃上げに係る原資の安定的な確保に向けた課題は何か
賃上げに係る原資として、ベースアップ評価料を算定することで短期的に原資は確保されるものの、令和7年度以降も中長期的に安定した原資を確保する上では、課題を整理して対応していくことが重要です。課題としては大きく2点があると考えます。
1. 利益の確保(収益増加・費用低減)
2. 確保した利益の職員への適正分配
- 利益の確保(収益増加・費用低減)
ベースアップ評価料の減少などが発生した場合でも安定して原資を確保するため、収益増加や費用低減に取り組まなければならず、財務面を含めた自院の分析を行い、優先して取り組む施策を選択し、計画的に取り組む必要があります。利益確保に向けた取組みの検討及び実行した際の影響額を試算し、最終的に自院で最適な取組みを策定し、実行にあたっては「管理シート」等で管理を進める必要があります。 - 確保した利益の職員への適正分配
利益確保のための取組みが進むために職員が自発的に取り組める仕組みが必要です。そのためには、自身の取組みが評価につながる制度の構築も有効な手段として想定されます。人事評価の評価項目として成果業績を取り入れ、給与に反映する病院の事例も多くなっています。
ベースアップ評価料の新設は医療機関にとって賃上げに向けた取組みを行う一つの契機になったように思われます。賃上げの目的として医療人材の確保が前提にあるものの、賃上げには原資が必要不可欠です。原資はどのように確保するか、それに向けて職員は何をすべきか、経営陣含め医療機関に勤務する全ての職員が意識していかなければならないと考えます。
執筆
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社
ヘルスケア
※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2024/10
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