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調査レポート
厚生労働省予算分析を踏まえたヘルスケア市場の動向について
規制市場であり公共政策の影響を大きく受けるヘルスケア市場について、厚生労働省の予算分析を通じて、今後の市場動向の把握を図ります。
ヘルスケア市場における公共政策の影響
ヘルスケア市場は、公的価格が設定される医療や介護に加えて、医薬品・医療機器産業、公的保険外の健康づくりサービスや民間保険等のさまざまな領域がありますが、規制市場であるため公共政策動向の影響を多大に受けます。
医療は診療報酬・薬剤価格、介護は介護報酬のように公的価格として、公共政策の中で全国一律でサービス等の対価が設定されています。医薬品・医療機器等の市場は、品質や有効性、安全性を確保するため、開発から承認、製造、流通、使用の各段階で必要な規制が行われています。
したがって、ヘルスケア市場では、公共政策に基づく新たな規制の導入や規制の緩和による民間事業の拡大・縮小への影響が特に大きくなります。
公共政策の動向分析としての予算分析
ヘルスケア市場に関与するにあたって、その影響の淵源となる公共政策の動向を分析することは、市場動向を分析し、市場の今後を見通すことにつながります。では、公共政策の動向を分析する際に、どのように分析することが効果的でしょうか。
ある政策が実行に移されるまでには、下記の流れがあります。
課題の認識 → 対応策の立案 → 政治的関心・意思決定
この流れをすべて満たしたものが、予算化され事業化されます。
公共政策の動向は、行政機関の予算に表れます。特に、各府省の予算における重点事項を分析することで、今後の重要政策の動向を把握することが可能です。政策領域には、今後拡大を続ける領域、拡大が落ち着き今後横這いとなる領域、今後縮小段階に入る領域があります。
重点事項の変遷を把握することにより、各政策領域がどの段階にあるか、大きな方向性を見つけることができます。公共政策の影響が大きいヘルスケア市場においては、長期的に拡大する政策領域を見つけることは、長期的に拡大する市場(長期的ビジネスオポチュニティ)を見つけることにつながります。
令和7年度厚生労働省概算要求における重点要求からわかること
令和7年度厚生労働省予算概算要求における重点要求では、「人材確保」が新たに独立した中項目として設定されたことからわかるように、「人手不足」がキーワードとしての重要度を増しています。人材確保については、少子化及び高齢化が続く日本における人口構造のゆがみへの対応として、多様な人材の就労支援をはじめとした施策が進められてきました。
他方で、人口構造のゆがみが是正されない中、制度面の対応だけでなく、ソフト面での対応、生産性の向上の一環として、「医療・介護におけるDX」の重要性が増加しています。
厚生労働省の令和6年度予算案と令和7年度概算要求における重点事項を確認すると、令和6年度には医療・介護のイノベーション推進と質の向上を主な目的して実施されてきた医療・介護におけるDXに、令和7年度には「生産性の向上」が追加され、「イノベーションの推進」から「生産性の向上」へと軸足が移されたことがわかります。加えて、医療・介護におけるDXの文脈で記載される事業が増えるとともに、関連事業の予算額も大きく増加しています。
したがって、医療・介護におけるDX施策は、今後、より重要になるとともに政策領域としての拡大が続くものと想定されます。
そのほか、項目や関連する記載事業、予算額の変遷を踏まえて、各政策領域の今後の動向を把握することができます。
ヘルスケア市場参加者における行政機関分析の必要性
ここまで見てきたように、行政機関の予算には今後の政策動向が表れます。つまり、診療報酬や介護報酬等の公的価格の改定論点だけでなく、行政機関の予算分析によって今後の政策動向を把握すること通じて、ヘルスケア市場における今後の動向を想定することができます。したがって、ヘルスケア市場に関与するにあたっては、行政機関の予算分析を実施し、その影響の淵源となる公共政策の動向を把握することが必要です。
執筆
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社
ヘルスケア
※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2024/10
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