調査レポート

ヤングケアラー支援ツール紹介(アセスメントツール等)

こどもとの信頼関係を重視しながら必要な支援につなげるためのポイントを提示

ヤングケアラーについては、令和3年5月の「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム報告」において、早期に発見し適切な支援につなげることの重要性が示され、各地で様々な支援が行われています。その支援の一助になるよう、ヤングケアラー支援の「アセスメントツール」と、市区町村の児童福祉部門と教育分野に焦点を当てた、ヤングケアラー把握・支援の運用の手引きを作成しました。

ヤングケアラー支援の「アセスメントツール」と「児童福祉部門、教育分野向け運用の手引き」

ヤングケアラーに関しては、これまでに行われた全国的な調査により、世話をしている家族が「いる」と回答したのは、令和2年度の調査で、中学2年生:5.7%、高校2年生:4.1%、令和3年度の調査で、小学6年生:6.5%、大学3年生:6.2%という実態が示され、支援の充実が急務になっています。

こうした状況を踏まえ、令和3年5月に取りまとめられた「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム報告」において、ヤングケアラーを早期に発見し、適切な支援につなげることの重要性が示され、国は、地方自治体による実態調査やヤングケアラーコーディネーターの配置、ピアサポート等相談支援体制の推進、オンラインサロンの設置・運営、支援等を後押ししています。
 

ヤングケアラー支援のさらなる充実に向けて

デロイト トーマツにおいても、ヤングケアラー支援をより充実したものにするための一助になるよう、こどもの状況に早めに気づき、こどもとの信頼関係の構築を目指すツール、そして、市区町村の、特に児童福祉部門と教育分野に焦点を当てた、ヤングケアラー把握・支援の運用の手引きを作成しました。以下ではそれぞれについて概要を紹介します。

なお、本取組みは、厚生労働省の「令和4年度子ども・子育て支援推進調査研究事業」より研究助成金を受けて行われました。先行研究の整理や、多機関・多職種へのヒアリング等調査、パイロット版の作成や、試行運用などを経て、完成させたものです。

ヤングケアラー支援に係るアセスメントツール等の使い方ガイドブック(「気づきツール」と「アセスメントツール」付き)

ヤングケアラー支援は、「ヤングケアラーにどのように気づくか」、そして、「気づいた後にどのように支援につなげるか」という点において、難しさを感じるケースが多くあることが本取組みにおいて実施した調査で示されました。その背景には、家庭内の問題は表に出にくいことや、こども又は家族が支援を望まない場合があることなどが挙げられます。

こうした状況を受け、こどもの状況に早めに気づけるようにするための「気づきツール(こどもとの関わりの程度に応じて活用できるよう、こども向けと大人向けの2種類あり)」と、気づいた後に、こどもとの信頼関係を築くための会話の視点を示す「アセスメントツール」を作成しました。各種ツールの活用によって「こどもの話を、こどもを主役として聞いてくれる大人がいる」環境を作ることを目指すべく、ガイドブックにおいて、各種ツールの使い方を解説しています。

▼詳細は以下からご覧ください。

ヤングケアラーの支援に係るアセスメントシートの在り方に関する調査研究

【ガイドブックの構成】

第1章 はじめに
第2章 各種ツールの使い方
第3章 支援へのつなぎ方
第4章 こども向けガイド
QA
付録(各種ツール、他)
 

ヤングケアラー支援で求められること(虐待対応との関係において)

児童虐待の場合は法令上において即時の介入が求められます。こどもがヤングケアラーの状態に置かれていて、なおかつ児童虐待と判断できるケースもありますが、そうではない場合、個人情報保護の観点を踏まえ、即時の介入は難しいことがあります。

その場合、周囲の大人ができることは、①こどもにとっての選択肢を増やすこと、②こどもが素直な気持ちを表出できる関係を持った人がこどものそばにいる環境を作ることが挙げられます。

こどもに選択肢を提示したとしても、こどもが素直に支援ニーズを他の人に伝えられない場合があります。また、仮に必要な支援につながったとしても、こどもの気持ちに十分に寄り添うことができていない場合、こどもに心の傷を残してしまう場合があります。

ヤングケアラーの中には即時の支援が必要なこどももいますが、家族のケアにやりがいを持っていたり、ケアをしたい、と考えるこどももいます。

支援ありきで考え、「こどものために行ったことが、かえってこどもを傷つけてしまった」という悲しいことが起きないよう、本事業で作成した各種ツール等が、こどもがいつでも助けを求められる環境を作る際の一助になることを願っています。

 

各種ツールの全体像、引用:「ヤングケアラー支援に係るアセスメントツール等の使い方ガイドブック」より

児童福祉部門と教育分野に焦点を当てた市区町村におけるヤングケアラー把握・支援の運用の手引き

ヤングケアラー支援は、「気づき」から、情報の集約・管理、方針の決定、多機関・多職種による支援の実施といった流れで進み、こうした「入口から出口まで」において重要な役割を担うのが、こどもに近い立場にある市区町村の児童福祉部門や学校などの教育分野です。このことから、児童福祉部門と教育分野に焦点を当てて、支援の流れを効率よく運用していくための仕組みや、その運用方法のポイントをまとめました。仕組みについては、先行している市区町村へのヒアリングなどをもとに整理した4つのパターンで例示しつつ、実際に支援にあたっている各地の事例を参考にできるようにもしてあります。

また、家庭が支援を拒否したり、対象者が中途退学したりして対応が困難なケースへの留意点や対応の工夫なども紹介しています。

▼詳細は以下からご覧ください。

市区町村におけるヤングケアラー把握・支援の効果的な運用に関する調査研究

【手引きの構成】

第1章 手引きの背景と目的
第2章 ヤングケアラー支援概論
第3章 ヤングケアラー支援の運用の仕組み
第4章 児童福祉部門が主導するヤングケアラー支援の運用に必要な事項
第5章 対応が困難な事例ごとの留意点や工夫

 

※クリックまたはタップして拡大表示できます

運用パターン例ーB市の事例ー、引用:「児童福祉部門と教育分野に焦点を当てた市区町村におけるヤングケアラー把握・支援の運用の手引き」より

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2023/08

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