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調査レポート
Post COVID-19の移動に関する消費者意識調査
コロナ禍前との比較から、消費者の移動様式・ニーズの変化を推し量る
コロナ禍は様々な形で生活に変化をもたらした。従前より継続する人口減少、若者のクルマ離れを主要因とする自動車新車販売台数減少に加え、物価高騰による家計の圧迫も重なり、日本自動車市場の将来は必ずしも明るくない。今回はコロナ禍を経た社会での移動・クルマに対する消費者意識について、日本全国を対象に調査を実施した。本稿では、2018年との比較を通じて、消費者行動および意識がどのように変化したのかを掴んでいきたい。
目次
- 移動総量はコロナ禍前と同等以上に回復したものの、移動目的・手段に一部変化
- クルマへの関心は年収により二極化。国民全体としてのクルマ離れ傾向は継続
- モビリティサービス市場拡大にはサービス理解度向上が必須
移動総量はコロナ禍前と同等以上に回復したものの、移動目的・手段に一部変化
人々の移動総量は総じてコロナ禍前の水準に戻ったと言える状況にあり、一部の地域、年代ではコロナ禍の反動や他の要因により、むしろコロナ禍前よりも移動量が増加している傾向さえ見られた。ただしその内訳を見ると、人々の移動様式そのものの変化が見られ、移動の質的変化が生じている。
まず、移動目的に関しては業務上の移動における変化が大きい。通勤の移動量は2018年より増加したが、業務・出張関連の移動量が減少している。つまり、出社頻度が戻ってきた一方、社外との会議は依然リモート会議を継続していると捉えることができる。ただし、通勤の移動量の増加も頻度はコロナ禍前より減少しており、通勤の移動時間が増加していることから、リモートワークも一定残存していると考えられる。
プライベートに関しては、旅行、外食等の外向き消費のための移動量でコロナ禍前の水準に戻ってきており、特に買い物に関しては、コロナ禍前を大きく超えている。しかし、買い物では通勤以上に移動頻度がコロナ禍前より減少し、移動時間が増加している調査結果となっており、直近の物価高騰も相まってか、コストパフォーマンスを重視し、郊外の大型スーパーへの買い物に出かける人が増えていると読み取れる。
次に、移動手段に関して言えば、飛行機・新幹線等の長距離移動手段の利用割合が減少し、マイカーや自転車等の個人所有の移動手段による移動割合が増加している。マイカーに関しては、コロナ禍での三密回避の影響により公共交通手段からマイカーにシフトした層が継続的に利用していると考えられ、自転車に関しては、健康増進トレンドの高まりも相まって、利用者が増えていると想定される。移動目的の傾向と合わせると、マイカー移動時間をいかに充実したものにできるか、自転車含め、世の中のトレンドに合わせた個人所有モビリティをいかにラインナップできるかが今後のモビリティ関連企業にとって肝要となる。
クルマへの関心は年収により二極化。国民全体としてのクルマ離れ傾向は継続
長年、自動車メーカーが頭を悩ませている消費者のクルマ離れは今後も継続すると想定されるが、内訳を見ると一概にそうとは言えない。クルマに対するイメージに関しては、年齢による有意差はほとんどないが、年収別に見ると、低中年収層はクルマに対する関心が2018年より薄くなり、逆に高年収層はクルマへの関心が高まっている。こちらを踏まえると、クルマへの関心は二極化しており、自動車メーカーとしては、各々への異なったアプローチが今まで以上に重要となる。
マイカー保有率の調査結果は2018年比でほぼ横ばいとなっているが、「現在保有者」の今後の保有意向を見ると、特に若者を中心に「わからない」と答える人の割合が増えており、クルマへの関心について約7割が無関心層であることとも相まって、将来的な非保有層へのシフトが潜在的に高まっている傾向が見て取れる。
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モビリティサービス市場拡大にはサービス理解度向上が必須
2010年台中盤から日本でも普及が始まったモビリティサービスは、ここ5年で名前の認知度が大幅に上昇している。特にシェア自転車や小型電動モビリティ(電動キックボード等)については、サービス導入が他モビリティサービスよりも遅かったにも関わらず、他同様の認知度となっている。一方、サービスの理解度に関しては、認知度と比べて大幅に低く、今後の普及拡大における大きな課題と言えそうだ。
Post-Covid19の世界において、移動量という観点では人々の外出意欲の高まりは確かに見られており、コロナ禍によって喚起されたマイカー移動ニーズの継続も見られた一方で、将来的なマイカー保有の意向が不明瞭な消費者意識も依然として強い。こうした状況においてモビリティ関連企業は、既存自動車オーナーに対するメンテナンス・リース等の保有系ビジネスの拡充、車室空間の充実による移動時間の質向上に商機が伺えるだろう。他方、短距離移動をメインとした自転車等の移動手段の選択肢も増えており、今後はより多様化する顧客の移動ニーズに合わせたモビリティの開発・販売も必要となってくるだろう。