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ジョイント・テナンシーの形態で所有する不動産の相続における課税関係

『国税速報』平成29年4月17日号

ジョイント・テナンシーとは、二人以上の者が同一の譲受けまたは譲与により、同一の不動産につき取得する財産権をいい、この所有形態による不動産合有者(ジョイント・テナンツ)は、目的の不動産について、一定の期間、同一内容の利益と占有権を有することになります。(『国税速報』平成29年4月17日号)

【疑問相談】相続税

「ジョイント・テナンシーの形態で所有する不動産の相続における課税関係」

Question:
父と母は、ジョイント・テナンシーの形態で米国のハワイ州に所在するコンドミニアム(土地および建物)を有していました。

父の死亡に伴い、父が有していたジョイント・テナンシーの持分は、他の相続財産とともに母が取得することになりましたが、日本における父の相続税の申告上、この持分を相続税の課税価格に算入すべきでしょうか。

なお、母は相続税法第1条の3第1項第1号及び第1条の4第1項第1号に規定する「無制限納税義務者」に該当します。

Answer:
ジョイント・テナンシーの合有者(ジョイント・テナンツ)の死亡に伴い、生存している他のジョイント・テナンツが取得した持分は、相続税法第9条に規定するみなし贈与財産に該当しますの、お父様がジョイント・テナンシーの形態で所有していたコンドミニアムの持分については、お母様がお父様から贈与により取得したものとみなして、コンドミニアムの価額の2分の1に相当する部分の金額を相続税の課税価格に算入すべきものと考えられます。

【解説】

1. 相続税法第9条に規定するみなし取得財産

相続税法上、相続税および贈与税の課税財産は、相続、遺贈または贈与により取得した財産とされていますが、相続税法は、このほかに、法律的には相続、遺贈または贈与による取得でなくても、その取得によって実質的にこれらと同様の経済的効果が生ずる場合には、その取得した財産を相続、遺贈または贈与により取得したものとみなして、相続税または贈与税の課税財産とする旨規定しています。

この取得したものとみなされる財産については、相続税法において個別に規定されていますが、相続税法第9条《贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合―その他の利益の享受》は、これらの個別に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで利益を受けた場合においても、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額を当該利益を受けさせた者から贈与により取得したものとみなす旨規定しています。

2. ジョイント・テナンシーの意義等

(1) 意義

ジョイント・テナンシーとは、二人以上の者が同一の譲受けまたは譲与により、同一の不動産につき取得する財産権をいい、この所有形態による不動産合有者(以下「ジョイント・テナンツ」)は、目的の不動産について、一定の期間、同一内容の利益と占有権を有することになります。

(2創設の要件

ジョイント・テナンシーが成立するためには、その創設の際に、次の4つの条件が充足されていなければならないとされ、書面でその旨を定めることが必要であるとされています。

① すべてのジョイント・テナンツが同時に所有権を取得すること
② すべてのジョイント・テナンツが同一の証書によって所有権を取得すること
③ 各自の持分内容が均等であること
④ 各自が財産権全体を占有していること

(3効果

ジョイント・テナンツの一人が死亡した場合には、その権利は生存者へ権利の帰属(以下「サバイバーシップ」)の原則に基づいて、無償で生存しているジョイント・テナンツの権利に吸収されることになり、相続されることはありません。

また、相続とは別の法の作用により所有権が移転するので、遺言によってもその内容を変更することはできません。

3.サバイバーシップによる持分の取得に係る課税関係

お父様およびお母様がジョイント・テナンシーの形態で所有しているコンドミニアムについては、ジョイント・テナンツの一人であるお父様が死亡したことにより、相続されることなく、サバイバーシップの原則に基づいて、残りのジョイント・テナンツであるお母様が取得したことになります。

そして、サバイバーシップの原則による権利の増加であるコンドミニアムの取得について、お母様が取得した時に対価の授受はありません(そもそも制度的に対価の授受はない)ので、お母様へのサバイバーシップの原則による権利の増加は、「対価を支払わないで利益を受けた場合」に該当することになります。そして、相続税法第9条は、「対価を支払わないで利益を受けた場合」には、当該利益を受けた者が当該利益を受けさせた者から贈与により取得したものとみなす旨規定していますので、サバイバーシップの原則によるお母様の権利の増加は、お母様がお父様から贈与により取得したものとみなされることになります。

また、相続税法第19条《相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額》第1項は、相続または遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前3年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなす旨規定しています。

お父様がジョイント・テナンシーの形態で所有するコンドミニアムについては、お父様が死亡したことにより、お母様が、お父様から贈与により取得したものとみなされますので、コンドミニアムの価格の2分の1に相当する部分の金額については、相続税のお母様の課税価格に加算すべきものとなります。

なお、相続税法第21条の2《贈与税の課税価格》第4項は、相続または遺贈により財産を取得した者が、相続開始の年において当該相続に係る被相続人から受けた贈与により取得した財産の価額で相続税法第19条の規定により、相続税の課税価格に加算されるものは、贈与税の課税価格に算入しない旨規定していますので、お母様が贈与により取得したとみなされる財産の価額は、贈与税の課税価格には算入しないこととなります。

4 日本の民法上の死因贈与とサバイバーシップとの異同

ジョイント・テナンツの一人が死亡した場合、サバイバーシップの原則に基づき、生存しているジョイント・テナンツが取得することとなる持分について、これを死因贈与契約の履行があったものとして、相続税の課税上、「死因贈与による財産の取得」(相続税法第1条の3《相続税の納税義務者》第1号括弧書)に当たるものとして取扱うとする意見もありますが、ジョイント・テナンシーは、我が国に存在しない制度であることから、民法第554条の規定する死因贈与には該当せず、また、ハワイ州における死因贈与は別の制度として規定されていますので、ハワイ州における死因贈与にも該当しません。

さらに、ジョイント・テナンシーは、我が国の死因贈与とは、①契約により成立すること、②個人の死亡により財産が無償で移転すること、といった共通点はありますが、③ジョイント・テナンツのいずれが贈与者または受贈者になるかが、その創設時には特定されていない、④ジョイント・テナンツは生前に撤回ができない、⑤ジョイント・テナンシーにおける合有持分の移転はサバイバーシップの原則に基づくものであり、相続によるものではない等、我が国の死因贈与と要件および効果の両面において異なる部分も多く、我が国の死因贈与と本質的に同一のものであるということはできないと考えられます。したがって、ジョイント・テナンシーが死亡を契機に無償で財産の移転をする効果を持つものであったとしても、そのことのみをもってサバイバーシップによる持分取得が、相続税法第1条の3第1号の「死因贈与」に該当すると判断することはできないと考えられます。

なお、ジョイント・テナンシーの持分の取得原因が「みなし贈与」、「死因贈与」のいずれであったとしても、お尋ねの相続においては、お母様が取得した持分が相続税の課税価格に算入されるという結論に相違はありません。

【関連条文】
・法の適用に関する通則法第36条
・法の適用に関する通則法第13条第2項

【参考文献・資料】
・東京高等裁判所平成19年10月10日判決
・国税不服審判所平成27年8月4日裁決
・国税庁質疑応答事例「ハワイ州に所在するコンドミニアムの合有不動産権を相続税の課税対象とすることの可否」
・浦上章夫著「海外財産の相続と相続税法適用上の問題点―ハワイ州におけるジョイント・テナンシーを中心として―」『税大論叢22号』(税務大学校)
・山本英樹著「海外財産を合有(ジョイント・テナンシー)により取得した場合の課税関係」『税大論叢65号』(税務大学校)
・澤木敬郎・道垣内正人著『国際私法入門第7版』(有斐閣、2012年)

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