ナレッジ

経理シェアードサービスセンター(SSC)サーベイにみる日本企業の現状 2024年版

2024年実施の最新動向調査より、日本企業におけるSSCの実態・トレンドを紹介

本調査は日系企業の経理部門におけるシェアードサービスの実態・トレンドの把握を目的に、シェアードサービスに取り組んでいる企業を対象として2022年より新しく開始された調査である。第2回目となる2024年の調査では、「組織・業務スコープ」、「価値・実現アプローチ」、「デジタル活用」、「今後の方向性」を軸に日本企業における経理シェアードサービスの実態・トレンドを紹介する。

2024年版 日本企業における経理シェアードサービスセンター(SSC)最新動向調査 結果概要

デロイト トーマツ グループが2024年に実施した経理シェアードサービスセンター(SSC)動向調査より、日本企業における経理シェアードサービスの実態・トレンドを紹介します。

2024年の調査では、「組織・業務スコープ」、「価値・実現アプローチ」、「デジタル活用」、「今後の方向性」 等のカテゴリー毎に質問項目を設定し、約30社の企業から回答を得ました。

 

2024年版 日本企業における経理シェアードサービスセンター最新動向調査 結果概要

1. 組織・業務スコープ
  • 2022年の調査時にはCovid‐19の影響を受けて約85%の企業がSSC組織においてリモート/ハイブリッドのモデルを採用していたが、現在ではCovid‐19の収束とともに出社を選択するケースが増えており、リモート/ハイブリッドのモデルを採用している企業は約70%にとどまる結果となった
  • グローバルのトレンドと同様、債権・債務管理や決算といったオペレーション業務がSSC化の中心となっている
2. 価値・実現アプローチ
  • 前回同様、SSC設立・導入検討時における課題を「業務標準化」「事業サイド・子会社との折衝」「経営層との合意」と回答する企業が多く、業務標準化だけでなく、SSCという取り組みの性質上、取り巻くステークホルダーとのコミュニケーションが課題となっていることが明らかになった
  • 付加価値サービスの提供は6割の企業において取り組まれているが、新規サービス開発に向けた工数確保やケイパビリティ不足は共通的な課題であり、特にケイパビリティ不足については、これまでのオペレーション遂行能力中心であったSSC組織に求められる人材像の非連続な変化が求められている
3. デジタル活用
  • 回答企業の97%はSSC組織におけるデジタル強化の必要性を強く感じている
  • グローバルではデータ活用による定量的なマネジメントが志向されていることを背景にAnalyticsやVisualizationといった分野においてデジタル活用が普及しており、日本企業においては品質やコストのマネジメントに対する定量的なマネジメントの広がりとともに今後の拡大が予想される
4. 今後の方向性
  • 工数削減目標を明確にしている企業では、8割以上の企業が5%以上、凡そ半数の企業が10%以上の工数削減を目指しており、今後もSSC組織における更なる効率化・工数削減の活動が継続されていく
  • 業務効率化・標準化を通した生産性向上施策の実施に加えて、デジタル強化・付加価値業務提供といった施策を重要視しており、生産性向上といった守りの姿勢だけでなく、価値の向上といった攻めの姿勢を示すSSCを目指す企業が増えていることが推察される
[PDF, 1.19MB]

考察

デジタル環境への徹底的・継続的な業務移行・可視化

ほぼすべての企業においてデジタル機能の強化は必須と回答される中、その活用は未だRPA中心であり限定的となっている。「中期的なハイブリッドワークの促進・定着化」、「ファクトに基づく実効性のある業務改善による更なる効率化・工数削減」、「益々加速するデジタル技術革新への適応」の観点から、グローバル企業SSCでは活用が進むサービス管理やプロセス管理等のツール活用を視野に入れ、管轄業務のデジタル環境への移管および業務実態やパフォーマンスの可視化を徹底的かつ継続的に推進することが、持続的発展・高度化を図るSSCにとって必須となる

顧客志向の定着・追及 (内向きの改革・改善からの脱却)

多くのSSC組織において業務効率化や品質向上等の施策を講じ、弛まぬ改善を継続してきた。他方、厳しい事業環境の下、SSC組織は従来からのオペレーションを正確かつ効率的に期日通りに遂行する役割に加え、事業や経営への実のある貢献によって、グループ内での存在意義・価値を高めることが求められている。これまでの業務標準化・効率化、品質管理のような内向きの改革・改善みならず、SSC組織内での顧客(事業・経営)志向の理解・定着を図り、顧客との対話を通じて、顧客にとって“うれしさ”のある改革・改善を講じていくことが重要となる

魅力のある・選ばれる労働環境・キャリアの整備

これまで経営・事業に比してSSC組織がキャリアとしてフォーカスされるケースは少なかったが、昨今の生き方や働き方の多様化の変化を受けて、SSC組織の働く環境やキャリアは改めて見直されるべきである。次世代人材の安定確保に苦慮するSSC組織が多い一方で、トレーニングの充実や報酬の支給などの人材への積極的な人件費・経費の投資ができる企業は少ないものの、SSC組織としてのブランドや文化の醸成、多様な働き方の整備、求める人材要件の見直し等を通じて、魅力ある・選ばれるキャリアの1つとなることが求められる

お役に立ちましたか?