デジタル技術の進化により、広がるマスカスタマイゼーションの可能性
マスカスタマイゼーションは各々のユーザー要望の仕様を大量生産の生産性で実現することにより、ユーザーとメーカーの双方に大きな利益をもたらすものです。マスカスタマイゼーションの考え方は数十年前からありましたが、様々な制約から適用される製品は限定的でした。その後モジュラーデザインの考え方が広がり、多数の製品でインタフェース、部品の共通化が進むとともに、ERP以外のパッケージソフト、3Dシミュレーション、ビッグデータ、センシング、AIなどの様々な技術の進歩により、これまで机上の空論であった製品種においてもマスタカスタマイゼーションが実現しはじめています。
対象製品により、目標設定や必要な改革の内容は異なります
マスカスタマイゼーションへのニーズは、個別仕様の製品と大量生産品で異なり、同時に実現のアプローチも異なります。
マスカスタマイゼーションとは
<一品一様の例:産業用ロボット>
以前はフルカスタムの高価格製品として、個別設計力を売りに、売上を伸ばしてきました。一方で、近年では、グローバルでの成長を実現するためには、特定の顧客の要求に追従する従来の開発スタイルのみならず、マスマーケットをターゲットにした商品戦略(マスマーケットに向けた最適な製品バリエーション展開を行い、受注・生産活動に繋げるためのケイパビリティの獲得)が喫緊の課題となっています。
<大量生産品の例:自動車部品メーカー>
ICEからEV系への移行が加速し、パワートレインは多様化の時代を迎えており、売上横ばいながらも製品数が大きく増加しています。普遍的に生き残る部品については自動車メーカー主導の車種多様化に追従するだけでなく、形状・強度の改善による自動車メーカーへのラインナップの提案も必要となります。
マスカスタマイゼーション成功のカギを握るのは、領域横断の意思統一やデータ標準化
マスカスタマイゼーション実現には商品企画、設計、営業、生産管理、製造に至る業務領域を横断した意思統一が必要となります。しかし業務領域間の利害が一致することは少なく、ほとんどのケースが特定の業務領域に閉じた部分最適化に留まり、全体で効果を出せていません。大きな効果を得るためには、トップマネジメントが体系的な指標(KPI)管理でPDCAサイクルを強い意志を持って継続することが肝要です。
また、いざ業務間の連携や領域横断の指標を実行しようとすると、データはそれぞれの業務に適した形で管理されているため、データの突合に大きな負荷を要したり、更に出てきた結果の精度がそもそも疑わしいケースがあります。特に製造業のコアデータともいえるBOM/BOPはマスカスタマイゼーションのオペレーションとマネジメントを支える重要なインフラとなるため、領域横断のルールを浸透させたアーキテクチャーの構築が欠かせません。
業務領域を横断した意思統一のイメージ