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公認会計士が現場でよく出会う内部統制上の問題点:統制環境編

統制環境はなぜ最も重要なのか「本音と建前」の功罪

自治体でも内部統制制度がスタートし、内部統制評価報告書の公表がなされます。内部統制は6つの基本的要素から構成されています。本稿では、その中で最も重要とされる統制環境を解説します。

統制環境は他の基本的要素の基礎・基盤

地方公共団体における内部統制制度の導入・実施ガイドライン(平成31年3月総務省)においては、「統制環境とは、組織文化を決定し、組織内の全ての者の統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎をなし、それぞれに影響を及ぼす基盤」と定義されています。

組織文化とは組織内部の者が共有する意識や価値観のようなものであり、統制環境とは組織文化に影響する様々な仕組みや活動です。例えば、首長が定期的にコンプライアンスに関するメッセージを発信する取組は、コンプライアンスに関する意識向上を図る取組であり、統制環境の一つの例です。

簡単に言えば、何が善いことで何が悪いことであるか、この判断の価値観(意識)のようなものが統制環境です。仮に社会通念における不祥事と組織が考える不祥事が異なる場合、そもそも組織内で対策が行われることがなく、他の内部統制の基本的要素を機能させることができません。このため、統制環境は他の基本的要素の基礎であり、基盤であると言われています。

 

本音と建前

統制環境を語る上でわかりやすいキーワードと考えられるのが「本音と建前」です。例えば、自治体幹部職員が部下に対してコロナ禍で店舗での飲酒を控えるように呼び掛けているとします。このような状況下で、「今日一日だけだから、まぁいいか」という気持ちで幹部職員が飲みに出かけたりすると、その組織全体での規律が緩み徐々に呼びかけが形骸化してしまいます。

このような「本音と建前」の分離が解消されない場合、不祥事の萌芽となりやがて大きな問題につながってしまう恐れがあります。

 

建前から生じる不祥事の萌芽

昨今の企業社会では、品質偽装など実際の状況とは異なる虚偽の説明をしてしまう事件が生じています。このような問題は、顧客の要求水準を満たさなければならないことを理解していても、安全水準を満たしていれば実害はないという「本音と建前」の使い分けがあるのではないかと考えます。

このような問題は公的機関においてもあるのではないでしょうか。例えば、官製談合はなかなかなくなりませんが、「建前」として違法であると理解していても、入札不調を回避して円滑な行政サービスを提供するためには必要悪、という「本音と建前」の使い分けがあるのかもしれません。

 

発言と行動の一貫性

では、「本音と建前」の弊害を打破するためには何が必要でしょうか。この答えに関連して、本稿のもう一つのキーワードは「インテグリティ」です。海外では、組織の長がリーダシップを発揮する上で必要な誠実さのことを「インテグリティ」という言葉で表現することがあります。この文脈における「インテグリティ」とは、発言と行動が整合、一貫しており周囲の者から信頼されている状況を意味しています。組織の長がこのように発言と行動に一貫性を持っているのであれば、その組織の統制環境は良好であると考えられます。

「インテグリティ」を発揮するリーダーは、必要なテーマを「建前」ではなく「本音」としてとらえて率先垂範して発言、実行します。リーダーのこのような行動の積み重ねは、従来は建前だったお題目を組織の本音に変え、やがて共通の価値観となりそれが組織文化となります。

内部統制の取組みを推進するのであれば、幹部職員に対するリーダーシップ研修等と一体化して、建前を本音にすることで組織文化、つまりは統制環境の改善を図ってはいかがでしょうか。

 

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