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令和2年度公営企業管理者会議について(後編)

公営企業の最新動向解説

令和3年度の公営企業の事業別施策として、旧簡易水道事業の建設改良費に対する地方財政措置の創設、公共下水道への緊急自然災害防止対策事業債の対象範囲拡大、病院事業に対する新型コロナウイルス感染症の対応に対する地方財政措置の継続等があります。

1.令和2年度公営企業管理者会議の開催

総務省は、毎年1月に公営企業の管理者を対象とした「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」を開催しており、令和2年度においても、令和3年1月25日に開催されたところです。公営企業管理者会議は、翌年度の総務省の公営企業施策が説明される場であり、令和3年度からの新たな地方財政措置等も説明されています。

本稿の前編では、公営企業全体に係る施策について解説しましたが、後編では、会議の中で公営企業経営室長及び準公営企業室長から説明された、事業別の施策等について説明していきます。

なお、公営企業管理者会議の資料は、総務省のウェブサイトに掲載されているほか、当日の説明会の様子は、一般財団法人自治体衛星通信機構のウェブサイトにおいて令和3年7月31日(予定)まで視聴可能となっています。本稿では、新規の施策を中心に解説していることから、詳細や過年度から継続された施策については、これらの資料や動画を確認していただければと思います。

 

【参照】

2.事業別の施策

(1)水道事業

①旧簡易水道事業に対する地方財政措置

簡易水道事業は、平成19年度から平成28年度までにおいて、事業統合が推進されてきました。これにより、公営企業会計の適用による経営状況の明確化などに寄与する一方で、地理的条件などで施設統廃合が困難な団体においては、統合前後で経営の実態が簡易水道事業から大きく変化していないにも関わらず、統合後の地方財政措置が限定的になるなど、経営状況が厳しい傾向にあることが指摘されてきました。

令和2年2月から行われた「旧簡易水道事業等の経営に関する研究会」の報告書では、統合後上水道事業において、適切な更新投資を行うことが経営上困難とみられる場合、旧簡易水道施設の必要な更新投資を可能とし、持続的な経営を確保するための新たな地方財政措置を講ずる必要がある旨が提言されています。

これを受けて、浄水場や管路等の旧簡易水道施設の建設改良費について、これまでは国庫補助事業に対して地方財政措置を行っていたところ、今後は地方単独事業についても地方財政措置されることになりました。対象要件は、「統合後の上水道事業に占める旧簡易水道区域の給水人口比率の割合が10%以上」又は「有収水量1㎥当たり資本費又は給水原価が全国平均以上」のどちらかを満たすこととしており、資本費又は給水原価の基準は、大規模団体を除く上水道事業の全国平均であり、資本費は83円/㎥、給水原価は168円/㎥となることが予定されているということです。

要件を満たした事業においては、建設改良に係る企業債の元利償還金に対する繰出金について、特別交付税措置が予定されています。

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出典:総務省「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」(令和3年1月25日開催)資料2 公営企業経営室関係資料 6ページ

 

②高料金対策に要する経費に対する地方財政措置

高料金対策に要する経費に対する地方財政措置としては、「人口3万人以上の地方公共団体における簡易水道事業については、令和3年度以降は公営企業会計を適用していること」が要件となります。

また、従来からの数値基準の要件も継続しており、「前々年度の有収水量1㎥当たりの資本費及び供給単価が、繰出基準の基準値を超えていること(上水道事業については給水原価の基準も有り)」となります。会議資料における基準は令和2年度繰出基準のものですが、令和3年の基準は令和元年度の決算状況調査をもとに、表1の通りとなる予定である旨が言及されています。

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出典:総務省「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」(令和3年1月25日開催)資料2 公営企業経営室関係資料 9ページ

 

表1 高料金対策に要する経費の対象要件(有収水量1㎥当たり)

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出典:総務省「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」(令和3年1月25日開催)の公営企業経営室長の発言に基づき執筆者作成

(2)電気事業

①FIT期間後の事業経営とFIP制度の導入

再生可能エネルギーの売電契約については、固定価格買取制度(FIT制度)により期間中の収入は固定価格により見込むことが可能ですが、FIT制度適用期間終了後は市場価格を踏まえた料金設定が必要となります。

また、強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律が、令和2年6月に成立し、令和4年4月から施行されます。改正法の一つである電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の改正では、新たに市場価格に一定のプレミアムを上乗せする制度(FIP制度)が創設されます。FIP制度では、プレミアムは一定であるものの、発電事業者の収入が市場価格に連動することになります。

料金収入が市場価格に連動すると、収入減になることも想定されることから、これらの状況を踏まえて、電気事業者においては、中長期の経営計画を策定し、民間譲渡も含めた抜本的な改革の検討が必要とされています。

(3)下水道事業

①緊急自然災害防止対策事業費の大幅拡充・延長(下水道は新規)

これまでも一般会計において実施されてきた、緊急自然災害防止対策事業費については、災害が激甚化、頻発化する中で、引き続き防災・減災、国土強靭化対策に取り組めるように、対象事業や事業費を大幅拡充した上で、事業期間を「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」の期間を踏まえて、新たに令和3年度から令和7年度までとしています。この対象事業の拡充により、流域治水対策のうち、内水氾濫対策の下水道が新たに対象に加わっています。

下水道関連の対象経費は、公共下水道事業における雨水貯留浸透施設、雨水ポンプ、樋門、樋管といった雨水対策施設の整備事業に要する経費に対して、一般会計から繰出した額が対象になります。対象経費は下水道事業において支払われる一方、緊急自然災害防止対策事業債は一般会計債であり、下水道事業では起債できないことから、対象事業に対して一般会計から繰出金を受けることに留意が必要です。

出典:総務省「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」(令和3年1月25日開催)資料3 準公営企業室関係資料 32ページ

 

②浸水対策に係る建設改良費の調査

令和3年度の地方財政措置には影響ありませんが、従来明確な統計数値が存在していなかった浸水対策に係る建設改良費について、昨今の内水氾濫の被害リスク増大を踏まえ、令和3年度に調査を試行する予定とされています。また、令和4年度以降は毎年度調査を行うこととしています。

当該調査は、将来的な浸水対策に関する地方財政措置の検討の素地となる可能性があると考えられるとともに、各下水道事業における経営戦略の策定・見直しに当たって、浸水対策をより丁寧に反映させる必要があるものと考えられます。

(4)病院事業

①新型コロナウイルス感染症への対応

新型コロナウイルス感染症についての対応として、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の制度があります。当該交付金は、重点医療機関等の病床確保、宿泊療養施設の確保、外国人対応の充実などを支援し、医療提供体制等の強化を図ることを目的としています。

したがって、単純な建物整備については、交付金の対象外となりますが、設備整備については対象となります。当該事業は厚生労働省の事業ですが、会議の中では、既存病室の個室化や、病室でない部屋を簡易病室に変更するといった場合には、設備整備に該当する可能性があると言及されていることから、当該設備整備を行う場合に留意することが望まれます。

また、総務省の地方財政措置としては、令和3年度も特別減収対策企業債の発行が引き続き認められることになります。このことは、本稿前編において解説していますので、そちらを参照してください。

 

②公立病院医療提供体制確保支援事業

公営企業の経営に関するアドバイザー事業については、本稿前編で解説した通り、令和3年度より「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」が創設されます。しかし、病院事業においては、病床機能の転換等により、転換後のビジョン策定、医療機関等の連携体制の構築、医師確保等の診療体制の確立など、一気通貫で助言・支援する仕組みが必要とされ、「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」に加えて、総務省との協定に基づき公益社団法人地域医療振興協会が市町村に対して支援を行う公立病院医療提供体制確保支援事業が、令和3年度から予定されています。

地域医療振興協会からのアドバイザー派遣については、入門的な情報を提供する基礎的支援を「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」の一環として実施するとともに、専門的支援として、具体的診療・経営改革支援の実施計画を作成しようとする団体(年間3~5団体程度)に対して派遣することとしています。専門的支援については、一般会計繰出額の8割について、特別交付税措置が予定されています。

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出典:総務省「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」(令和3年1月25日開催)資料3 準公営企業室関係資料 16ページ

 

③再編・ネットワーク化に係る地方財政措置の延長

令和2年度において、新公立病院改革ガイドラインが期限切れになり、それに合わせて地方財政措置のうち期限が切れる予定のものがあります。しかし、新公立病院改革ガイドラインの改定等を含む取扱いについては、その時期も含めて再整理することとされており、令和3年度においても、現行の地方財政措置が継続される点に留意が必要です。

(5)その他

ここまで紹介してきた事業以外の事業については、事業固有の施策として令和3年度に新たに実施されるものは紹介されていません。しかし、過年度から継続する地方財政措置等についての説明があったほか、交通事業においては、特別減収対策企業債の対象となることが想定されています。

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