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マレーシアにおけるリスク調査結果

APリスクアドバイザリー ニュースレター(2023年2月27日)

デロイト トーマツ グループでは、毎年アジア地域(インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ミャンマー、中国、台湾) に進出している日系企業様を対象に、リスクマネジメントの対応状況、不正への取り組み状況を把握するためのアンケート調査を実施しています。2022年度の「アジア進出日系企業におけるリスクマネジメントおよび不正の実態調査」は、2022年10月から11月にかけて行われ、720社の日系企業の皆様にご協力をいただくことができました。今回はそのうち、マレーシアの会社(70社)から頂戴した回答を中心に、アンケート結果の解説をします。

 

1.リスクマネジメント

「優先して着手が必要なリスク」は人材不足と価格高騰対応

下記(表1)に記載の通り、マレーシアでは人材流出、人材獲得の困難というリソース不足に関するリスクが他を大きく引き離して、最優先課題となっています。2位以下は、原材料や人件費の高騰(2位/3位)、為替変動(5位)など、コスト高につながるリスクが上位に入っており、それに付随して市場における価格競争(4位)への対応が厳しくなっていることが伺えます。

また、サプライチェーン寸断、パンデミック、サイバー攻撃、自然災害などBCP(事業継続計画)に関連するリスクについても関心は高いようです。特に自然災害リスクについては、主要都市圏で大規模な洪水が複数発生したことから、急激に順位が上昇しています。マレーシアは一般的に自然災害が少ない国と言われており、確かに日本よりは統計的にも低リスクとされていますが、リスクがゼロではないことが改めて認識されたと思います。

(表1)優先して着手が必要なリスク(上位3項目回答)

 優先して着手が必要なリスク(上位3項目回答)(アジア進出日系企業におけるリスクマネジメントおよび不正の実態調査 2022年版)

このような課題認識のもと、どのような取り組みを優先的に行っているかを示したのが次の(表2)となります。

 

「必要なリスク対策」はコスト削減と人材関連施策が上位に

前項に記載の通り、価格高騰に関する課題意識が強かったことから、それに対応して「コスト削減」の回答が1位となりました。また、人材不足に対する課題意識に対応して、「人材育成計画の見直し」(2位)や「給与・処遇の見直し」(同率3位)など、人事関連施策が多くなっているのが特徴です。「業務プロセスの標準化」(同率3位)という回答についても、人材不足の中、特定の人に頼らない効率的かつ安定した業務運営を志向しているためと思われます。

(表2)今後一年程度を見越して必要なリスク対策(上位3項目回答)

今後一年程度を見越して必要なリスク対策(上位3項目回答)(アジア進出日系企業におけるリスクマネジメントおよび不正の実態調査 2022年版)

次に、不正に関するアンケート結果について説明します。

 

2.不正

マレーシアでは全体の1割の会社が不正を経験

過去3年程度に不正が発生、または発生している懸念があり調査中などの回答を含めた「不正あり」と回答した企業が全体の1割となりました。この比率はアジア全体と同様、近年減少しており、また国間の比較においてもマレーシアは常に相対的に低い比率となっています。

(表3)過去3年の不正の発生割合

考えられる要因としては、マレーシアは基本的に英語による証憑運用であることや会社の規模がそれほど大きくないことにより、本社や現地駐在員からも統制がかけやすい、目が行き届きやすいことが挙げられます。とはいえ、不正が「顕在化していない」=「発生していない」ということではないため、マレーシアにおいても他のアジア子会社同様、内部統制は重要なアジェンダです。前述の(表2)の必要なリスク対策においても、内部統制強化は第7位にランクインしており、不正リスク対応は常に留意する必要があります。

 

マレーシアにおける不正は売上関連が相対的に多い

マレーシアで起こった過去3年分の不正の内容を掲載したグラフ(表4)を見ると、他のアジア諸国同様、総じて在庫、購買、経費に関する不正が多くなっていますが、2022年に関しては、「不適切な収益認識」が第2位となっています。「売上入金に関する不正」も2021年と2020年には発生しており、これらの会社では売上計上から入金までのプロセスにおける内部統制に何らかの問題があったことがうかがえます。

(表4)マレーシアにおける不正の内容(過去3年度比較)

マレーシアにおける不正の内容(過去3年度比較)(アジア進出日系企業におけるリスクマネジメントおよび不正の実態調査 2022年版)

一般的に、営業部は会社の中でも強い権限を持ちがちで、財務部門などその他の部門からは、明らかにおかしくない限りは意見がしにくいというような声が聞かれることがあります。そのようなケースでは、プロセス間や部門間での業務分掌や証憑運用に関するルールが整備されているか、整備されていたとしても、実態として本当にそのとおり運用されているかについて確認することが重要です。

 

まとめ

以上、2022年度の「アジア進出日系企業におけるリスクマネジメントおよび不正の実態調査」の回答結果について、概観しました。対応すべきリスクについて、コスト抑制や人材面に関するものが深刻化してきている中、サイバーリスクや自然災害対応など新たなリスクも増えてきています。リソースが不足する一方で、対応すべきリスクは多様化、複雑化しており、そのようなことを対応する役割のある方にとっては、難しい状況にあると推察しております。本資料をリスク認識の抜け漏れや、他社の活動と比較したときに自社の遅れがないのかなどの確認、日本本社様とのコミュニケーション等にご活用いただき、その中で、何かデロイト トーマツでお役に立てることがありましたらご遠慮なくお申し付けください。

著者:椙下 翔太
※本ニュースレターは、2023年2月27日に投稿された内容です。

アジアパシフィック領域でのリスクアドバイザリーに関するお問い合わせは、以下のメールアドレスまでご連絡ください。

ap_risk@tohmatsu.co.jp

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