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中国における脱炭素およびESG開示の動向と対応(アップデート)

APリスクアドバイザリー ニュースレター(2023年10月2日)

※本ニュースレターは、2022年9月20日に投稿された内容を加筆したものです。

中国における脱炭素の動向と政策

地球温暖化を背景に脱炭素に向けた動きが世界の潮流となっており、多くの国が2050年までのカーボンニュートラル達成を目標に掲げているが、中国においても、2020年9月に習近平国家主席が第75回国連総会において、いわゆる「2060目標」を正式に世界に向けて発表した。これは、2030年までに温室効果ガス排出量のピークアウトを目指し、2060年までにカーボンニュートラルを目指す」という目標であり、当該目標公表後、3段階での到達目標の発表(~2025年:⾮化⽯燃料割合20%。 ~2030: ⾮化⽯燃料割合25%。 ~2060年:⾮化⽯燃料割合80% )、第14次5カ年計画に基づく具体的な計画(グリーン及び低炭素エネルギーへの移行を加速することが明文化)の発表等、世界最大の温室効果ガス排出国である中国においても、トップダウンで脱炭素に向けた動きが加速している。

このような脱炭素への目標を達成するための主な施策として、火力発電の比率を下げ太陽光・風力・水力発電等の比率の向上および水素エネルギーの活用等によるエネルギーの代替、産業廃棄物や資源のリサイクルの促進、モビリティ分野における技術革新による動力源のグリーン化・エネルギー効率の向上、炭素除去技術の推進等がある。また、2021年7月には全国炭素排出権取引所が始動しており、まずは重点排出事業者である電力事業者を対象に余剰排出量や不足排出量の売買が開始されている。

2022年6月に通知された、都市・農村建設分野におけるカーボンピークアウト実施方案(城乡建设领域碳达峰实施方案)においては、グリーンビルディングや省エネ要件の達成目標が示されたため、建物関連設備の納入業者は省エネ要件等を満たす製品の更なる拡充に迫られることが予想される。

同様に2022年7月に通知された、工業領域におけるカーボンピークアウト実施方案(工业领域碳达峰实施方案)において、グリーン工場の促進や、第三者評価機関の監督などを促進することが定められた。

今後の規制の対象は、炭素排出の主要産業である電力産業からその他の高排出産業へ、そして全産業へと拡大する事が想定されている。

 

中国のESG開示の動向

世界的な脱炭素の動きの加速に合わせ、企業の気候変動関連の情報開示についてもTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく開示等を中心にその充実が図られてきた。ESG開示に係る国際的な開示基準については、基準設定主体や基準が乱立している状況であったが、2021年11月に設立されたISSB (国際サステナビリティ基準審議会) を中心に他の設定主体との統合・合意が進んでおり、2023年6月には北京国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)のオフィスを開設するなどの動きを見せている。

さらには2023年7月、国有資産監督管理委員会総局(SASAC)は、中央企業(中華人民共和国の国有企業のうち、中央政府の管理監督を受ける企業)が管理する上場企業のESG報告書の標準的な開示の指針となる「中央企業が管理する上場企業のESG特別報告書の作成に関する研究」を発表した。本研究は中央企業が管理する上場企業を対象としているが、中央企業がもたらした実証効果が、今後他の民間企業のESG情報開示報告書作成における標準化を促進することも考えられる。

 

上記動向を踏まえた在中日系企業の対応

上述した中国での脱炭素の政策・動向を踏まえ、電力、石油化学、化学、建材、鉄鋼、非鉄金属、製紙、航空の8重点事業に属する中国の国営企業を中心に、カーボンニュートラル達成に向けた自社の排出量測定、削減に向けた計画・対応が中国で始まっている。在中日系企業からも、中国事業における排出量の見える化、削減計画の策定、再生エネルギーの確保に向けた施策等に関するご相談が増えてきており、今後さらに本格化してくるものと想定される。また、上述したESG開示の観点、および2023年6月に公表された、IFRS会計基準設定主体であるIASBの姉妹組織であるISSBによって発表された、統一化された気候変動関連の開示基準(S1およびS2)等の観点から、海外連結子会社も今後開示・監査の対象とするかについて議論が始まっており、在中日系企業においても、日本本社の要請により中国での関連情報の収集、またそれを行う体制の整備、情報の正確性を担保する内部統制の整備等がより明確に求められることが想定される。

ISSBの組織構造
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IFRS S2の主要ポイント
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下図のアプローチ例にある通り、カーボンニュートラルに向けては事業戦略、パートナーシップといったビジネス観点のみならず、リスクマネジメントや情報開示の観点も含めた取り組み全体に関するロードマップが必要となる。デロイト トーマツにおいても、中国に在するデロイト ネットワークと連携し、カーボンニュートラルに関するプランの作成・実行(温室効果ガス排出量の見える化、削減に向けたロードマップの作成、削減施策等)、気候変動シナリオ分析、TCFD等の開示対応、等これまで数多くの支援を行ってきている。脱炭素に向けて明確な指針を示す中国における今後の脱炭素の動向、及び在中日系企業において検討すべき課題について、本稿が皆様の理解の一助になれば幸いである。

カーボンニュートラルへのアプローチ例
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本稿に関連するデロイト トーマツ グループのサービスのご紹介

  • カーボンニュートラル計画策定
  • 温室効果ガス排出量の検証
  • 気候変動シナリオ分析
  • TCFD等の気候変動関連開示対応

詳細は各拠点デロイト トーマツ グループ担当者までお問合せいただけましたら幸いです。

著者:井上 諒

※本ニュースレターは、2023年10月2日に投稿された内容です。

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