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タイでの不正モニタリングツールの導入と課題について
APリスクアドバイザリー ニュースレター(2023年3月31日)
タイで生じる不正事例とその原因分析
デロイト トーマツ グループがアジアに進出する日系企業向けに実施したリスクマネジメントと不正に関するアンケート結果において、タイ拠点に不正懸念があると回答した割合は、減少傾向にあるものの20%以上を占めております。
賄賂や資産の横領、現金の着服など様々な種類の不正事例がありますが、タイで発生する典型的な不正事例の一つとして「取引先と結託した購買取引に関する不正」が挙げられます。その背景として、家族や親戚などが小規模の会社を経営している場合も多くみられ、その会社を取引先に含めることで近親者を巻き込んだ不正が生じやすい環境があるといえます。
タイで不正が発生する主な原因として、以下を挙げることができます。
- 現地従業員に対するコンプライアンス啓発の不足、リスク感度の違い
- 日本人を含むマネジメント層による業務プロセス最新状況の把握の困難さ(可視化不足)
- マネジメント・管理担当者による定期的なモニタリング機能の実施不足
日系企業のタイ拠点における管理担当者は、業務範囲も広く、不正リスクに関するモニタリングに十分な時間を割くことができていないケースがあります。
不正対応策としてのモニタリングツール導入と課題について
タイにおける日系企業では、不正発覚後の対応策として、購買データなどのモニタリングツールを活用して定期的に分析する仕組みを導入することを検討する事例が増えています。
モニタリングツール導入のメリットとして、主に以下が挙げられます。
- 異常値や高リスクの取引を勘に頼らず事実ベースで抽出するので、モニタリング手法の属人化を防止
- 統計的な手法により取引全体の傾向を理解し、異常な取引/部門/従業員などを可視化
- 最新リスクに対応した分析が可能で、分析ノウハウの蓄積によるリスク認識の精度が改善
- 手作業で実施していた不正モニタリング工数を削減
しかし、実際に導入を検討する際には以下の課題があり、容易に導入できないまたは効果的ではないケースもあります。
- マスタデータの整備(データ統合、クレンジングなど)が不十分
- 結果を検討するための専門的知識と経験を有する人材の確保が困難
- 業務プロセスの理解不足により適切なリスクシナリオを設定できていない
特にモニタリングツール導入の前提となるマスタデータや取引データの整備ができていない場合、実際の導入までにかなりの時間を要することがあります。
終わりに
本稿では、タイでの不正事例とその対応策の一つとしてのモニタリングツールの導入、その課題について筆者の見解を述べさせていただきました。
不正が発覚してから改善策を検討するのではなく、常日頃から自社のプロセスおよび統制活動を理解し、改善事項がないか定期的に確認しておくこと、自社のデータ整備を進めておくことをお勧めいたします。
著者:杉村 健介
※本ニュースレターは、2023年3月29日に投稿された内容です。
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