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東南アジアにおけるデータガバナンスの重要性について
APリスクアドバイザリー ニュースレター(2022年11月29日)
データガバナンスはなぜ必要か
東南アジアにおける企業経営者が抱える課題として、ビジネス環境の急速な変化をどう早期に捉え、迅速かつ効果的に手を打つべきか、ということがよく挙げられています。特に外的なリスクとして最近は、地域での紛争や自然災害に加え、為替や急激な原材料・エネルギーの高騰、テクノロジーの変化、働くことへの労働者の価値観の変化、などがよく聞かれるところです。また、内部環境としては人材確保・人件費のコントロールが難しいことや、サイバーセキュリティ、コンプライアンス、サプライチェーン管理、ESG/サステナビリティ等のリスクが多く挙げられています。
このような内外のリスクを迅速に捉え、自社の事業戦略において軌道修正やさらなる打ち手を講じるためには、重要な情報をいかに迅速に押さえ、自社の意思決定に活かせるか、という点が非常に大事になります。
最近は自社における重要なパフォーマンス指標をKPI(Key Performance Indicator)として管理し、そのKPI達成の阻害要因を早期に捉えるためにKRI(Key Risk Indicator)を設定し、モニタリングすることの必要性が広く認識されており、東南アジアで活動する多くの日系企業においては地域統括機能を担っている会社あるいは部門が担当されていることが多いと理解しています。
しかし、以下のような課題が多く聞かれており、その対応に苦慮されているケースが散見されています。
【各国で管理しているデータが揃わない】
- データの定義が異なり横串で分析できない:
各国でのシステムの成り立ちが異なり、データを地域で揃えて分析するための施策が講じられておらず、ばらばらの定義で管理されている
- そもそも分析用として欲しいデータが各国のシステム内に存在していない:
各国個別にシステム導入したことや、買収やJVの相手先の事情によりデータの管理方法が異なる - データの品質にばらつきがあり、効果的な分析のために相当程度のデータ変換が必要:
オペレーション上の日付管理ルールが緩いシステムなどを分析に使うと、誤った示唆を得ることになりかねない
- データ抽出にかなりの手間がかかり、タイムリーに入手できない:
データ抽出のために相当な工数をかける必要があり、他の業務がストップしてしまう
- データを管理する担当部門が設定されておらず、データ管理上の課題が放置されている:
システム担当はいるものの、データ観点でシステムを横串で管理監督する機能がない
【分析すべきデータが十分に検討されていない】
- 自社の戦略に紐づく適切なKPIが設定できていない
- その結果、KPIの阻害要因となりうるKRIも設定できていない
このような状況の場合、現時点での課題を一度幅広に洗い出し効果的な打ち手を講じることで、社内のデータ管理の仕組みを整備すると共に経営の意思決定に貢献できるデータ品質を確保する活動が望まれます。このような取り組みはデータガバナンスと呼ばれ、デロイト トーマツにおいてもデータガバナンスをキーワードに様々な企業の課題解決をご支援しています。
データガバナンス成熟度向上に向けた実践方法
デロイト トーマツではデータガバナンスの成熟度向上に向けて下図のようなフレームワークを用い、戦略からプロセス、組織等の課題を把握し、整合性をもってそれぞれの課題解決に導くための支援を行っています。
デロイト トーマツのデータガバナンス フレームワーク
図中のすべてに高いレベルでの準拠性を求めるものではなく、自社の課題を健康診断的に把握いただくための物差しとしてご活用いただけるフレームワークになっています。データガバナンスが技術的な課題のみで構成されるものではなく戦略や組織・人材等を含む経営管理全般に影響を与えること、そのために広範な取り組みが求められることをご理解いただけますと幸いです。
また、特定された課題を通じて組織を改善する方向性について、デロイト トーマツでは4つの主要な方向性を示しています。
かなり大掛かりなイメージを持たれる方もいらっしゃると思いますが、東南アジアでの日系企業におけるデータガバナンス整備に向けての第一歩としては、まずは以下のような点における自社の状況についてチェックし、自社が抱えている課題を大まかに把握いただくことをお勧めいたします。
- 自社の戦略上、定点観測が必要な重要なデータは何か
- そのデータは今、タイムリーに望む品質で入手出来ているか。複数拠点をまたいで入手する場合、それぞれのデータを統合して分析可能か
- データ入手のためのプロセスは整っているか。継続的に手間をかけることなく入手できる仕組みになっているか
最後に
このように東南アジアにおいて、よりスピーディーに精度の高い意思決定を行うことでこの激変する環境を乗り切るためには、今後は社内外にある膨大なデータを利活用することが非常に重要になってくると考えます。そのためには、各国や各拠点でバラバラに運用されているデータ管理について、今後は地域全体での成熟度を上げるための組織づくり、ルール作り、システムづくりを進めていかれることが望まれます。ただし、その実現には重要な課題の特定を行ったうえで中長期的な視点で対策を講じる必要があるため、様々な要素を考慮したうえで整合性ある取り組みをすることが求められています。
デロイト トーマツではこのようなデータガバナンスに関するテーマについて様々なアドバイスを提供しておりますので、専門家との対話を通じ何か少しでも貴社にとっての取り組みに関するヒントを得ていただければと考えております。今回ご紹介したようなテーマにご関心のある方はお気軽にお声がけいただけますと幸いです。
著者:森本 正一
※本ニュースレターは、2022年11月29日に投稿された内容です。
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