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外部評価スコアを活用した東南アジア地域におけるESG経営の実践

APリスクアドバイザリー ニュースレター(2023年11月30日)

ESG経営と最近のトレンドについて

昨今のビジネス環境では、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の各側面への配慮がますます重要になっています。ESG経営に関する取り組みは、株主や消費者の評価だけでなく、企業の持続可能性にも直接的な影響を与えています。最近のトレンドでは、ESG経営の強化とその透明性の向上により、企業はグローバル競争における優位性の確保を目指しています。

いくつかの調査結果によると、ESG要素と企業業績等との間にはプラスの相関関係があると結論づける研究論文が主流となっています。また各国の年金運用機関などでは、ESGを考慮した投資を推進しています。

これらのESG関連の取り組みは欧米や日本でのみ推進すれば良いのではなく、東南アジア地域におけるビジネス環境においても重要です。各国・各地域の多様な現地文化、法規制、社会的要因を考慮に入れたESG戦略の策定と実践が不可欠です。

 

外部評価機関の役割とその重要性

ESGの外部評価機関は、企業の持続可能な経営と社会的責任を評価し、その成果を投資家や関係者に提供する重要な役割を果たしています。例えば評価機関には下記などがあります。

  • S&Pグローバル
  • FTSE Russell
  • 東洋経済新報社
  • ブルームバーグ・エル・ピー
  • MSCI

これらの指標は、企業がESGの各分野でどのようにパフォーマンスを発揮しているかを示しており、投資家にとって重要な情報源となっています。

これらの指標はそれぞれ異なる観点から各社のESGのパフォーマンスを評価しており、企業がこれらの指標による評価を高めることは、投資家の信頼を得るためにも重要です。外部評価機関によるスコアリングは、日本本社の方針・取組みだけでなく、東南アジア各国やグローバルを含む企業全体での具体的な実践結果を反映しています。したがって、日本本社の取り組み方針と現地での実施事例をしっかりと紐づけ、現地での取り組み成果が外部評価に影響を与えていることを認識することが重要です。

 

ESG活動高度化に向けたプロセス

効果的なESG評価への対応プロセスは、以下の3つのステップに分けて考えることができます。

 

1. 外部評価の現状分析

まず、現在のESG評価の状況を理解し分析することが重要です。このステップでは、各評価機関によるスコアを詳細にレビューします。

2. ESG活動の目標設定

分析の結果を基に、具体的で実現可能なESG活動の目標を設定します。業界のベストプラクティスや競合他社との比較を通じて、自社の強みや改善点を検討します。

3. 活動項目の設定

目標達成に向けて、具体的な活動項目を設定します。このステップでは、新たなポリシーやプログラムの導入、従業員への研修、ステークホルダーとのエンゲージメントの強化などが含まれ、経営方針や時間軸などの観点を踏まえて活動項目を絞り込みます。

これらのプロセスを通じて企業はESG評価の向上に取り組むことが出来ます。ESG活動の高度化のポイントは、日本本社での方針策定と現地での具体的な取り組みの両輪の実現です。各国の文化や市場の特性を理解し、これらを踏まえた実践的な活動項目の設定、本社関連部門との情報連携が成功の鍵です。

 

東南アジア地域におけるESG経営の実践

評価の積極的な活用

ESGの外部評価は、単なるスコアリングを超え、企業が取り組む持続可能なESG経営の質を向上させるための有力なツールです。これらの評価を活用して自社の強みを伸ばし、改善が必要な領域に対する計画の策定が効果的です。

ESG経営の着実な実践

ESGの外部評価結果を踏まえた改善計画の実現には、現地・現場での着実な実践が不可欠です。本社主導で実施されることが多いESG関連の取組みですが、東南アジア地域は各国・各地域の多様な文化、法規制、社会的要因等を背景に、画一的な取り組みを実行することが難しい場合があります。日本本社の方針を踏まえたうえで、各国の実情に即した実践事例を着実に創出し、その成果を日本本社に共有することが、持続可能な成長と外部評価の向上の実現に繋がります。

貴社の現在の外部評価状況や効果的な活動項目の設定、また本社を含めた関連部門への情報連携などについて、詳細な情報やベストプラクティスを確認されたい際は、ぜひデロイト トーマツのプロフェッショナルまでお声をお掛けください。

著者:渡辺 佑己

※本ニュースレターは、2023年11月30日に投稿された内容です。

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ap_risk@tohmatsu.co.jp

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