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台湾におけるデジタル化対策

APリスクアドバイザリー ニュースレター(2023年7月31日)

日本と台湾のデジタル化の流れ

日本において「2025年の崖」という言葉をよく耳にするようになりましたが、こちらは経済産業省が発表しているもので、深刻なIT人材不足と老朽化した基幹システムにより、企業のグローバルにおける競争力が低下し、最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるという点があげられています。企業はDX(デジタル・トランスフォーメーション)を加速させる必要がありますが、ブラックボックス化した既存のレガシー基幹システム、変革にかかる多大なコスト、IT人材不足等の様々な要因が足かせとなり、なかなか取り組みが進まない恐れがあります。

台湾においてもDX化の波は押し寄せており、2022年8月に数位発展部(デジタル発展省)が新たに設立されました。デジタル発展省では、全市民のデジタル・レジリエンスの確立やサイバー攻撃に対する情報戦の防衛強化だけではなく、DXのエンジンとなり台湾のデジタル化のための環境を整えることが期待されています。オードリー・タン氏が初代部長として就任していることからも台湾政府の取組みに向けた意欲の高さが伺え、市民と技術の連結、産業とセキュリティの強化、社会のデジタル化の加速を実現することが期待されています。

 

台湾の日系企業のデジタル化の実情

このような日本のDX化事情と台湾のDX化事情の両方に影響されているのが台湾の日系企業となります。日本の親会社からはDXに取り掛かるように言われ始め、台湾でも競争力を維持するためにDXに取り込む必要性が出てきています。しかし重要性は認識できていても、DXを本当に実現するためには膨大な時間や費用がかかり、多くの台湾の日系企業ではITに関する人材やITの予算も十分に確保できていないため、思うようにDX化が進んでいないのが現状となります。

ではどうしたらよいのか?どこから始めればいいのか?

このようなお悩みを抱えている企業が始めやすい取り組みが今回ご紹介するプロセス・オートメーションとなります。台湾の日系企業ではまだまだ紙やスプレッドシートでの手作業や、特定の従業員に依存したルーチンワーク業務が多く存在します。こういった手順が予め決まっている業務は、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)等のデジタルツールを利用して効率化していくことが可能です。

RPAは、工場でロボットが組立やパッケージングをするように、例えば人事や経理財務等の業務領域で、人の動きを真似て各種アプリケーションを操作するソフトウェアを指します。ロボットですので、早いスピードで同じ作業を何度も繰り返し行うのを得意としており、異なるシステム・メール・スプレッドシート等を使った手作業による入力やデータ連携の多くを自動化し、既存のシステムを変更することなく導入できる点が注目を浴びています。

 

RPAを利用して何ができるようになるのか

RPAはパソコン等に入れて利用するソフトウェア・プログラム・ツールであり、人が実際にパソコン等でマウスやキーボードを使って実施する作業を代わりに実行することが可能です。以下、RPAが得意とする作業項目の例となります。

<RPAが得意とする作業項目(例)>

  • 電子メールと添付資料の開封
  • ファイルとフォルダの移動
  • Web/基幹システムの利用
  • データベースの更新・読み込み
  • Web上の情報取得、定型資料からのデータ取得
  • レポートの生成と分析
  • データの比較・チェック

RPAを導入することで、普段実施している基幹システムへの入力業務や、電子メールの送受信、添付ファイルの保存と格納作業等、毎日繰り返しおこなわれている業務を自動化し効率化できるようになります。

<RPAによる自動化に適した作業(例)>

  • 複数のシステムを利用した作業
  • 取引件数が多い作業、時間を要する作業等
  • ヒューマンエラーが起きやすい作業
  • ルールが整備されている作業
  • 定型的で例外事項が少ない作業
  • 手作業が多く含まれている作業

RPAはシステム構築等が不要であり、覚えることは多少ありますがユーザー自身でロボットを設定することが可能です。また様々な業務の変化に対しても、ユーザー自身で柔軟に適宜ロボットの設定を修正できることは大きなメリットと考えます。また一度、導入してしまえば、後はロボットが24時間365日休みなく働いてくれます。ロボットが決まった動きを繰り返し実施しており、何かあった際にも作業ログが残っているのでデータ取得時の検索条件等を後からトレースすることも可能なため、RPAは内部統制やコンプライアンスの強化にも役立つツールと言えます。

 

デジタル化を進めるために

デジタル化は複雑で難解というイメージがありますが、入り口としてまずはRPA等のツールを使った取り組みを是非ともご検討いただければと思います。デロイト トーマツでは、RPA導入時の業務分析、リスク評価、内部統制の専門家とRPAの設計・開発の専門家が連携し、リスクを適切に管理した上でより効果的なRPAの導入を支援しています。またRPAの導入支援に留まらず、RPAに係るITガバナンス構築、業務のBPRやペーパーレス化支援、RPAの導入・操作・管理に関する教育研修の実施、RPAの保守・運用等も支援しています。

最近では受注から売上、利益、経費、工場稼働、品質などの連結の経営状況をリアルタイムに可視化するマネジメントダッシュボード(経営情報の一元管理プラットフォーム)や、CRM(顧客関係性マネジメント)を実現するためのマーケティングツールや営業活動の効率化を図る営業支援ツールを導入している企業も増えてきており、台湾においてもますますDX化が進んできております。デロイト トーマツでは、デジタル化実現に向けた様々な支援を実施しておりますので、是非ともお気軽にお声がけいただきたくお願いいたします。

著者:長坂 賢

※本ニュースレターは、2023年7月31日に投稿された内容です。

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