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台湾半導体企業の最新動向とセキュリティ対策
APリスクアドバイザリー ニュースレター(2022年6月24日)
2020年に新型コロナの世界的流行が始まって以来、厳格なコロナ対策により感染拡大を抑えて来た台湾ですが、ここに来てオミクロン株の域内感染が急拡大しております。台湾に居住する筆者の知人と会話する中でも、勤め先から毎週簡易検査を義務付けられており、コロナ感染症の陽性のお知らせを耳にすることがよくあります。
このような状況にもかかわらず、2022年第1四半期のGDP成長率は3.06%のプラス成長となっており、この底堅い台湾経済のけん引役のひとつが半導体事業であることはもはや周知の事実なのではないでしょうか。テレワークによるパソコンやスマートフォン、Wi-Fi等の通信機器や世界中で大人気な家庭用ゲーム機まで、半導体ニーズは依然として高い状況が続いております。むしろ5Gおよび将来的な6Gへ移行により、ニーズは今後も高まっていく可能性があります。
本稿では世界の半導体産業をリードしている台湾の半導体業界の最新動向の一部をご紹介できればと思います。
半導体業界初となるセキュリティ規格の発行
2022年3月、世界最大手の半導体メーカーであるTSMCおよびITRI情報通信研究所率いるFab & Equipment Information Security Task Forceは、半導体業界団体初となるサイバーセキュリティ規格「SEMI E187」を発表しました。この規格は製造装置の4つの主要コンポーネント(オペレーティング・システム、ネットワークセキュリティ、エンドポイント保護、セキュリティモニタリング)に焦点を当てており、マルウェアを筆頭とするサイバーインシデント脅威に対応するためのセキュリティ要件がまとめられています。具体的には、以下4つが主要分野となります。
コンピュータオペレーションシステム
- 装置搭載のオペレーティング・システムに関する要求
- パッチまたはセキュリティ更新を適用する手順の技術文書開発
ネットワーク
- 安全な通信転送プロトコルのサポート
- ネットワーク構成の技術文書開発
エンドポイント保護
- 脆弱性の軽減、スキャンの実行
- マルウェアスキャンの実行
- アクセス制御
- 技術文書開発
モニタリング
- セキュリティイベントログの管理
当該セキュリティ水準策定の背景には企業へのサイバー攻撃の急増があります。例えば2018年に大手ファンドリーがWannaCryと呼ばれるマルウェアに感染し、生産工程の停止を余儀なくされました。同事件は一部デバイスに感染したマルウェアから汚染が広がったことにより、生産ラインが完全に停止してしまったのですが、感染拡大の原因の一つは一部デバイスOSが、当時すでにサポート終了していたOSを継続して利用していたことにあります。また最近では台湾に本拠をおくシリコンウェハメーカーが、同じくマルウェアに感染し、シリコンウェハの製造および出荷ができなくなりました。
SEMI E187を推進することで、半導体デバイスメーカーが自社の情報を保護する上で有効なだけでなく、半導体業界サプライチェーン全体の情報セキュリティの強化が期待できます。
参照資料:
SEMI本部Standards, EHS & Sustainability, Senior Director ,James AmanoInternational. 2022. SEMI初となるサイバーセキュリティ規格を出版. (オンライン) 2022年3月7日. https://www.semi.org/jp/standards-watch-2022-March/SEMI-publishes-first-cybersecurity-standards
Standards&EHS部SEMIジャパン. 2022. 半導体製造サプライチェーンの安全確保の支援-ファブ設備に関するサイバーセキュリティ規格が出版. (オンライン) 2022年3月13日. https://www.semi.org/jp/blogs/semi-news/semi-taiwan-sets-out-to-help-secure-chip-manufacturing-supply-chain-with-publication-of-first-fab-equipment-cybersecurity-specification
サイバーセキュリティにおけるデロイト トーマツの支援事例
半導体業界にかかわらず、製造業全体においてOT(工場制御系システム)の管理は重要です。デロイトでは最新のデジタルテクノロジーのリスクに対して、幅広い分野のアドバイザリーサービスを提供し、企業におけるリスク制御の強化をお手伝いしております。
以下に掲げる支援事例の中でもデジタルセキュリティ戦略の一環として台湾現地法人における現時点のセキュリティ対策の成熟度などを可視化し、SEMI E187といった現地で事業を継続する前提となりうるセキュリティ要件の充足度合いを確認することは有用と思われます。
- デジタルセキュリティ戦略
- デジタルセキュリティの検出と対応
- データプライバシー
- ソフトウェア開発のセキュリティ
- クラウドセキュリティ
- インフラストラクチャのセキュリティ
- 新興技術セキュリティ
- IDセキュリティ
詳細は各拠点デロイト トーマツ グループ担当者までお問合せいただけましたら幸いです。
著者:三木 悠一
※本ニュースレターは、2022年6月24日に投稿された内容です。
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