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企業の新規事業・イノベーション創出における課題と施策

4つの成功要因と、求められるファシリテーションの重要性

日本においては総需要の継続的拡大が予想されていた時点に確立した、ルーチン化された既存事業の収益で事業継続できるフェーズは終わりが近づいている。危機感を持つ多くの企業が新規事業への参入やサービスの拡張をはじめとして、ビジネスの在り方を見直している中、適切なイノベーション創出アプローチで事業化を目指すことが重要となる。

イノベーションの必要性

企業における新規収益源の獲得・新規事業立上げの成功は喫緊のテーマとなっている。イノベーションを通じて新たな収益源を確保することが重要であるが、課題感を持った企業におけるイノベーション創出状況は芳しくない。

日本能率協会「経営課題2018」によると、新事業開発の成果状況に関する質問に対して「成果が出ている」と回答したのは4.6%、「ある程度の成果が出ている」と回答したのは38.6%だった一方、50%を越える回答者が「成果は出ていない」もしくは「あまり成果は出ていない」と回答している。

なぜイノベーションが推進できていないのか。イノベーションの成功要件を見ることで、創出への道を見出したい。

※日本能率協会 「経営課題2018」, https://www.jma.or.jp/img/pdf-report/keieikadai_2018_report.pdf, p.55

 

イノベーションの成功要因

定常業務が問題なく運営されている企業において、創造的な活動が難航する理由は、検討すべき問い(キークエスチョン)自体が、新規事業構想プロセスの性質に鑑みてふさわしくないケースが多いことにある。

イノベーション型「創造」プロセスの特徴
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定常業務に代表される1を10とする「発展」プロセス[図表・右]において、取組む課題は「既存サービスの品質向上」など既存の枠組みの中に制約されるものであり、また施策も既存サービス構築後の惰性であり、漸次的かつ限定的(低コスト)なものとなるケースが多い。

このような発展型の課題設定を行った場合、眼前に存在するビジネスモデルをどうするか、という議論に陥ってしまい、事業運営の毎日の中で行われる所謂“カイゼン”作業と変わりがなくなってしまう

一方、イノベーションで要求される0を1とする「創造」プロセス[図表・左]は、既存の枠組みにとらわれない課題設定、および柔軟な発想によるブレインストーミングが主要な生産プロセスとなる。

前述した既存モデルのカイゼン作業は経験の機会も多く、また社内ノウハウも蓄積しやすいが、新規モデルの構築は、旧来のビジネスモデルに依存してきた企業にとっては経験の機会・ノウハウが少なく、いわば「使い慣れない筋肉を動かす」状態となるため難易度が高いとされがちである。

図表に記載のプロセスの差異において、創造プロセスの要求を理解し、適切な運営を行うことがイノベーションの成功要件といえる。
 

【イノベーションの成功要件】

  • 適切なテーマ設定
  • 明確な組織方針共有
  • 活用アセットの棚卸
  • 適切な討論の運営

 

イノベーション創出に向けたアクション

前述の論点において、解消手法の1つはワークショップチームによるファシリテーションである。

ポイントは、定常業務を一旦脇に置く非日常感の演出・自由闊達な議論を交わすことができる人間関係の再構築が図られたファシリ―テーションだ。

ワークショップを定常業務の枠から離れた環境で開催することで、日々の固定化された関係から距離をおき、現場とマネジメントの協調の場を提供しうる。

創造的環境の要件
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また、ワークショップのファシリテーター・チームの人選は重要なポイントである。前述のイノベーションの成功要件を体現する人物である必要がある。

前述した4つの「イノベーションの成功要件」について掘り下げることで、改めて必要な能力を確認したい。
 

「適切なテーマ設定」

経営観点や市場の深い理解を前提とし、また創造のプロセスで議論するに値する、適切な課題設定を行うことで、日常のカイゼン作業に係る議論とは異なる、クリエイティブな議論を可能とする。

「明確な組織方針共有」

創造プロセスにおいて、共通の認識を持つことは議論の質を高める。自社の目指す企業イメージ/ブランドや、社風をベースに持つことで、ディスカッション内での不協和をなくし、闊達な情報交換を可能とする。

「活用アセットの棚卸」

新規事業企画は0からの創造のプロセスでありながら、後段の事業化を意識すると、社内外で活用可能なアセット・リソースは念頭に置いておく必要がある。柔軟な新たな発想とは対極にある、既存アセットの把握ができるバランス感も重要となる。

「適切な討論の運営」

一例として、マネジメント層と現場スタッフを交えたディスカッションを行う場合、自社製品や作業に対して視座が異なり、議論が紛糾する可能性がある。このようなシーンにおいて、ファシリテーションに通じた一定のスキルを有しており、軌道修正を行う必要がある。
 

このように、イノベーション創出に向け、成功要件の体現は望ましい条件であるが、体制の構築が追い付いていない企業も多いように思われる。自社でのファシリテート・チーム組成が難しい場合には、業界の知見を有し、イノベーション創出に通じた外部組織への委託も検討候補となりうるだろう。

有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー新規事業推進では、日本企業がイノベーションを創出する上で、技術とビジネスの橋渡し役として新たなビジネス価値を創造する支援を行っている。イノベーション創出のさまざまなプロセスにおいて、課題に感じていることがあれば、当チームのプロフェッショナルにコンタクトをいただきたい。

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