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会計監査人
会社法上大会社に求められる会計監査を行う監査人
会社法上の大会社は、その計算書類等について監査役(監査役会設置会社の場合は監査役会)による監査のほか、会計監査人の監査を受けなければならない。この会計監査人について、権限や会計監査報告の内容を含め説明する。
会計監査人の監査
株式会社は、その計算書類等について監査役(監査役会設置会社の場合は監査役会)による監査のほか、会計監査人の監査を受けなければならない(会社法436条2項1号(計算書類及びその附属明細書)及び会社法444条4項(連結計算書類))。会計監査人の資格は公認会計士または監査法人に限定されている(会社法337条1項)。
すなわち、会社法監査制度において、会計監査人設置会社については、職業専門家による監査制度が導入されている。
会計監査人は監査役(監査役が2人以上ある場合にはその過半数、監査役会設置会社の場合は監査役会)の同意を得て株主総会で選任され(会社法344条1項)、その任期は選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時総会の終結の時までとなっている(会社法338条1項)。
会計監査人の権限
会計監査人には、会計監査に関する権限が与えられている。会計監査人はいつでも、会計の帳簿および資料を閲覧、謄写し、または監査対象会社の取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して会計に関する報告を求めることができる(会社法396条2項)。また、必要な場合には子会社に対して会計に関する報告を求めることもできる(会社法396条3項)。
これらの権限は会計監査に関する権限だが、会計監査人は会計監査を行うために必要な場合に限り、会計監査人設置会社および子会社の業務および財産の状況を調査する権限、すなわち業務に関する調査権限も与えられている(会社法396条3項)。
一方、会計監査の作業中に、監査役による業務監査の範囲とされる取締役の職務執行に関して不正行為または法令定款に違反する重大な事実を発見した場合には、会計監査人は監査役に報告する義務を負っている(会社法397条1項)。
会計監査報告の内容
会計監査人の会計監査報告には、次のような内容が記載される(会社計算規則154条)。
1)会計監査人の監査の方法及びその内容
2)計算関係書類が当該株式会社の財産及び損益の状況をすべての重要な点において適正に表示しているかかどうかについての意見があるときは、その意見(当該意見が次のイからハまでに掲げる意見である場合にあってはそれぞれ当該イからハまでに定める事項)
イ:無限定適正意見
∟監査の対象となった計算関係書類が一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に準拠して、当該計算関係書類に係る期間の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示していると認められる旨
ロ:除外事項を付した限定付適正意見
∟監査の対象となった計算関係書類が除外事項を除き一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に準拠して、当該計算関係書類に係る期間の財産及び損益の状況をすべての重要な点において適正に表示していると認められる旨並びに除外事項
ハ:不適正意見
∟監査の対象となった計算関係書類が不適正である旨及びその理由
3)前号の意見がないときは、その旨及びその理由
4)追記情報
5)会計監査報告を作成した日
会計監査人と監査役会の関係
大会社では、会計監査人は計算書類、連結計算書類の全部を受領してから4週間を経過した日等の通知期限までに特定監査役及び特定取締役に対し、会計監査報告の内容を通知しなければならない(会社計算規則158条)。また、特定監査役は会計監査人の会計監査報告を受領した日から1週間を経過した日等の通知期限までに特定取締役及び会計監査人に対し監査報告の内容を通知しなければならない(会社計算規則160条)。監査役は、監査報告書に次の内容を記載する(会社計算規則155条)。
1)監査役の監査の方法及びその内容
2)「会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認めたときは、その旨および理由(会計監査人が通知期限まで会計監査報告の内容を通知しない場合には、会計監査報告を受領していない旨。)
3)重要な後発事象(会計監査報告の内容となっているものを除く。)
4)会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項
5)監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨及びその理由
6)監査報告を作成した日
ここから明らかなように、監査役の監査報告には監査役による会計監査の意見を直接記載せず、会計監査人による会計監査の「相当性」についての意見を記載することになる。すなわち、監査役は基本的には会計監査を会計監査人に任せ、自らは業務監査を中心に実施し、会計監査人による会計監査に問題を認めた場合のみ、会計監査を実施し監査報告を行うことになる。