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上場廃止基準の概要と動向

各取引所による投資家の保護

上場廃止とは不特定多数の投資家が売買するのにふさわしくないと判断して、株式等の金融商品の取引所が当該銘柄の取引を終了することをいう。各取引所は、投資家の保護を目的として上場廃止基準を定めている。上場廃止基準の概要や分類、動向を含めて上場廃止について説明する。

上場廃止とは

上場廃止とは不特定多数の投資家が売買するのにふさわしくないと判断して、株式等の金融商品の取引所が当該銘柄の取引を終了することをいう。各取引所は、投資家の保護を目的として上場廃止基準を定めている。株式の場合、取引所から上場廃止となることが正式に決まった場合、その旨を利用者に周知するために「整理銘柄」として指定され、原則として上場廃止日までの一定期間売買が認められた後、上場廃止となる。 

上場廃止基準の概要

上場廃止基準の分類

上場廃止基準は、その性質ごとに以下の4つに分類することができる。

① 株式の円滑な流通と公正な株価形成を確保するための基準

株主数や流通株式数、上場時価総額、売買高等が一定の基準を下回った場合や、株主の権利内容及び行使が不当に制限された場合等

② 企業の継続性、財政状態、収益力等の面からの上場適格性を保持するための基準

債務超過や銀行取引の停止、破産・再生手続・更生手続または整理、事業活動の停止等の場合や、完全子会社化等

③適正な企業内容の開示を確保するための基準

連結財務諸表等の虚偽記載または不適正意見、有価証券報告書または四半期報告書の提出の遅延等

④ 株式の流通に係る事故防止、円滑な流通を形式面から担保するための基準

上場契約違反や株式の譲渡制限、指定振替機関における取扱いに係る同意の撤回等

 

東京証券取引所の上場廃止基準概要

日本における代表的な取引所である東京証券取引所(以下「東証」)が定める上場廃止基準の概要は添付の表のとおりである。

東証(市場第一部及び第二部)では、①株式の円滑な流通と公正な株価形成を確保するための基準として、株主数や時価総額、流通株式数、流通株式比率、売買高等を採用している。このように上場廃止基準の中には形式的な基準も存在しており、これらの規模が比較的小さい企業においては、これらの基準に抵触しないように十分に留意しておく必要がある。

 

最近の上場廃止の動向

2002年以降の東証における上場廃止社数を添付の図に示している。ITバブル崩壊後の2002年以降減少していたが、2007年以降に再び増加傾向となっており、景気後退の影響が読み取れる。また、近年は親会社と連結子会社がともに上場する「親子上場」を解消する動きも広がっており、東証では2009年の上場廃止78銘柄のうち約4割が、2010年の上場廃止68銘柄のうち約5割が、完全子会社化によるものだった。さらに2011年に入ってからも傾向に変化はなく、2010年1~ 5月までに上場廃止した20社のうち11社が完全子会社化を理由として上場廃止している。その他、株式の全部取得まで含めると、企業の資本政策や再編に関わる自主的な上場廃止が約8割に及んでいることとなる。長期化する不景気の影響を受けて、意思決定や経営管理の改善・効率化を図って企業グループの再編を進めていることが一因と思われる。 

 

新興市場における上場廃止基準の見直し

上場当時のビジネスモデルが崩れた会社に市場からの退出を迫る趣旨で、以下のような新興市場における上場制度・規則の改廃が行われている。

•東京証券取引所:2009年11月2日に上場規則規程改正の一環として、マザーズの上場会社の株価が、上場後3年を経過するまでの間に新規上場の際の公募の価格の1割未満となった場合において、9か月(事業改善計画等の提出がない場合は、3か月)以内に、当該価格の1割以上に回復しないときは、その上場を廃止することとした(有価証券上場規程第603条第1項第5号の2等)。

•大阪証券取引所:2010年2月に新JASDAQ設立に際しての諸制度の整備の一環として、一定期間(5年間)営業利益が赤字であり、営業キャッシュフローもマイナスである場合等には上場廃止とする基準を設定した。

参考資料

1.東京証券取引所HP『上場廃止基準概要(一部・二部)』
2.東京証券取引所HP『上場廃止銘柄一覧』
3.『上場廃止基準の動向及び最近の上場廃止事例について』 会計情報2009年6月号 トーマツ リサーチ センター
4. マザーズの信頼性向上のための有価証券上場規程等の一部改正について
5. JASDAQ・ヘラクレスの市場統合に伴う諸制度の整備について

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