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ナレッジ
ISO26000
社会的責任(Social Responsibility)に関する国際規格
先進国から途上国まで含む消費者・政府・産業界・労働・NGO・学術研究機関等の主要なステークホルダーにより議論され規格化された、ISO26000について解説する。
ISO26000とは
ISO26000は、2010年11月1日に発行された社会的責任(Social Responsibility)に関する国際規格である。この規格は、社会的責任とは何であり、その実行にあたり何に対してどのように取り組んでいくべきかについての手引を提供するものである。
この規格開発の特徴は、90超の国及び40超の地域機関のエキスパートが関与するマルチステークホルダーアプローチが採用され、先進国から途上国まで含む消費者・政府・産業界・労働・NGO・学術研究機関等の主要なステークホルダーにより議論され規格化されたところにある。
留意すべきことは、ISO26000は、ISO9001:2008(品質マネジメント)及びISO14001:2004(環境マネジメント)等とは異なり、認証目的で利用されることを意図していないという点である。
CSR とSocial Responsibility
企業の社会的責任CSR(Corporate Social Responsibility)ではなく、社会的責任(Social Responsibility)となっている理由はなぜだろうか。
昨今、貧困や環境問題の悪化等、世界中で多様な社会的な問題が深刻化し、情報や物流等のネットワークの発達、様々な組織の地理的活動範囲の広がり等により、1組織の活動が社会に与える影響がますます大きく広がりつつある。このような環境下、社会を構成する全ての組織に対して、社会的に責任を持った行動が求められるようになってきている。したがって、社会的に責任を持った行動を求められるのは企業だけではないという意味で、社会的責任(Social Responsibility)となっていると考えられる。
ISO26000の構成と特徴的な考え方
ISO26000の構成
ISO26000は、箇条1から箇条7、附属書及び参考文献により構成されている。社会的責任を具体的に実践していくための内容は、箇条6に記載されており、ここで定められている7つの中核主題(組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティへの参画及びコミュニティの発展)が中心となる。箇条1から箇条4の部分は、ISO26000に従って社会的責任を実践する上での基本的な事項が記載されており、 箇条5では組織が社会に与える影響やステークホルダーとの関係を考える時のポイントが、箇条7では重要な課題を特定し課題の優先順位をつけるためのポイントなどが記載されている。
なお、附属書や参考文献は、適宜参照すると有用な情報が掲載されている。
特徴的な考え方
ISO26000における考え方のうち、ステークホルダーエンゲージメント、国際的行動規範との整合性の取れた行動、サプライチェーン・バリューチェーンの視点について簡単にご紹介する。
ステークホルダーエンゲージメントとは、組織の何らかの決定や活動に利害関係を持つ個人またはグループとの間に、組織の決定に関する基本情報を提供する目的で、対話の機会を作り出すために試みられる活動のことである。これは、ステークホルダーの利害を尊重し、よく考慮し、対応すべきという「ステークホルダーの利害の尊重」原則からきているものと考えられる。
国際的な行動規範との整合性の取れた行動とは、国際慣習法、一般に受け入れられている国際法の原則、または普遍的もしくはほぼ普遍的に認められている政府間合意から導かれる、社会的に責任ある組織の行動に対する期待との整合性を取った行動のことである。これは、法の支配の尊重という原則に従うと同時に、国際行動規範を尊重すべきという「国際行動規範の尊重」の原則からきているものであり、グローバル化の中で各組織に求められているものであると考えられる。
サプライチェーンとは、組織に対して製品またはサービスを提供する一連の活動又は関係者のことである。バリューチェーンとは、製品またはサービスの形式で価値を提供するかまたは受け取る一連の活動または関係者の全体のことである。自らの社会的責任の範囲を考える場合に、単に組織の直接的な活動から発生する影響のみならず、サプライチェーン・バリューチェーンの視点で自らが影響力を及ぼす範囲についても配慮することが必要であることを示すものであると考えられる。
活用方法
ISO26000は、前述のように社会的責任の手引書のため、その利用方法は利用者の意思にゆだねられている。ではどのように活用方法があるだろうか。あくまでも私見だが想定される活用例として次のようなものが考えられる。
① 新たにCSR に取り組む企業においては、入門書として活用することができる。
② 既にCSR に取り組んでいる企業においては、自社のCSR 活動やCSR 報告書の見直しの際の参考として活用することにより、自社のCSR 活動の充実やCSR 報告書のレベルアップに役立てることができる。
③ CSR 調達ガイドラインの作成時や改訂時において、規定内容の決定・見直しに参考として活用することにより、サプライチェーンマネジメントのレベルアップに役立てることができる。納入企業の立場からは、CSR 調達を実施する得意先からの要請をあらかじめ想定する際の参考とすることができる。
④ SRI 等の各種評価基準の作成時や改訂時において、評価基準の決定・見直しに参考として活用される可能性があることから、各種評価機関からの質問への対応に参考とすることができる。
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