最新動向/市場予測

景気と債務のトレードオフ:コロナ禍における政府債務拡大/安倍政権下の株高をもたらしたもの 他

リスクインテリジェンス メールマガジン Vol.62(2020年9月)

リスクの概観と金融規制の動向に係る概観について、留意すべき特徴点を炙り出すと同時に、有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センターが考える意見も発信いたします。

リスクの概観(トレンド&トピックス)

景気と債務のトレードオフ:コロナ禍における政府債務拡大

有限責任監査法人トーマツ
リスク管理戦略センター
ディレクター
勝藤 史郎
 

米国議会予算局(CBO)が9月2日に公表した「財政見通しアップデート2020-2030」では、新型コロナ感染症の拡大以降初めて、感染症後の経済見通しと財政政策を反映した今後10年の連邦財政見通しが試算されている。CBOは「財政見通しアップデート」において、米国連邦政府債務残高の名目GDP比率は2020年に98%、2021年には104%、そして10年後の2030年には109%に達すると推計している。2030年の同比率は第二次世界大戦直後の1946年の106%を上回るレベルである。2021年までの短期的な政府債務残高急増の要因は言うまでもなく、新型コロナ感染症拡大に伴う歳出増加と経済悪化に伴う歳入の減少である。歳出拡大には、失業給付の増加など経済悪化の影響による義務的支出拡大と、新型コロナ感染症対策として制定された各種経済支援策による歳出拡大とがある。新型コロナ感染症拡大により、政府の財政出動が政府債務を増加させることは自然であり、コロナ感染症の経済影響が第二次世界大戦に匹敵するものであることを勘案すれば、GDPを超える政府債務増加が起きうることは驚くにはあたらない。

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マクロ経済の動向(トレンド&トピックス)

安倍政権下の株高をもたらしたもの

有限責任監査法人トーマツ
リスク管理戦略センター
マネジャー
市川 雄介
 

連続在任期間で史上最長を更新したばかりの安倍首相が8月末、突如辞任を表明した。後継の自民党総裁には官房長官だった菅氏が選出され、菅・新内閣が9/16に始動した。

安倍政権の功績としては、積極的な財政出動や強力な金融緩和の推進によって、製造業の「六重苦」といった言葉に象徴されていた経済的な閉塞感を打破したことや、長期政権の強みを生かして安定した外交・通商政策を展開したことがよく指摘される。他方で、アベノミクスの「三本の矢」のうち最も重要であるはずの成長戦略については、TPPの発効といった成果は一部にあったものの、総じて手つかずのものが多く、社会保障制度改革や財政再建などを含めた痛みを伴う改革の進展は限られた、とも言われる。実際、プロ・ビジネスな政権であったにもかかわらず、企業の期待成長率は安倍首相の在任中に低下基調を辿り、直近(新型コロナウイルス感染拡大前の2020年1月時点)では過去最低の水準に落ち込んだ(図表1)。やはり長期にわたった小泉政権期(2001~06年)の後半期に、期待成長率が上向いていたのとは対照的である。

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金融規制の動向(トレンド&トピックス)

「金融行政方針」に求められるより中長期的な視点~諸外国との比較から

有限責任監査法人トーマツ
リスク管理戦略センター
シニアマネジャー
対木 さおり
 

8月末に、金融庁が、2020-2021年の「金融行政方針」を公表した。その副題は、「コロナと戦い、コロナ後の新しい社会を築く」とされており、コロナ後の社会を展望した論点・視点を多数盛り込んでいることが今回の特徴であると考えられる。項目としては、副題でもある「コロナと戦い、コロナ後の新しい社会を築く」、「高い機能を有し魅力のある金融資本市場を築く」「金融庁の改革を進める」とされており、項目ごとに具体的な取り組み方針が記載されている。

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講演情報

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リスクインテリジェンス メールマガジン

グローバルな視点からみた、企業経営上の様々なリスクをチェックするリスクインテリジェンス メールマガジン(グローバル・リスク・ウォッチ)では、毎月、過去一ヶ月間に起きた事象を振り返りながら、事業リスクという視点から、多くの金融機関や事業法人が留意すべき特徴点を炙り出します。同時に、様々なリスク管理や金融規制上のトピックに関し、デロイト トーマツ グループの一員である有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センターが考える意見も発信していきます。

 

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