ナレッジ

コンタクトレス・エコノミーがもたらすCOVID-19危機後の世界

非接触経済の台頭

アジア太平洋(APAC)地域での非接触経済の市場は2025年までに少なくともこれまでの2倍超の3兆米ドルに達する見込み。非接触経済においては消費財、レジャー・レクリエーション・教育を中心に市場が広がるとともに、金融サービス・健康などの分野でも成長が期待される。

COVID-19による経済危機は、非接触経済の台頭により、従来の経済危機とは異なるものに

これまでの経済危機はいずれも個人消費の減少を招き、製品やサービスの需要に打撃を与え、企業活動に深刻な影響を与えてきました。しかし、今回のCOVID-19のパンデミックにより引き起こされた不確実性に対処する中で、専門家は少なくとも、今回の危機は前例が無いものであるということ、そして新たにネクスト・ノーマルが生まれつつあるといった2点を確信しています。なぜ今回の危機に前例が無いのか、という点については、かなりの議論がなされてきました。

デロイトは、今回の危機がこれまでと異なる最大の要因は、危機と同時に起こった非接触経済(コンタクトレス・エコノミー)の台頭にあると考えています。非接触経済は、供給側(例:5G、クラウドプラットフォーム、AI、およびデータ分析のなどのデジタル技術の台頭)と需要側(例:利便性へのニーズ、健康と安全に対する意識の高まり)の双方によって創出・牽引されてきました。これらの中には、以前から存在していたものもありますが、危機によって加速したものもあります。

 

コンタクトレス・エコノミーがもたらす COVID-19危機後の世界 [PDF: 5.46MB]

非接触経済は、少なくとも2025年までに3兆ドルを超える市場へ

非接触経済は、進化の只中にあります。デロイトは、そこに二つの大きな流れがあると考えています。ひとつは「在宅消費」の増加で、もうひとつは「家庭外での非接触」消費の増加です。全体的な消費レベルはCOVID-19禍以前のレベルに戻るかもしれませんが、非接触経済は消費者の行動様式を変化させるでしょう。デロイトでは、非接触経済の市場規模はアジアパシフィック(以下APAC)内で、少なくとも2025年までにこれまでの2倍超の、3兆ドルに達すると予測しており、潜在的な影響も含めると家計消費支出全体のうち6割、実に11兆ドルが非接触経済のディスラプションに直面するとみています。非接触経済で最大の市場規模を持つ上位3セクターは、消費財、レジャー・レクリエーション、および教育であり、最も成長が大きい上位3セクターは、金融サービス、ヘルスケア、および消費財です。

 

非接触経済の定義と範囲の表
※クリックまたはタップして拡大表示できます

日本の非接触経済の伸びは、アジア他国に比し大きく見劣り

非接触経済における日本のポジションは、今後のEC市場の伸びから推測するとAPAC各国の劣位に回る懸念が示されます。日本は2024年にEC市場がCAGR8%で成長していくことが予想されていますが、この水準はAPAC 6か国の中では最も低水準であり、非接触経済の拡大による成長機会を十分に取り込めない懸念が示唆されます。今後の国をあげたデジタル化への取り組み加速による巻き返しが期待されます。

非接触経済の拡大により新たな消費スタイルが主流に

デロイトでは、非接触経済の台頭により注目すべき四つの消費スタイルを、以下二つの軸により示すことができると考えます。

(1)どこで消費をするか:在宅でのバーチャル消費か、それとも家庭外での非接触(コンタクトレス)の消費をするか、(2)購買決定の価値基準に変化があるか:体験的な価値とバリュー・フォー・マネーのどちらの価値基準を重視するか、の2軸です。これら消費スタイルの市場規模をそれぞれ特定することは困難です。消費者行動、ニーズ、特定の製品やサービスへの期待は依然として変化しつつあり、まだ安定していません。各市場のプレイヤは、新たなバリュープロポジションと、それらに付随する新しい技術やサービスを迎い入れることになるでしょう。

 

複雑な選択肢を捉えた、事業戦略の体系的な見直しが必要に

非接触経済により新たな市場が主流になりつつあります。本機会を最大限に自社の成長に生かすために、企業は以下五つのアクションを取る必要があります。

1) 非接触経済下の消費者行動の変化を深く分析し客観的な評価を実施する

2)ターゲットとすべき領域を絞り込む

3)ターゲット市場に対する新たなバリュープロポジションの開発をする

4)バリュープロポジションを実現するために必要なケイパビリティの特定を行う

5)不確実性に備えた柔軟性のあるパートナーエコシステムを活用し、ケイパビリティ開発モデルを策定する

 

深刻な危機下で効果的な意思決定を行う際の最大の敵は、不確実性でも曖昧さでもありません。

むしろ、現状の持続可能性に対する過信であり、将来への変化の先送りです。

本レポートは、このような現状を変えようという試みの一つです。

詳細については、PDF版レポートをご参照ください。

また、グローバル版レポート(英語)「Contactless Economy-Are you prepared?」はこちらのページよりご覧いただけます。

 

お役に立ちましたか?