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事業会社のポートフォリオマネジメント ~「しがらみ」を超えて~

日本型コングロマリット企業はポートフォリオマネジメントで輝きを取り戻す

日本企業の低い生産性は事業ポートフォリオが硬直的であることに起因している。高い収益力と成長力を取り戻すには、ポートフォリオマネジメントを通じた徹底した選択と捨象が必要になる。また、ポートフォリオマネジメントとは「単なる現状の可視化」ではなく、成長実現に向けた様々なステークホルダーに対する“啓発活動の旅”である。この旅を果敢なマネジメント力をもって弛まず続けることが、成長戦略の実現に直結する。

日本企業における持続的な成長投資に向けては、事業ポートフォリオの新陳代謝がポイント

産業構造が急速に変化している昨今、事業競争力の維持・強化に向けて、持続的な成長投資が必要になっている一方で、日本企業(特にコングロマリット化した巨大企業)においては、欧米諸国と比べ収益力が低く、加えて複数事業に投資が分散することで、注力すべき成長領域に対して十分な投資原資を確保できていない。

日本企業における持続的な成長投資に向けては、事業ポートフォリオの新陳代謝がポイント
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これらの課題を乗り越え、積極的に成長投資を行っていくためには、事業ポートフォリオの新陳代謝を促進し、低収益事業やノンコア事業からの売却・撤退等を通じて事業の選択と捨象を進めることで、投資原資の分散を回避することが必要になる。
 

 

事業会社と投資会社のポートフォリオマネジメントは根本的に異なる

事業会社におけるポートフォリオマネジメントを推進していくうえでは、投資会社におけるポートフォリオマネジメントとは根本的に思想が違うことを踏まえることが重要になる。
 

事業会社と投資会社のポートフォリオマネジメントは根本的に異なる
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事業会社におけるポートフォリオマネジメントは、「自社の根源的な存在意義(Goal & Aspiration)」の追求であり、「事業の組換え」による売却益の極大化ではない。故に、カーブアウト等の対象事業選定は、「低収益だから」という事のみを理由とした単純な判断ではなく、Goal & Aspirationとの不整合や対象事業の成長可能性等を踏まえて判断する事がポイントになる。
 

 

ポートフォリオマネジメントとは成長を目指した啓発活動の旅

また、多くの日本企業では、一度は何らかの評価軸を用いて自社事業に対しポートフォリオ分析を実施していると考えている。しかしながら、実際に事業ポートフォリオの新陳代謝に繋がっているケースは稀である。何故なら、ポートフォリオマネジメントを“単なる現状の可視化”としてとらえてしまい、可視化できたことで課題を捕らえたとして満足していることにある。

また、実際に事業ポートフォリオの新陳代謝を進めようとして、社内外から十分な協力を得ることができないという状況も大いにある。

故に、ポートフォリオマネジメントとは「事業ポートフォリオの新陳代謝を組み入れた成長ストーリー」を描くとともに、それらをもって取締役や従業員、投資家、取引先等の様々なステークホルダーに対して、成長ストーリーを啓発していくことが必要になる。
つまり、ポートフォリオマネジメントとは“成長に繋がる目指す姿実現に向けた啓発活動の旅”である。

そして、果敢なマネジメント力を原動力として、この啓発活動の旅を弛まず続けることで、様々な“しがらみ”や“コンフリクト”を乗り越え、成長を実現することができる。

 

ポートフォリオマネジメント実現に向けた弊社のお役立ち

以上のことを踏まえるとポートフォリオマネジメント戦略の策定には3つの要素を充足させることが必要になる。

  • 最適な評価基準の設定と適切な評価
  • 戦略から始まる一貫したストーリー
  • 事業ポートフォリオの新陳代謝を促す仕組み

まず、各事業の評価軸を設定するにあたり、ポートフォリオマネジメント検討の目的を踏まえない教科書的な基準を用いた画一的な評価では、本質的な戦略策定には繋がらない。また、各評価を実施するにあたり心理的バイアスが生じ評価結果に歪みが生じると、啓発活動の旅に耐えられなくなる。

モニター デロイトでは、「市場の魅力(Market Attractiveness)」と「自社の優位性(Ability to Win)」という独自のポートフォリオ分析フレームをベースとしつつ、各社の状況に応じて評価基準の調整を行うことで事業環境を踏まえた評価基準を提供することが可能になる。また、第3者の立場を活かし、徹底した公平目線での評価を行うことで、公平・公正な評価を実現する。
 

ポートフォリオマネジメント実現に向けた弊社のお役立ち
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次に、ポートフォリオマネジメントの本質的な目的は、成長戦略であることをふまえると、売却・撤退事業の特定のみならず、注力事業領域における成長戦略(M&A戦略等)の策定もポートフォリオマネジメントの一部としてとらえて推進することが必要である。

また、モニター デロイトでは、StrategyからM&A Strategy、M&A Deal PMIまでを一気通貫で支援することが可能であり、各領域における豊富な経験を有したプロフェッショナルが存在している。

最後に、ポートフォリオマネジメントを分析結果の取り纏めに終わらせないためにも、改革の優先順位を付け、責任者の任命、KPIの設定、責任者への評価との紐づけ等が必要になる。

弊社では、各種施策に対する定量的な効果測定(優先順位の設定)に加え、ポートフォリオマネジメントにおけるマチュリティモデルを用いることで貴社の現状評価と課題の特定、対応策の具体化を進めることで、継続的にポートフォリオマネジメントを推進できる体制を構築することが可能である。

<ポートフォリオマネジメントに関するマチュリティモデルのイメージ>

ポートフォリオマネジメントに関するマチュリティモデルのイメージ
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最後に・・・

本編では、日本企業における収益力向上と成長力強化に資する一つの手段であるポートフォリオマネジメントについて紹介してきた。技術力・現場力に強みを持ち、徹底した改善活動を展開することが可能な日本企業が、「自社の根源的な存在意義(Goal & Aspiration)」に立ち返り、徹底して選択と捨象を追求することで必ずや高い成長力と収益力を獲得することができると考えている。

本内容が、貴社における改革実現の一助になれば幸いである。
 

著者

淺井 創太/Sota Asai
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 マネージャー

資産運用・企業再生を中心とするコンサルティング会社の経営者を経て現職。
製造業を中心に様々な業界のクライアントに対して、事業戦略策定や組織設計、機能改革、子会社再編、業務プロセス改革、新規事業立上げ、セルサイドM&Aアドバイザリー等、の幅広いプロジェクトの経験を有する。近年では、収益性向上や資産効率の改善等を目的とした戦略策定を起点とする組織構造改革や全社改革、機能改革案件に多数従事している。

(2020.8.07)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

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