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戦略分野国内生産促進税制の概要と留意点
半導体等の戦略分野における国内投資を後押しする、生産・販売量に応じた優遇税制
戦略分野国内生産促進税制は、民間として事業採算性に乗りにくいが、国として特段に戦略的な長期投資が不可欠となる投資を対象として、国内生産を奨励するための優遇税制です。対象分野は、半導体、電動車(EV)、鉄鋼(グリーンスチール)、基礎化学品(グリーンケミカル)、航空燃料(SAF)の5分野であり、対象企業はこれらの製品の生産・販売に応じて税額控除を適用することができます。
(本記事は、制度の運用に必要な省令・告示等の規定が未公表の状態である2024年10月に作成しています。関連規定が公表され次第、随時情報を更新します。)
対象法人
対象となるのは以下の5つの戦略分野の最終製品(産業競争力基盤強化商品)の生産および販売を行う旨を事業適応計画に記載し、令和9年(2027年)3月31日までに認定を受けた青色申告法人です。
■ 対象分野
(1)半導体(マイコン、アナログ)
- 補助金による初期投資支援の対象となっている計画は対象外
- 先端ロジック半導体・メモリ半導体および、半導体の製造装置・部素材・原料は対象外
(2)電気自動車等
- 乗用車・商用車
- 二輪車は対象外
(3)鉄鋼(グリーンスチール)
- 生産プロセスを従来の高炉・転炉から電炉などへ転換することにより、生産時のCO2 排出量を大幅に削減した鉄鋼製品
(4)基礎化学品(グリーンケミカル)
- 原料を従来の化石原料であるナフサからグリーン原料(バイオ原料、廃プラスチック等)へ転換することにより生産される化学品
(5)航空燃料(SAF)
- 持続可能な航空機燃料
税制措置の内容
■ 税額控除額
産業競争力基盤強化商品の区分ごとに単位当たりの税額控除額(下表参照)が定められており、対象法人は、計画認定日から10年間の各事業年度において、生産・販売量に応じて税額控除を受けることが可能です。
ただし、税額控除額は競争力強化が見込まれる後半年度において段階的に引き下げられます(8年目:75% 、9年目:50% 、10年目:25%)。
上記により生産・販売量に応じて算出された控除税額の各事業年度における累積合計額は「事業の用に供した生産用の資産およびこれとともに産業競争力基盤強化商品を生産するために直接又は間接に使用する減価償却資産に対して投資した金額の合計額として財務省令で定める金額に相当する金額」(2024年10月22日時点で財務省令は未公布)を超えることができません。すなわち、産業競争力基盤強化商品を生産するための設備投資額を超えて税額控除を適用することはできません。
この点において、「直接又は間接に使用する」設備の範囲を適切に認識することが控除税額の合計額に影響を与える可能性があるため、留意が必要です。
■ 控除上限額
各事業年度において、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制による控除税額およびカーボンニュートラルに向けた投資促進税制(以下、「CN税制」)による控除税額との合計で当期調整前法人税額の40%(半導体は20%)です。
例えば、CN税制は当期調整前法人税額の20%が控除上限ですが、CN税制による税額控除を上限まで適用する場合、同一事業年度において、戦略分野国内生産促進税制により受けられる税額控除は、半導体以外では当期調整前法人税額の20%(=40%-20%)が上限額となる一方、半導体においては税額控除の適用ができなくなります。
しかしながら、戦略分野国内生産促進税制においては4年間(半導体は3年間)の税額控除の繰越期間が設けられているため、ある事業年度で控除上限を超過してしまう場合でも、翌事業年度以降の法人税額において適用しきれなかった税額控除を活用することが可能です。
タイムライン
戦略分野国内生産促進税制を適用するには、令和9年(2027年)3月31日までに主務大臣から事業適応計画の認定を受ける必要があります。
また、税額控除の対象となる生産・販売期間は、対象となる設備の「事業供用日」から「認定日以後10年」を経過する日までであるため、対象期間を最長にするためには、認定のタイミングが事業供用(≒生産開始)の直前となることが望ましく、申請や認定に要する期間を考慮に入れて事業適応計画の準備を進める必要があります。
停止適用措置
以下の3 つのいずれにも該当する事業年度においては、税額控除は適用されません(前事業年度以前からの繰越を除く)。
- 当該事業年度の所得>前事業年度の所得
- 継続雇用者給与等支給額の対前事業年度増加割合<1%
- 国内設備投資≦当期償却総額×40%
(参考)
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