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The future of the TV and video landscape by 2030
2030年までのテレビと動画の未来
インターネットとモバイル端末の普及を背景に、オンラインで提供される動画配信サービスが多様化し、テレビ・動画業界には変化の波が押し寄せています。視聴者のコンテンツに対する需要も急速に変化する中で、今後市場にはどのような変化が起こるのでしょうか。本稿では、プレイヤーの構造と消費者へのアクセスという2軸をもとに、具体的な4つのシナリオを設定して2030年の未来像を検討します。
2030年のテレビ・動画の未来を検討する シナリオ設計
本稿は、デロイトのセンター・フォー・ザ・ロング・ビュー(CLV)のシナリオ開発アプローチに基づき、メディアセクターを分析したものです。
2030年のテレビ・動画の未来を検討するため、プレイヤーの構造と消費者へのアクセスという2軸をもとに、具体的な検討材料として4つの主要シナリオを設定しました。このシナリオには、すでに我々が目にしたことのある一般的な将来予測で語られている主要な論点も含まれる一方、日本においてはまだあまり注目されていないポイントにも言及しています。この内容をもとに各シナリオにおけるプレイヤーの位置づけや、設定された前提条件などを詳細に検討することで、今後プレイヤーが取りうる戦略立案の参考になると考えられます。
シナリオ策定プロセス
シナリオ策定に当たっては、専門家インタビューをもとに、自然言語処理(NLP)アルゴリズムに基づく外部環境分析を実施し、テレビ・動画業界の将来を形成するドライバーを特定したのち、5つのカテゴリ(社会、技術、経済、環境、政治)に分け、不確実性のレベルとテレビ・動画業界への影響度に応じて評価しました。
さらに、特に不確実で関連性の高いドライバーについて相互依存性と適合性を測定するテストを実施し、関連性のレベルに従って集約化しました。このプロセスを経て、「プレイヤーの構造はどうなるのか?」および「誰が消費者にアクセスできるのか?」という2軸を基にして4つのシナリオを配置するマトリクスを作成しました。
4つのシナリオ
本稿ではデロイトのシナリオ開発アプローチに基づいて作成した4つのシナリオを提示し、解説しています。
シナリオA ユニバーサル・スーパーマーケット
このシナリオでは、いくつかのグローバルなデジタルプラットフォーム企業が、コンテンツの集約と配信に関する国内の放送事業者の主導的な役割を引き継いでいる。これらの企業は、コンテンツの制作、集約、配信、および顧客との直接的な関係性の構築など、バリューチェーンのすべての段階に参入し、テレビ・動画市場を支配している。大規模なスーパーマーケットのように、デジタルプラットフォーム企業は、グローバルおよび国内のコンテンツを幅広く提供しており、いくつかの独占的なオリジナルコンテンツやスポーツ放映権によってのみ差別化されている。
シナリオB コンテンツが真の王者
このシナリオでは、大規模なグローバルコンテンツホルダーが市場変化の勝者である。バリューチェーン全体を垂直統合し、デジタルプラットフォーム企業からコンテンツを引き上げ、また供給を差し控え、プラットフォームを迂回して独自のチャネルを介して配信し、顧客との直接的な関係を構築している。
シナリオC 放送事業者による巻き返し
このシナリオでは、国内の放送事業者はデジタル変革を成功させ、テレビ・動画のエコシステムにおいて強固な地位を確保した。放送事業者はデジタルプラットフォームへと進化し、顧客との直接的な関係を確立し、オンデマンドコンテンツを提供している。変革の過程で、放送事業者は優れたデジタル能力を開発し、これまでデジタルプラットフォーム企業に独占されていたターゲット広告やレコメンデーション機能など、新しいサービスに参入している。さらに、コンテンツ割り当てなどの規制措置に支えられると同時に、国内の視聴者にとって親和性の高いコンテンツのおかげで、放送事業者は市場で優位に立っている。
シナリオD 多様性に迷う
最後のシナリオは、テレビ・動画市場には支配的なプレイヤーが存在せず、多様性に富んだエコシステムに進化するというものである。その際消費者は、多数の配信プラットフォーム、豊富なコンテンツ、そして市場におけるプレイヤーが徐々に入れ替わることによるメリットを享受している。国内コンテンツに対する需要は依然として高く、グローバルプレイヤーとローカルプレイヤーの間のパートナーシップは広範囲に及んでいる。コンテンツの制作と配信の明確な分離は、このシナリオのもう1つの重要な特徴である。