Deloitte Insights

Tech Trends 2021 日本版

日本版全文(PDF)

「Tech Trends 2021」では、今後1年半から2年間にわたり、企業や組織に影響を及ぼす新たなテクノロジートレンドについて、デロイトの見解を紹介している。COVID-19による影響が続く中、本年はテーマを「レジリエンス」(回復力)とし、突然の大きな変化に直面しながらも前進していくさまざまな企業事例を参照しながら、そこから見えてきた新たな未来を想像している。COVID-19による劇的変化に対応するため、多くの企業がデジタル変革への取り組みを加速させており、本レポートでは今後の計画策定において考慮すべき9つのトレンドを挙げている。こうして描かれた新たな道筋は、ビジネスとテクノロジーのリーダーが自信を持って導いてくれるだろう。

 

Tech Trends 2021〔PDF, 28MB〕

Tech Trends 2021各章の概要/PDF

新たな戦略への舵取り

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コアの再生

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サプライチェーンの寸断

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MLOps:AIの工業的活用

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マシンデータ革命:データが機械を巡る

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ゼロトラスト:決して信頼せず、常に検証する

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デジタルワークプレイスの再起動

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70億人のオーダーメイド:デジタルとフィジカルの融合

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DEIテクノロジー:エクイティのためのツール

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日本版発行に寄せて

「Tech Trends」は10年以上に亘ってビジネス環境やテクノロジー進化を捉え、今後1年半から2年以内に各企業におけるニーズが成長期を迎える可能性が高いトレンドに対して、デロイト内外の専門家の見地を結集し見通しを述べている。

今年は、COVID-19の影響による社会環境の変化に対応した内容が盛り込まれており、浮き彫りになったビジネス継続の難しさへの対応や、新たな働き方の模索に対するヒントが含まれている。これまで12年継続したリサーチの中でも、トレンドの流れが大きく変化することはないものの、トレンドに対する視点が多く変化した重要な節目となるものであると考えている。

2021年の「Tech Trends」は、9つの章で構成されており、これら各章を意味付けして分類すると「The heart of the enterprise」、「Data: The art of the possible」、「A better experience, inside and out」という3つのカテゴリーに分けられる。

「Tech Trends」のテーマ設定は、専門家の意見交換に多くの時間を要して決定される。なぜこの3つの観点にテーマ設定が収斂されたのかということに考えを巡らせると、COVID-19により先行きを見通すことが困難になっている状況の中で、いかに企業が従業員エクスペリエンスをテクノロジーの最大活用により再定義・向上できるのか、という点が色濃く映し出された本編になっていると捉えている。

「The heart of the enterprise」には、「新たな戦略へのかじ取り」、「コアの再生」、「サプライチェーンの寸断」の3章が含まれている。すべての企業はビジネス展開の主軸にITを活用したテクノロジーカンパニーへ進化していくという考えを前提としており、ビジネス成長や新規事業創出などにおいてテクノロジー要素を含まないアイデアが限定的になっていく中で、企業の基幹システムやSCMなどをいかにビジネス戦略にアラインさせていくか、という論点になっている。

「Data: The art of the possible」には、「MLOps:AIの工業的活用」、「マシンデータ革命:データが機械を巡る」、「ゼロトラスト: 決して信頼せず、常に検証する」の3章が含まれており、企業全体における自動化やテクノロジーを活用した意思決定など、徐々に活用範囲が拡大しているAIや機械学習を更に多くの業務に取り入れることで、これまでのヒトによる労働力に加え、企業が新たな労働力としてテクノロジーを活用していく事例が挙げられている。これは日本における労働人口の減少やIT要員の高齢化などに対する解決策の一つとして参考となるものである。

「A better experience, inside and out」は、「デジタルワークプレイスの再起動」、「70億人のオーダーメイド:デジタルとフィジカルの融合」の2章で、企業における顧客、従業員などのステークホルダーとの関係性において、デジタルとリアルの境界線が曖昧になる流れに加え、「DEIテクノロジー:エクイティのためのツール」の章の中で多様性、公平性、インクルージョンに関する企業の取り組みについてテクノロジーを活用した従業員との関係性構築が論点になっている。各企業においてエシックスがビジネスパフォーマンスに直結することが認識されており、今後最も注目される領域の一つと捉えている。

さて、日本においては2021年9月を目途にデジタル庁の発足が予定されており、行政のより一層のデジタル推進が期待されている。デロイトでは今回の「Tech Trends 2021」の内容を受け、官公庁業界における各章のトレンドに対するレディネスの状況と適用された場合に与えるインパクトをまとめている。特徴的な点をいくつか挙げてみると、「MLOps:AIの工業的活用」、「マシンデータ革命:データが機械を巡る」、「70億人のオーダーメイド:デジタルとフィジカルの融合」などは、官公庁業界に与えるインパクトが大きいトレンドと想定される一方で、日本だけでなく各国の行政機関で準備が整っていない状況となっている。日本行政のデジタル化においては、他国をリードするポジションまでの成果を期待したいところであり、挙げられたトレンドの実現を優先的に取り組んでいくことが世界的な水準から見た場合に分かりやすい成果となるのではないかと考えている。

また、「コロナ環境となり、テクノロジートレンドに大きな変化が起きているか」という問いをさまざまな企業から受けることがあるが、デロイトのCIO Program Officeのメンバなどの見解としては、これまでの「Tech Trends」で語ってきた流れを否定するものではなく、特別に新たなものが出てくるものではないということである。この見解は同意できるものであり、これまで語ってきた「Tech Trends」は継続され、COVID-19の影響によって、トレンドが広く普及する時間軸が早くなったという見方がしっくりくると理解している。この感覚は日本の各企業の経営者も捉えている点であり、さまざまな企業の方々からDX推進についてより時間軸を早めて取り組みを進めたいという相談を多く受けている。

DX推進には経営トップやマネジメントの強いコミットメントとリーダシップが欠かせないが、経営トップのDXの捉え方により、相談の入り方を大別すると2つに分かれている状況である。

1つは、経営トップが「DXを推進すべし」というメッセージを出すものの、DX環境を整えることが何を目的としたものか具体化されていない、あるいは議論が煮詰まらない状態のまま、マネジメント層が現場に号令を落とし、ITソリューションを導入することがDXであるといったキーワードと理解し右往左往している企業。これは、数十年前にERPがはやり言葉となりパッケージ導入が目的となったケースが多く見られたように、模倣やテクノロジー導入主導のDXの取り組みに陥っているように見受けられる。

2つ目は、これまで既存ビジネス成長や新規ビジネスの創出においてDXの取り組みを一定程度進めてきたが、企業全体の競争力を高めるためには内部のIT環境(ITマネジメント、組織、アーキテクチャなど)を再度見直して、ファンダメンタルな部分を強化していくことが必要と認識している企業である。こちらの企業群は、CX向上、EX向上といった目的が明確となっており、そのためのニーズをしっかり捉えた具体的な取り組みが見えている。

この2つの違いは、もちろんこれまでの各企業におけるDX推進の進捗度合いや業界特性、ビジネス環境の違いからでてきているものもあるが、いかに企業のマネジメント層が企業変革、組織風土改革の大きなアジェンダを実現するためのツールとしてのDX推進を意識できているかが分かれ目ではないかと考える。

各章では、技術トレンドだけではなく先進的企業の取り組みが紹介されており、取り組みの目的や目指す姿が示されている。本レポートをご覧いただき是非技術活用の背景を読み解き、自社とのギャップを捉えつつ、自社にとって参考となる示唆を拾い上げてほしい。本レポートが日本企業におけるデジタルトランスフォーメーション推進のヒントとなれば幸いである。

山本 有志
デロイト トーマツ グループ 執行役員 パートナー
Japan Leader, Tech Strategy and Transformation

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Tech Trends 2021

日本版発行責任者

山本 有志 執行役員 パートナー
Japan Leader
Tech Strategy and Transformation

多様な業界に対して、IT戦略立案、IT組織改革、グローバルITガバナンス強化、IT投資コストマネジメント高度化などのテクノロジー ストラテジーに関するコンサルティングに従事。企業の戦略実現を左右する大規模ITプロジェクトのマネジメント経験も多く、戦略から開発・運用までITライフサイクル全般の知見を活かし、CxOに対してアドバイザリーサービスを提供。

千田 章貴 執行役員 パートナー
Asia Pacific Leader
Tech Strategy and Transformation

主に国内及び外資系金融機関に対して、各種改革やデジタルトランスフォーメーションプロジェクトに多数従事。ビジネス戦略立案からシステム化構想及び導入、定着、アウトソーシングを含む広範囲なコンサルティング領域を経験。アジアマーケットを中心とした海外戦略やグローバルオペレーションシステムの最適化等を含むグローバルプロジェクトに強みを持つ。

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