世界が注目する代替肉は日本の食生活に新風をもたらすか|D-nnovation Perspectives|Deloitte Japan ブックマークが追加されました
「代替肉」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
代替肉とは、植物由来の材料を使い、肉のような味や食感を再現した加工食品である。
8月より米大手バーガーチェーンで代替肉のハンバーガーが販売されるなど、最近注目が集まっている。
金融機関Barclaysの試算では、代替肉市場は10年以内に最大1400億ドル(約15兆円)まで成長し、なんと世界の食肉の約10%を占めると見られている。
代替肉市場が成長する背景には、三つあると私は見ている。
一つは消費者の意識の変化である。健康志向の消費者が増え、カロリーや脂質が低いが、美味しいものを求める傾向にある。二つ目は環境への負荷軽減である。従来の牛肉を1kg作るのに必要な水の量は、同量の穀物を育てる場合の約10倍必要という試算があり、実は環境への負荷が高いのである。三つ目は将来の食糧不足への対応である。人口が増加し、2050年にはタンパク質の需要が現在の2倍になるという予想があり、それを支える食糧の一つとして代替肉が注目され、代替肉ベンチャーへの投資も盛んに行われている。
私は、代替肉はフード・バリューチェーン(食の付加価値の連鎖)そのものを変える可能性を秘めていると考えている。
従来の肉の場合、「飼料の調達⇒家畜の飼育⇒食肉の加工⇒流通・販売」というバリューチェーンのもと、大量の飼料や水が使われ、広い土地も必要である。
しかし、代替肉の場合、これまで家畜のために使われていた飼料や土地を人間の食糧用にまわし、別の食物を生産することができる。
また、バリューチェーンのうち、「家畜の飼育⇒食肉の加工」のプロセスが「代替肉の製造」に置き換わり、植物工場のように限られた土地や飼料、水で製造することができる。つまり、スタートアップを含む異業種からの参入障壁が下がり、これまでにはないプレーヤーが覇権を握る可能性もある。
代替肉市場の成長が見込まれる一方、日本ではまだ「代替肉」という言葉に馴染みがないのが正直なところだ。中には抵抗感を持つ消費者もいるかもしれない。
しかし、代替肉の多くは大豆由来である。もともと日本の食文化は大豆加工食品が多く、日本食との相性が良い。日本人の食生活に新風をもたらし、マーケットの広がりが出ることを期待する。
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