Posted: 03 Dec. 2020 4 min. read

社会のあり方で変化する「障がい」と、誰もが働きやすい社会の実現に向けて

シリーズ: Diversity & Inclusion

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手話と眼鏡と社会的障壁

「新元号は『令和(れいわ)』であります」

2019年4月1日。菅義偉官房長官(当時)が新元号発表のために額縁を掲げたところ、NHKの放送では、手話通訳士のワイプ画面がかぶって「『令和』と書かれた額縁」が“隠れて”しまったことを認識されていた方はいらっしゃるだろうか。

このとき、SNSでは「邪魔だ、見えない」という批判が生じた一方で、「これはすごいことだ、歴史的なことだ」と歓迎する投稿も相次いでいた。どういうことかというと、30年前に『平成』が発表された当時には手話通訳士の同時放送はなく、聴覚障がい者はただひたすら額縁に書かれている字を見るしかなかったが、「今、国民の一大事にインパクトを残せる位置に手話通訳がいるということは、ものすごい進歩だ」というものだ。

「障がい」といっても、目に見えるものから目に見えないものまで様々なものがあることは皆さんご存知のとおりである。「障がい」は社会の仕組み、あり方、インフラなど少しの配慮・工夫によってハードルを低くできるものも少なくない。どのような補助器具やサポートがあるのか、どのような文化なのかといった“社会モデル”によっても大きく左右されるものでもあるのだ。

また、障がいを取り除くための「ツール」が当然のものとして人々の生活に馴染んでいるために、特別に意識することなく生活を送れることもある。例えば、「眼鏡やコンタクトレンズがこの世になかったら、いったいどれほどの人が視覚障がいを有していることになるか?」と考えたことはあるだろうか。機能の不全を補う「ツール」が社会に存在しなければ、今「障がいはない」と思っている人も「障がいがある」と認定されることになるのである。

企業での障がい者雇用

日本では、就労面における社会的制度の1つとして、「障がい者雇用」制度がある。当グループでは、2006年にトーマツチャレンジド株式会社を有限責任監査法人トーマツの特例子会社として設立。積極的に障がい者雇用を行っている他、各法人でも、それぞれのビジネス特性に合わせて障がいのあるメンバーが活躍できる職場環境づくりを推進している。

当グループで展開している業務・雇用も日本の障がい者雇用の一部に過ぎないが、メールルームやパントリーサービス、パソコンのセットアップ、契約書の製本・発送、経理、人事などのオフィス業務の他、ノベルティグッズの制作やマッサージルーム、農園・園芸など、業務は多岐に渡る。グループ全体で既に200名超の障がいのあるメンバーが働いているが、雇用に関する考え方として我々が最も大切にしているのは、【それぞれがそれぞれの分野でプロフェッショナルとなる採用・育成】である。トーマツチャレンジドに入社したメンバーが、グループ内他法人コーポレート部門への出向や転籍を通じて、個々がより活躍できる等、広いキャリアパスがあることは当グループの特徴であると考えている。

障がいのあるメンバーが活躍するために、職場で求められることの一つが、「合理的配慮」である。これは障がいのある人が効果的に能力を発揮できるよう、障がいのない人と平等な機会・待遇を確保する為の措置として、法律で事業主にその提供が義務付けられている。当グループでは、採用面接時の支援者の同席の許可や社内専門家・相談窓口の設置をはじめ、職場体験実習の実施やマニュアル等の整備の他、本人の希望する配慮事項の確認とその合理的な実現に向けた協議を行いながら、より安定して継続的に働けるような取り組みを行っている。

誰もが働きやすい社会へ向けて

この変化の激しい時代においては、「障がい」のあり方や認定される範囲も益々変わるだろう。例えば、当グループでは、これまでは出社が是とされていたので、大変に高いスキルを持っていたとしても在宅勤務を希望する障がいのある方の採用は見送らざるを得なかった。しかしCOVID-19でリモートワークが広がったことより、この場合の働く「障壁」はなくなった。あらゆる人が活躍できる社会こそがサステナブルな社会であり、組織は障がいの有無に関わらず求められるスキルを有した優秀な人材の獲得により存在価値を高め、国際競争力の向上にも繋がるのだ。

ある特例子会社の社長が言っていた言葉を思い出す。「人間なんていつしか皆、機能が低下して障がい者になるのに、その時にあなたは『あれができない、これができない、職場にいらない』と言われても良いのか」。誰かのための工夫や配慮を考える先にもしかしたら、自分のための工夫があるかもしれない。社会にある社会的障壁を取り除く工夫を考えること、それは、お互いが生きやすい・働きやすい環境への第一歩となるはずなのである。

障害者雇用促進法により、2021年3月には企業における障がい者の雇用義務(法定雇用率)が2.3%へ引き上げられることが決まっていることもあり、ビジネス領域においても非常に関心の高いテーマではないだろうか。

実は、当ブログを公開した本日12月3日は「国際障害者デー」(※1)である。また、日本では12月3日~12月9日までの1週間は「障がい者週間」となっている。

ぜひこの機会に、自身の職場や暮らす街で、障がいを取り除くためのツールに目を向けて、「そこには“誰かあるいは自分のための配慮や工夫”が存在しているかもしれない」とほんの少し想像力を働かせてみてほしい。一人一人の気づきと心掛けが、誰もが障がい等に関係なく活躍し、生きやすい社会を形作ると、私たちは信じている。

(※1)国際障害者デー:障がいのある人々の権利や社会参加、社会的な理解をより促進することを目的として定められた記念日であり、1992年(平成4年)の第47回国際連合総会において宣言された国際デー。また、日本には障害者基本法があり、その中の第9条には「障害者週間は、12月3日から12月9日までの1週間とする」との文言も記載されている。

 

■本記事はトーマツチャレンジド株式会社及びデロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社 HR障がい者管理グループ所属メンバーによる協力のもと執筆。トーマツチャレンジドの概要と、その活動内容の一例もあわせてご覧ください。
 

デロイト トーマツ グループ Diversity & Inclusionチーム

激変する市場環境の中、自社と顧客の成長を牽引するための経営戦略の1つとして経営層と一体になりDiversity & Inclusionを推進すべく2017年に結成されたチーム。ジェンダー・国籍・カルチャー、LGBT等の個人の多様性や違いを強みとするための施策を幅広く立案・実行し、社内外に広く発信中。

「=」をモチーフとしたロゴは、デロイト グローバル共通のDiversity & Inclusionコンセプトである「ALL-IN」をイメージしたもの。