Posted: 11 Jun. 2020 2 min. read

第2回 モビリティーの先へ、自動車メーカーの目指すべき7つの方向性

【シリーズ】続・モビリティー革命2030

世間にすっかり定着した「CASE」。しかし、実情、A(自動運転)やE(電動化)は、技術・コスト・インフラ等の面から普及が進んでおらず、また、C(つながる)やS(シェアリング・利活用)は着実に普及しているもののマネタイズ方法を見出せていない。自動車メーカー各社は、CASEへの全方位的な投資が増加する一方、その回収は儘ならない。

そこで、各社が2030年に向けて持続的な成長を実現するために今後どうあるべきか、 7つの方向性で整理する。

本稿は2020年4月23日に日経xTECHに掲載された「続・2030年モビリティー革命を読み解く」を一部改訂したものです。https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01278/00004/

本業のクルマづくりに拘る

①     超高付加価値化

消費者がプレミアムを払っても良いと思うより高価なクルマづくりに特化する。しかし、顧客規模が限られる上に、欧州系メーカーの得意領域であり、スケールメリットを強みとしてきた大手自動車メーカーには困難な選択肢と言える。

②     エマージングモビリティー化

社会課題解決の一手段として、「パーソナルモビリティー」「超小型モビリティー」「空飛ぶクルマ」等、新たなモビリティー開発に挑戦する。ただし、これらは黎明期にあり、収益化が課題となる。

③    世界の工場化

自社の効率性を極限まで高め、他社からの製造受託によってスケールメリットを得る。製造工程をいかに自動化し、低コストなモノづくりを実現できるか、他社の設計思想やノウハウをどう吸収するかが課題である。さらに、各社の高品質なモノづくりが製造受託では“過剰”となる可能性もある。

クルマのバリューチェーンにおける事業拡張

④     テクノロジー拡販カンパニー化

クルマの開発・製造で培った最新技術やノウハウを他社に販売する。ただし、多くの自動車メーカーは、ケイレツ部品メーカーへの委託やメガサプライヤーへの依存が足かせとなり、実現のハードルは高いだろう。

⑤    モビリティーカンパニー化

カーシェア、配車アプリ、マルチモーダル等、利活用サービスを手掛ける。しかし、現状、多くの企業が収益化で苦労しており、自動車メーカーが取り組む際には事業の立ち位置を明確にする必要がある。

「クルマ」「モビリティー」の枠を超える

⑥     生活密着サービスカンパニー化

クルマやモビリティーを起点に生活領域の個別事業を展開する。既存の強みを転用できない可能性もあり、強い意志や決意が必要であり、また「クルマ」×「新領域」の組合せによるビジネス設計が肝要となる。

⑦     社会インフラカンパニー化

個別事業ではなく、生活全体の質を高めることが可能な生活基盤領域へ染み出す。クルマやモビリティーを“移動インフラ”と捉えれば、生活・経済全体の根底をなす「不動産」や「金融」領域に染み出すことに親和性がある。クルマやモビリティーという武器を持つ自動車メーカーが、特定地域でローカルチャンピオンになる可能性はある。

 

自動車メーカー各社には、これまでのクルマづくりを大切にしながらも、各社の想いや理念を踏まえた新たな方向性を再定義し、未来の世界に向けてチャレンジしていただきたい。

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