Posted: 10 May 2022 2 min. read

『DTCからの提言2022 パワー・オブ・トラスト 未来を拓く企業の条件』刊行によせて

【シリーズ】「信頼」を経営の軸として

デロイト トーマツ コンサルティング全社として初めて執筆した書籍「DTCからの提言2022 パワー・オブ・トラスト 未来を拓く企業の条件」が刊行された。本書では、社会情勢が大きく変化し、バズワードも多数出てくる中で、敢えて、古くて新しいテーマである「トラスト(信頼)」が企業経営にとって重要であるということを再定義した。VUCAの時代と言われ始めて久しいが、刻々と変わる変化の時に、企業は何をしていかなくてはならないのか、何をすべきなのかについて、実在の企業による具体例を挙げて「リアリティのある解」を提示している。10年後にも信頼される企業となるための第一歩を踏み出すきっかけになったと信じている。


企業が迎えている「変化の時」

人々の不安が募る時代において企業が押さえておくべき4つのトレンドがある。まず、グローバリゼーションの複層化である。経済一辺倒でのグローバリゼーション加速時代から、複雑なリスクに対峙するため、ヒト・モノ・カネ・情報の経営資源の移動が複雑になる複層的な変動時代へと変化しているのだ。次に、経済的な価値や利便性だけでなく「人間らしさ」という内面的な豊かさや、効率がもたらす幸せではなく、時間や手間をかけて味わう幸せへと人々の価値観が変化していることだ。また、気候変動対応に代表されるサステナビリティへの対応やその実績が物事の判断における重要な基準となりつつある。見せかけだけのサステナビリティ対応では太刀打ちできない時代となっているのだ。実際に、日本においても2020年のESG投資額が2018年の30%以上増となっている。さらには、2021年卒学生の就職先企業の決定理由のうち、最多理由が「社会貢献度の高さ」となっている。そして、デジタルテクノロジーが不可欠な時代の中で、ただ便利になることではなく、安心して使えるか、安全が保障されているかということが必須条件となっている。企業はこれらの変化を把握し、期待に真摯に向き合っていかなくては生き残っていくことは困難となる。

未来を拓く企業として持つべき経営軸「信頼」

このように不安と期待が錯綜する時代に、企業は「信頼できる存在であるか」、「信頼に足りうる行動を伴っているか」で判断される。実際に、COVID-19を契機に、企業への信頼は3%減少、政府への信頼は6%減少している。また、社会的責任を果たすため、ある事故に対して法的には責任のない立場にある企業が事故を起こしたサプライヤーとともに謝罪記者会見を開き、影響を受けた人々や土地の回復に向けて動いた例もある。その結果、株価は急激に落ちることはなく、信頼を維持したといえるだろう。一方で、同様のケースで、あくまで法的責任の範囲でのみ対応する例もあり、どちらが取引先などからの信頼を得られるかは一目瞭然である。


「信頼」とは、人々が不確実性や困難に立ち向かうための心の拠り所であり、自分や周りの人々、さらには社会環境、未来の人々までをも守り、生き抜くためにともに戦ってくれると信じられる、いわば前に進むためのエネルギーともいえる。これまでも人類は「信頼」を共有しあうことで生き延びてきた。その「信頼」を得ることで、企業はマルチステークホルダーに対し、求心力と遠心力を働かせることができる、つまり幅広い対象から選ばれ続けることができるのだ。

対象・次元・時間軸の信頼のアップデートを捉えよ

さらに重要なことは、「信頼」の重要性は不変であるものの、「信頼」自体は可変であると理解することである。我々はそれを信頼の対象、次元、時間軸がアップデートされることと捉えている。顧客や取引先という直接的な関係者だけでなく、サプライチェーンの端から端、地球環境まで、自社利益のみならず、社会全体の利益まで、そして短期的な価値ではなく、長期的な影響までを見据えた「信頼」が求められている。対象、次元、時間軸でアップデートされる「信頼」を理解し、今を生きる人々、そして未来を創る人々から、自分たちは信頼されているのかを常に問い続けなくてはならない。

 

書籍の詳細はこちら:〈DTCからの提言 2022〉 パワー・オブ・トラスト――未来を拓く企業の条件

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 三室 彩亜/Saia Mimuro

三室 彩亜/Saia Mimuro

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ディレクター

  メガトレンドを起点としたビジョンや中長期戦略の策定、事業計画、新規事業等の立案、リスクマネジメント等を担う。 未来洞察だけに終わらず、それを組織に根付かせる活動として、インテリジェンス機能の設計や、経営層の視座づくり、若手リーダー候補の育成等にも広げている。 関連するサービス: モニター デロイト(ストラテジー)

望月 ゆう/Yu Mochizuki

望月 ゆう/Yu Mochizuki

デロイトトーマツグループ シニアコンサルタント

人権や労働に関するサステナビリティと企業融合、組織のケイパビリティ向上に向けたインテリジェンス機能設計、BPR支援等のプロジェクトを経験。官公庁や自治体に対するコンサルティング経験も多数。