Posted: 11 Apr. 2022 4 min. read

TNFDフレームワークのベータ版公開

ネイチャーポジティブな未来に向け、大きなLEAP(前編)

※本ブログは、こちらのブログを翻訳したものです。この翻訳文と原文に相違がある場合は、原文の記載事項を優先します。

 

自然界は経済のほぼすべてのセクターの事業活動に基盤を提供しています。世界経済フォーラムの試算よると、世界経済全体の44兆ドル相当分が自然に依存しています。また、自然界は食糧やその他の原材料を提供し、嵐や様々な災害からコミュニティを保護し、気候の調整にも中心的な働きをしています。しかし現在のやり方を続けると、人類社会や経済活動を支える自然の力が損なわれてしまうリスクがあります。これに対応して、自然に対する損害を反転させ、ネットゼロとネイチャーポジティブの未来という2つの目標を達成していこうという動きが大きなうねりになりつつあります。 

 

自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)

TNFDとは、企業が自社と自然との関係性を適切に理解するのに役立つ市場主導の国際的な取り組みです。グローバルな金融の流れをネイチャーポジティブな成果にシフトさせていけるよう、それに必要な情報を金融機関、企業、サービスプロバイダーが手にできるように策定されてきたものです。

自然を取り込んでいく際には次のような課題があります。

  • 複雑で多角的であること
  • 適切なデータの入手が難しいこと
  • 科学的な専門用語をビジネス上の決定に置き換える難しさがあること

しかし、自然関連のリスクが長期的な企業価値に影響を与えるばかりではなく、そのようなリスクの管理がレジリエントなビジネスや社会の構築には不可欠であるという認識が高まってきています。また、自然や生物多様性の損失は気候変動と密接に関連しています。両方に対応しなければ、どちらも解決することはできません。

TNFDはこのような課題に対する解決策を提供しようとするものです。あらゆるセクターの企業はTNFDに関与していくことで、問題を理解し、科学的根拠に基づいた決定を下し、レジリエンスを構築し、ネイチャーポジティブな将来への動きから生みだされる機会を最大限活用することができるようになるのです。企業が「あらゆる決定において自然を考慮する」ようになることがTNFDの目的です。

TNFDはデロイトを含めた世界有数の企業をはじめ、国連、各国政府、基準設定団体によって支持されており、この枠組みは気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づいたものです。新しい国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の下で世界的なサステナビリティ基準に向けた流れが進む中で、自然と生物多様性の分野全般にわたってTNFDは急速に推進されるようになるでしょう。主な特徴を以下にご紹介します。

TNFDフレームワークのベータ版

TNFDでは、自然関連リスクの管理と開示に関する試案とあわせて、今後の協議のベースとしてフレームワークのベータ版を発表しました。2023年半ばまでオープンイノベーションの反復プロセスを通じて開発が進められる予定で、試案を試行してフィードバックを提供するよう企業に呼び掛けています。

このベータ版は、明確な言語の定義、第1回の草稿版開示提案、自然関連リスク管理プロセスに関する「やり方」(「LEAP」)の3つの要素から構成されています。

 

1. 言語の定義

TNFDのフレームワークは、企業が自然をビジネスの問題としてとらえる際に必要な概念や用語を定義します。この言語に関するガイダンスは、自社の自然に対するインパクトや自然への依存がどのようなリスクと機会を生んでいるのかを企業が理解していく助けとなります。TNFDでは自然関連リスクについて、TCFDと同様のやり方で物理的リスク、移行リスク、システミックリスクに分けて分類しています。このようなリスクは、需要の変化やサプライチェーンの混乱といったマクロ経済やミクロ経済からの波及経路を通じて金融リスクと関連するものです。

 

2. 開示提案

提案はグローバルな報告基準に沿ったものであり、TCFD開示の柱や開示要素を基盤としています。つまり、この分野についてTNFDとTCFDは相互運用が可能になっています。このようなアプローチに沿って、TNFDは次の開示を提案しています:

  •  ガバナンス(取締役会と経営陣の役割を含む)
  • 戦略(短期、中期、長期の財務計画を含む)
  • リスク管理(より幅広いリスク管理の枠組みへの自然リスクの取り込み方法を含む)
  • 指標と目標(パフォーマンスの計測方法を含む)

 

3. 「やり方」(LEAP)に関するガイダンス

TNFDには自然関連リスク管理のアプローチ方法に関する任意のガイダンスも含まれています。これは全く新しい「LEAP」プロセスを基礎にしたものです。LEAPとは Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)のことで、各項目はさらに細分化されており、企業は自然関連リスクと機会の評価に向けて重要な質問やタスクを検討することができます。 LEAPプロセスは、企業の資産やオペレーションと自然との関わり合いを評価し、実態を把握し、その戦略的対応に備えるといった点で指針となります。

 

(後編「TNFDフレームワークベータ版公開を受けて企業が今できることとは」に続く)

執筆者

Guy Williams - Director, Risk Advisory
guwilliams@deloitte.com.au

Anne-Claire van den Wall Bake-Dijkstra - Partner, Risk Advisory
acvandenwallbake@deloitte.nl

Simon Brennan - Director, Risk Advisory
simbrennan@deloitte.co.uk

 

翻訳監修

丹羽 弘善 デロイト トーマツ グループ パートナー

加藤 彰 デロイト トーマツ グループ シニアマネジャー

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