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サービス
生物多様性に関する包括的戦略策定サービス
生物多様性の「主流化」によって、競争優位性を確立
生物多様性とは、地球上の生物の多様性を示す概念です。生物多様性は急速に失われつつあり、WWFによると、過去50年間で世界の生物多様性は68%喪失していると推定されています。一方で、IUCNの試算によれば、生態系がもたらしているサービスを経済的価値に換算すると、年間33兆ドルにも達します。企業はこうした現状を無視できない状況になってきており、CSRに閉じない“生物多様性戦略”が必要です。
気候変動の次にくるアジェンダ、生物多様性の重要性
2021年10月、生物多様性に関する新たな目標の採択に向け、中国でCOP15(国連生物多様性条約締約国会議)が開催されました。生物多様性に対するNGOや国際機関、機関投資家などの注目は昨今非常に高まっています(表1)。WEF(世界経済フォーラム)の「2020年グローバル・リスク報告書」において、生物多様性喪失は今後10年間に人類が直面しうる上位5つの危機の一つに挙げられています。また、WEFが策定した「Measuring Stakeholder Capitalism(ステークホルダー資本主義の測定)」においても全55指標の内、21のコア指標の一つとして「生物多様性損失」が設定されており、資本市場の関心も高いことがうかがえます。最近では、COVID-19のパンデミックをはじめとして、森林破壊などで野生生物種が人間社会に出ざるをえなくなったことにより、野生動物を宿主とするウイルスと人間の接点が増えたとも言われており、疾病予防や感染症の拡大を防ぐという観点からも生態系の保全が求められています。企業は事業の外で行う植林ボランティアなどに取り組むだけではもはや不十分であり、生物多様性への事業活動を通じた貢献・取り組みへのコミットメントが求められています。
生物多様性とビジネス-リスク・機会の把握
ほとんどの企業は何かしらの形で生物多様性との関わりがあり、潜在的なビジネスリスクや機会を抱えています。
リスクへの対応として、中長期視点の投資家の意思決定に貢献することを目的に、将来的な財務インパクトが高いと想定されるサステナビリティ要素の開示基準を設定するSASB(サステナビリティ会計基準審議会)はそのマテリアリティマップにおいて、鉱業や食品を含む14のインダストリーで生物多様性(Ecological Impacts)が重要だと識別しています。
また後述する自然関連財務開示タスクフォース(TNFD) では非金融企業と金融機関の双方に自然に関連するリスクと機会の把握を求め、具体的に(1)インパクト、(2)依存度、(3)自然に関連する財務上のリスクと機会、(4)自然に関連するシステミック・リスクの4点を挙げ、短期的に財務に与える影響のみならず、インパクトと依存度により表される長期的なリスクも含まれると指摘しています。
具体的な取り組みとして、欧州では「グリーンエコノミー」の中でも生物多様性が重要視されていますが、例えば日本企業は海洋国家たる“地の利”を機会として捉え、「ブルーエコノミー」で対抗することが一つの戦い方になるのではないかと考えられます。ブルーエコノミーとは、地球面積の7割を占める海に注目し、その可能性を開放することで経済価値と社会価値を両立する概念です。日本は、排他的経済水域と領海を足した面積で世界第6位を誇りますが、ブルーエコノミーなどの新たな潮流を主導する事業機会を探索することは社会課題起点の尖った取り組みにも繋がります。
TNFD・SBTN等に基づく企業価値の変化・目標・KPI設定
2022年開始に向けて複数の新たな自然資本のフレームワークにより、企業価値が大きく変化し、目標設定・KPI設定は大幅な変更を余儀なくされます。それに対してデロイト トーマツでは一歩先を行く支援を対応しています(表2)。
現在、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フレームワークの2023年下期公表に向けた準備が進められています。TNFDフレームワークは、2021年10月時点で89か国2600社以上が賛同済みである気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)と類似するものの、1) 自然が事業に与える影響と、2) 事業活動が自然に与える影響の双方を評価する「ダブル・マテリアリティ」の視点が新たに求められるようになるとみられています。
また、気候変動に関するSBT(Science Based Targets)設定に参画する企業が世界で2,000社近くとなるなか、SBTN(Science Based Targets Network)による自然に焦点を置いた自然SBTsの枠組み検討も進められており、2022年に自然SBTsに関する初期ガイダンスが公開される予定です。
これらTNFD・SBTNに応じた目標・KPI設定※1や開示に関する規制等が将来的に導入される可能性が高い中、自然に対する事業活動の依存性や影響を把握することはレジリエンス向上にもつながるため、今からの準備が奨励されます。
※1 KPIの検討では、社会的投資の活性化を目的にロックフェラー財団を中心とした投資家達によって着想・創設されたインパクト投資を推進する国際イニシアチブであるGIIN(Global Impact Investing Network)が提供するインパクト測定ツール「IRIS+」が参考になります。このIRIS+にはSDGsを含む様々な社会課題との関連性やそのインパクトを測定する為の685の指標が紹介されており、テーマの一つとして設けられている「Biodiversity and Ecosystems」を選択することで45の指標(Metric)を抽出することができます。ここから自社に関連する指標をピックアップして事業活動や製品・サービスとの関係性を整理することでリスクと機会が見えてくるはずです。その際、自社の活動のみならず、バリューチェーン全体に広く思いを巡らせることが重要です。手法としてはSDGsコンパスなどでも紹介されている、投入(インプット)から活動(アクティビティ)、産出(アウトプット)、結果(アウトカム)、影響(インパクト)までの道筋を追う「ロジックモデル」が有効と考えます。このような方法で識別されたマイナス影響を最小化し、プラス影響を最大化するKPIや目標の設定が期待されます。
ビジネス戦略の策定
生物多様性とは、ただ生物の種類が多ければいい、というわけではありません。遺伝子、種、生態系の多様性と陸・空、海水・淡水の掛け合わせで捉えていくことが重要です(表3)。例えば、欧米の大手消費財メーカーや大手飲料メーカーはツールによる水リスクの定量化などを行っています。また、海洋廃棄物の回収・再利用による海洋生態系の保護などは循環型経済への貢献にも繋がります。GAFAMなどのテックジャイアント企業もDXとの掛け合わせによる生物多様性の保全に貢献しています。例えば、米ソフトウェア大手企業は環境に関する意思決定支援サービスを展開しています。複数の社会課題やdXとの掛け算による戦略を策定することにより相乗効果が期待できます。
ルール戦略を活用した競争優位性の確立
先進企業は生物多様性の保全を単なるCSR活動の一環ではなく、自社の製品・サービスの成長を加速させる要素として存在感を示す形で戦略に組み込んでいます。例えば、大手消費財メーカーはパーム油に関するコンソーシアムの立ち上げを通じ、調達基準に適うパーム油の生産者を囲い込み業界全体が準拠すべき基準へと昇華させることで、サプライチェーンの変革と競争優位の確立を同時に達成しました。こうしたルール戦略を活用した先回りにより、生物多様性による差別化が期待できます。
デロイト トーマツの強み
デロイト トーマツでは、生物多様性を含むSDGs・社会課題起点の全社戦略・事業戦略策定支援を実施しており、企業支援実績が豊富です。生物多様性に関連する自社におけるリスク・機会のセンシングから、TNFD・SBTNに基づいた目標・KPI設定、ビジネス戦略の策定、パブリックセクターを巻き込んだルール戦略など様々なテーマにEnd to Endでサービスを提供しています。その他関連する社会課題テーマやdXとの掛け算による包括的な戦略策定支援が対応可能です(表4)。
また、デロイトはTNFDのタスクフォースメンバーとして参画しており、Globalによる連携も可能です。