Posted: 26 Apr. 2023 5 min. read

<特別寄稿>【OVER ALLsを通じて実現したい社会】前編

【シリーズ】HOW経営からWOW経営へ:アートで個の想い・ポテンシャルを引き出し、イノベーションを起こすことを楽しもう

自己紹介:OVER ALLs 赤澤岳人

まずは自己紹介として僕、OVER ALLs 赤澤岳人の話をしたい。僕は今、壁画アートの会社OVER ALLsを起業して7期目になる。起業前は大手人材会社で会社員をしていたが、それは29歳から34歳までの5年間で、それまでは引きこもりに近い生活をしていた。1日中家にいて漫画や映画、ドラマ、本、音楽をひたすら吸収していた。

ふとしたきっかけで大手人材会社に拾われて会社員になった僕はあるコピーを目にした。

 「愛するために働く」

このコピーは僕の心に響いた。少し前までニートだった僕は周囲に愛を振り撒く余裕なんてなかった。働いて充実した生活を送っている友人たちを羨むならまだしも憎んでさえいた。身近な人たちもたくさん傷つけた。

でも働き始めたことで自分が社会の中で自分が役立っていることを実感し、初めて人を愛することができる、このことを心の底から感じた。

僕は働くことに夢中になった。仕事を通じて、他者と関わることで、初めて自分という存在を社会の中で感じられたからだ。他者に対して何らかの自己表現をすることで自分という存在を感じられる。僕は仕事に夢中になり、人を愛することができるようになり、生きる希望が持てた。

働くことは僕にとって自己表現であり、僕は働くことが楽しい。

その一方で、多くの日本人にとって、働くことが自己表現でないことにも僕は気づいた。それどころか、仕事では自己表現をしないことが求められている。「仕事に感情をもちこむな」と言われ、好き嫌いなど言えない。勤務中には好きな髪型も好きな服も許されない。組織の歯車の一つとして、自己表現を殺すことが求められる。

僕は朝の通勤風景にゾッとする。同じようなスーツを着て、無表情で淡々と歩く姿はゾンビ軍団だ。

僕はこんな社会を変えたい。

働く人々が、仕事を通じて社会の役に立っていることを実感できたら、もっと仕事に誇りが持てたら、もっと仕事で自己表現ができれば、もっと人を愛することができて、生きる希望が持てるんじゃないか。もっと人生が楽しくなるんじゃないか。

「楽しんだって、いい。」

これはOVER ALLsの企業理念だ。「楽しめ」でも「楽しもう」でもない。働くひとりひとりが、自己の意で仕事だって「楽しんだって、いい」。

僕は確信している。どの仕事にもWOW!がある。社会との関わりの中で誰かの役に立っている以上、人の心を動かす何かがある。僕は、働く人たちに働くことが自己表現になると知ってほしい。もっと自己表現していいのだと知って欲しい。働くことを生きることを楽しめる人を増やしたい。

だからOVER ALLsは企業理念や会社の歴史を壁画にする活動と、その壁画作りを通じて社員一人ひとりがもっと表現できる人になれるプログラムをデトロイト トーマツ コンサルティングさんと一緒になって進めている。

HOW経営からWOW経営へ:OVERALLs社×デロイトトーマツの協業リーダー、OVERALLs 代表取締役社長 赤澤岳人、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 Human Capital Division Co-Lead 執行役員 パートナー 岡本努

表現することを禁じた日本社会

「好き嫌い言うんじゃありません!」

子供の頃から、日本人はこう言って育てられる。でも人生において「好き嫌い」以上に大事なことなどあるか。「好き嫌い」は最もシンプルで大切な「表現」だ。その表現を押さえつけられることにもっと問題意識を持った方が良い。

僕は子供の頃、目立ちたがり屋だった。先生が何か質問すれば、答えがわかっていなくても真っ先に「ハイ!ハイ!」と手を挙げる。正解を言って褒められたかったのではなく表現したかったのだ。

でも日本の教育はそんな子供を潰す。「また赤澤か。君はいいや。静かにしてなさい。」と当ててもらえない。それどころか、これ以上発言しないようにと口にガムテープを貼られたこともあった。

いつも先生に指名されるのは表現をしたくない子だ。手を挙げている僕をよそに「今、居眠りしていた◯◯さん?これ答えてみて」。みんなの前で発言すること、表現することはこの国では罰だ。

服装も表現の手段だが同じく日本では抑えつけられる。

おしゃれという自己表現に目覚め始める、最も多感な中学生高校生に無個性な制服着用を義務付ける。制服をアレンジしたり髪の毛で自己表現をしようものなら「中学生らしい格好、高校生らしい格好をしなさい」と指導される。「らしい格好」とは誰が決めるのかわからないが、とにかく自己表現になるような服装、髪型、アクセサリーといったものは禁止だ。ようやく大学生になって好きな服を着られると思ったら、3年目には就職活動が始まる。髪を染め直しピアスも外しリクルートヘアにリクルートスーツ。お通夜でもないのに黒いスーツを着て、無事に就職したら「会社員らしい格好」の40年間が始まる。

服なんて好きなものを着るのが一番だ。それが表現なのだが、ファッションにおいても日本では自己表現より「正解不正解」が優先されるのだ。

 

日本で自殺が多い理由

このように日本人は表現を抑えつけられ続けて生きていく。自己表現は禁じられ「正解」を追求するように教育される。自己表現なんかより、周囲に迷惑をかけないこと、調和すること、忖度することを優先しろ、という声が大きい。その結果が今の日本を覆う閉塞感に繋がっているのだと僕は思う。

社会の閉塞感を表す数字の一つは自殺者数だ。

日本では15歳~34歳の死因の第1位が自殺だ。これは他の先進国と比べて異常だ。若者に限らず、年間の自殺者は2万人もいる。この数字はこの国の閉塞感を最も表していると思う。内戦地域よりも自殺率が高い。

なぜこんなに自殺者が多いのか。僕はその原因の一つが表現を抑えつけている社会にあると考える。

この国では「好き嫌い」などの表現を抑えつけて画一的な「らしさ」にはめ込み「正解」か「不正解」を重視する社会を教育段階から作り上げている。表現することは許されず、ひたすら中学生らしく高校生らしく社会人らしくと「正解」を要求され続ける。

だから社会にとって自分が「不正解」だと感じた瞬間に社会からの退場を意味する自殺という道を選んでしまうのではないか。

僕はこの国を変えたい。

「正解不正解」ではなく「好き嫌い」を表現をする人に溢れた国に変えたい。

表現には「正解」も「不正解」もない。自己表現とは本来そういうものだ。お互いの好き嫌いに対して「正解不正解」はなく、素直に認め合うしかない。最近声高に叫ばれる多様性の本質も本来そこにある。

お互いの「好き嫌い」といった表現を認め合い「正解不正解」ではなく自己表現の揺らぎのようなものを許容する社会になれば自殺者も減るはずだ。

だからこそ僕は「正解不正解」がない、表現の最たるもの、アートの会社を立ち上げた。そんな我々OVER ALLsのパーパスは「表現し続ける」だ。

 

<特別寄稿>【OVER ALLsを通じて実現したい社会】後編

執筆者プロフィール

赤澤 岳人(あかざわ たかと)

株式会社OVER ALLs 代表取締役社長

OVER ALLsを副社長画家の山本勇気とともに2016年創業。「楽しんだって、いい」を企業理念とし、正解を追求する“HOW”ではなく、心の感動に従う“WOW!“を追求し、「楽しい国、日本」の実現を目指す。オフィスアートを中心とするオーダーアートの企画制作を実施。2020年よりデロイト トーマツ コンサルティング社と協業を開始し、アートを活用した組織変革を展開。「情熱大陸」や「news zero」等、メディア出演多数。アート=WOW(好き)=EMOTION(気持ち)。アートには正解がない。「個人的に好き」や「感覚的に良いと思う」というビジネス上は否定されがちな感覚こそ、今の日本社会には足りていないのではないか。「Revolution, not ART」をスローガンとして、多種多様なプロジェクトを推進している。

※下記リンクのとおり、OVER ALL社とデロイト トーマツ コンサルティングは、2021年5月より、「アートを活用した組織変革プログラム」での協業を開始しており、この取組みの一環で特別寄稿をしていただいております。

デロイト トーマツ、OVER ALLsと協業し、企業の組織変革をアートで加速

【シリーズ】
HOW経営からWOW経営へ:
アートで個の想い・ポテンシャルを引き出し、イノベーションを起こすことを楽しもう

[vol.1] 面白く、新しい未来(WOW!)を描こう!

[vol.2-1] <特別寄稿>【OVER ALLsを通じて実現したい社会】前編

[vol.2-2] <特別寄稿>【OVER ALLsを通じて実現したい社会】後編

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デロイト トーマツ、OVER ALLsと協業し、企業の組織変革をアートで加速