量子コンピューティングの未来を切り開くグローバルスタートアップの今 ブックマークが追加されました
実用化が現実味を増し注目が集まる量子コンピューティング。そのグローバルトレンドをキャッチするべく、デロイト トーマツではスタートアップ資金調達状況を定点観測。そこから見える動向を量子技術分野の専門家がグローバルの知見を交えて解説します。
以下のランキングを見ていただくと、2023年時点の人口で日本の約3分の1のカナダや、それよりも人口が少ないフィンランドなども名を連ねていることが分かります。つまり国の規模に限らず、量子コンピューティングは世界で競争が行われているのです。
まずランキングを見てみましょう。このランキングでは、グローバル市場においてハードウェアを開発する企業が上位を占めています。
例えば1位のPsiQuantumや、5位のD-Wave Systemsなど、設立から10年未満の企業から20年以上の歴史を持つ企業まで、まさに群雄割拠の状態です。量子コンピューティングは、まずハードウェアの開発が進まなければ実用化に至りません。そのため、現在はハードウェア開発に多くの投資が集中しています。開発方式は超電導、シリコン、光、イオントラップ、中性原子など多岐にわたり、現時点ではどの方式がスタンダードになるのか明確ではありません。
量子コンピューティングは計算能力の確保に加え、暗号解読への応用もあるために、国防の観点からも重要な国家戦略の一環となりつつあります。そのため政府による支援も進んでいることも、スタートアップを勢いづけています。特に米国や中国、EU各国は量子技術の研究に多額の予算を投入し、競争が激化しています。
一方で、ソフトウェアを開発するスタートアップも徐々に台頭してきています。例えば、
これらの台頭はハードウェアの成熟度が高まり、徐々にソフトウェアの重要度が増してきたからだと思われます。16位のTerra Quantumのようなユースケースに近いレイヤーから、19位のQ-CTRLのようなハードウェアに近いレイヤーまで様々な種類のソフトウェアスタートアップが注目されています。
このような動向を見ていると、新しい産業が生まれる過程を目の当たりにしていると感じます。自動車産業において、完成車メーカーと部品供給企業がそれぞれ役割を担うように、量子コンピューティング産業もハードウェア・ソフトウェア・ミドルウェアのサプライチェーンが形成されつつあります。
また、金融や医療分野での量子技術の応用も進んでおり、従来のコンピュータでは実現困難だった大規模なシミュレーションや機械学習、化学計算の高度化が期待されています。
こうした動きに先んじて、私たちデロイト トーマツでは先進的なスタートアップたちと連携した量子技術の研究開発やエコシステム構築、ビジネス支援までいちはやく取り組んでいます。例えば先述したClassiq Technologiesとはすでに実証実験を行なっています。また、量子コンピュータ開発の米国企業QuEra Computing Inc.と戦略的協業も開始しました。こういった活動を通じて私たちは日本における量子産業発展を目指していきます。
補足)
文中、量子力学の原理を利用したハードウェアを指す場合は「量子コンピュータ」、ソフトウェアや理論など、量子コンピュータを使った計算手法や技術全般を含む場合は「量子コンピューティング」、さらに量子暗号通信や量子センシングなども含む場合は総称して「量子技術」と記載しています。
寺部 雅能/Terabe Masayoshi
デロイト トーマツ グループ 量子技術統括
日本の量子プロジェクトを統括。
自動車系メーカー、総合商社の量子プロジェクトリーダーを経て現職。量子分野において数々の世界初実証や日本で最多件数となる海外スタートアップ投資支援を行い、広いグローバル人脈を保有。国際会議の基調講演やTV等メディア発信も行い量子業界の振興にも貢献。著書「量子コンピュータが変える未来」。ほか、経済産業省・NEDO 量子・古典ハイブリッド技術のサイバ-・フィジカル開発事業の技術推進委員長など複数の委員、文科省・JSTの量子人材育成プログラムQ-Quest講師、海外量子スタートアップ顧問も務める。過去に、カナダ大使館 来日量子ミッション・スペシャルアドバイザー、ベンチャーキャピタル顧問、東北大学客員准教授も務める。