Posted: 01 Jun. 2019 3 min. read

一般財団法人日本観光・IR事業研究機構主催「始動するIR開業へのプロセス」セミナーへ デロイト トーマツ 仁木が登壇

IR制度の最新動向と確認すべき論点整理

有限責任監査法人トーマツ パートナー、デロイト トーマツ グループ IR(Integrated Resort)ビジネスグループ リーダーである仁木一彦が、2019 年7月16日(火)に東京都内で開催された「第6回セミナー『始動するIR開業へのプロセス』」に登壇、最新のIR制度等について論点整理を行った。

有限責任監査法人トーマツ パートナー、デロイト トーマツ グループ IRビジネスグループ リーダー 仁木一彦
有限責任監査法人トーマツ パートナー、デロイト トーマツ グループ IRビジネスグループ リーダー 仁木一彦

まず仁木は、これまでのIR整備法成立までの動向について簡単に触れながら、今回の講演の主題である今後の自治体によるIR事業者の公募・選定及び国によるIR区域の認定の大まかなスケジュール等について整理した。次にマイナンバーカードによる本人・入場回数の確認、日本人を対象とした入場料の賦課等の例を引き合いに出しつつ、政府が導入を検討している世界最高水準の厳格なカジノ規制の概要を解説した。

続けて、IR整備法施行令に定められている中核施設の具体的な基準の一部を紹介した。国際会議場、展示等施設および宿泊施設の大きさなどに関する定量的な要件や魅力増進施設、送客施設の定性的な要件を解説した。

図1.IR整備法施行令に定められている中核施設に関する具体的な基準

IR整備法施行令に定められている中核施設に関する具体的な基準
(出所)特定複合観光施設整備法施行令に基づきデロイトトーマツにて作成

今後、IR制度関連法令は順次整備されていくことになり、IR事業者は対応のアクションをタイムリーに取る必要がある、と仁木は説明。特に、国土交通⼤⾂が策定・公表する「基本方針」が起点となり、区域整備計画の認定に関する基本的な事項や事業者選定の進め方が定められることに触れたのち、各自治体のIR誘致動向を、各自治体が公表している投資規模(金額)を用いて紹介した。例として、開示されている情報が多い大阪を挙げ、年間来場者数、年間売上、投資規模(建設投資額)、さらに国際会議場・展示場・宿泊施設など、各施設の規模について実例を示すとともに、観光庁資料に基づき、日本にIR施設が誘致された場合の旅行消費額・生産波及効果・雇用誘発効果など定量的に示され、様々な業種に及ぼす裾野の広い効果を示唆した。また、大阪のRFC募集要項を例にとり、各事業者に提案を求める項目についても触れた。

講演の後半では、「事業者として、どのような対応をすべきか」という観点で

  • 事業計画の検討
  • 事業推進上の負の影響に関する取り組み
  • 背面調査への備え

の3つのポイントに絞り解説を進めた。

(1)事業計画の検討

必置施設ごとの事業性を試算する場合、政府が求める定量的な要件を満たすことに加え、それを実現するための運営面の施策を事前に検証しておくことが必要である。例えば、国際会議場施設の場合、収容人数といった定量要件の他にどのようなイベントを企画し誘致するかという視点で緻密に検討することが重要となる。展示等施設、魅力増進施設、送客施設、宿泊施設、その他施設も同様に検討することになるが、IR事業者だけでは検討しきれない場合もあるため、IR事業への参入を検討している企業は、ビジネスチャンスを見出す参考にしてほしいと仁木は語った。

(2)事業推進上の負の影響に対する取り組み

投資の魅力が大きいと理解されているビジネスだが、高い事業性だけでは国民の理解が得られないと考えられる。負の影響に対する取り組みは、忘れずに取り組むべき大事なポイントとなる。国民からの厳しい目線に晒されるであろうIR事業は、事業者の信頼性を揺るがすような企業不祥事が起きることが許されない事業分野のため、自治体による事業者選定の際は事業計画とともに、その企業の高い倫理観が重視されて選ばれる必要があると考えられる。

(3)背面調査への備え

大阪の例では、RFC段階で既にカジノ事業免許申請者の適合性審査基準と同等の基準を満たすことを参加資格として要求していることから、応募企業および応募企業グループが事前に模擬背面調査の実施を任意で行うことの有用性を解説した。IR事業者や主要株主等の免許・認可の関係と背面調査の対象者の解説を加えた。

いくつかの点で予測も含めた解説を行ってきたが、これから発表される基本方針・各種施行令などを、本日の話を踏まえて読み込むことの重要性を仁木は強調し、講演を終えた。

 

 


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仁木 一彦/Kazuhiko Niki

仁木 一彦/Kazuhiko Niki

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー パートナー

オペレーショナルリスク・プラクティスの日本責任者、IR(統合型リゾート)ビジネス・プラクティスの責任者を務める。 公認会計士、公認内部監査人、公認不正検査士。 2000年公認会計士登録。 【オペレーショナルリスク・プラクティス】 15年以上にわたり、リスクアドバイザリー業務に従事し、オペレーショナル・リスク領域のプロジェクト責任者を多数務める。 専門分野は、コーポレートガバナンス、内部統制、内部監査、不正対策、業務プロセス改善、リスクマネジメント、コンプライアンス、レギュレーション(規制)対応など多岐にわたる。 金融、製造業、サービス、メディア、不動産、ホテル、鉄道、エンタテインメントなど、幅広い業界に対してオペレーショナル・リスク・サービスを提供した実績を有する。 【IR(統合型リゾート)ビジネス・プラクティス】 IRビジネスに係るプロジェクトの業務責任者を多数務め、IRビジネス参入を検討する企業だけでなく、国や地方自治体に対するサポートも手がける。 世界のIR産業(カジノ産業)、IR法規制、背面調査、RFP/RFC対応、IRビジネス・リスクなどの分野を専門としている。 IRビジネスに関係の深いエンタテインメント、メディア、不動産、ホテル等でのコンサルティング業務経験を多数有する。 【著書等】 『図解 ひとめでわかる内部統制 第3版』(東洋経済新報社)、『図解 一番はじめに読む内部監査の本 第2版』(共著,東洋経済新報社)、『リスクマネジメントのプロセスと実務』(共著、LexisNexis)、『不動産[賃貸]事業のためのマネジメント・ハンドブック』(共著、プログレス)、『カジノ産業の本質』(監訳、日経BP社)など多数。