Posted: 14 May. 2020

デジタルを徹底活用した新たな経済成長モデル

大量生産・大量消費のリニア型経済モデルの終焉

近年、海洋プラスチックごみや気候変動など、地球規模の環境問題に対する意識の高まり、さらには、新興国を中心とした将来の経済発展に起因する資源制約リスクへの懸念の深まりを受けて、サーキュラーエコノミー(循環型経済、以下“CE”)への関心が高まっている。これは、CEが、狭義の資源循環の考え方を示す3R(リデュース、リユース、リサイクル)の概念を超えて、デジタル技術を駆使してビジネスモデルや社会システムを変革し、顧客、社会に対して、新しい提供価値を創造する経済成長モデルとの期待があるからだ。

従来の大量生産・大量消費の経済成長モデルは、そのモノや価値提供の流れが供給者から消費者へ一方通行であることから直線型(リニア型)と呼ばれる。これはすでに破綻寸前であり、今、まさに転換期を迎えている。これまで、事業者は、原材料を大量に調達し、大規模な生産設備で品質の良いものを安く、大量に供給することで市場シェアを獲得するという、製品の「売り切り」のビジネスモデルで成長してきた。しかし、製品のコモディティ(汎用品)化が急速に進展する中、価格以外の機能、品質で差別化を図ることが難しくなっており、多くの企業がビジネスモデルの転換を求められている。

 

サーキュラー型のビジネスモデルによる提供価値

CEのビジネスモデルでは、製品そのものの価値に加えて、製品を通じて得られる提供価値の質・量の向上に注目している。このため、ビジネスのあり方そのものを大きく変革する必要があるが、モノからコトへ、所有から利用へ、という消費者の購買意識の変化への対応にもつながるため、あらゆる事業者にとって喫緊の課題となっている。事業者は、製品を製造、販売した後、利用段階でも、デジタル技術(IoT、AI、アナリティクスなど)を活用して、製品のサービス化(Product as a Service: PaaS)などで提供価値を高めたり、使用済み製品の回収、修理、再資源化までを一体的に管理することで資源効率性を高めたりと、ライフタイム全体で製品価値を最大限に高めることができる。つまり、バリューチェーン上のあらゆるプロセスにおいて、新たな価値を提供する機会を自ら創り出し、持続的成長を実現するのだ(図参照)。

 

サーキュラーエコノミーとまちづくり

CEの本質は、デジタル技術の徹底活用による提供価値の質・量の向上であり、この点でスマートシティのコンセプトとも整合しており、今後、都市のビジョン策定においては必須のコンセプトとなる。実際、オランダのアムステルダムでは、自らのまちづくり戦略にCEのコンセプトを融合させ、独自の都市ビジョン「Circular Amsterdam」を打ち出している。アムステルダムは、世界で初めて「サーキュラー型スマートシティ」を宣言した都市で、域内外のステークホルダー(民間企業、研究機関、市民団体、環境NGOなど)と連携を図りながら、スマートモビリティ、廃棄物の再資源化、再生可能エネルギー、雨水の再利用、研究開発など、多様なプロジェクトを展開している。

都市の将来ビジョンを策定する際、CEのコンセプトを組み入れることで、目指すべき持続的都市の将来像をより具体的に描くことができる。当該都市が持つ、有形・無形の資産をフル活用し、関連するステークホルダーとの連携を通じて、そのポテンシャルを最大限に引き出すことができる。これを実現するためには、明確なCEビジョンを策定することと、それに基づいてデジタルトランスフォーメーション(DX)を実行することが必須要素であり、CE、DXを戦略的にデザインし、構築、実装していくことが今、まさに求められている。

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※本稿は2019年10月に執筆しています

 

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執筆者

高橋 信吾/Shingo Takahashi

高橋 信吾/Shingo Takahashi

デロイト トーマツ グループ シニアマネジャー

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 Growthユニット所属。気候変動、資源循環、生物多様性など、サスティナビリティ領域での調査研究及びコンサルティング業務に20年以上従事する。消費財、自動車、官公庁など、様々なクライアントに対する戦略案件での業務実績を持つ。サーキュラーエコノミー、カーボンマネジメント等の分野を得意とする。 ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)資源管理・環境学修士。