Posted: Dec 12, 2019

FC今治オーナー岡田 武史氏 スペシャルインタビュー

デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)は、愛媛県今治市のサッカークラブであるFC今治のトップパートナー/ソーシャルインパクトパートナーとして2015年のRe:STARTから応援しています。

デロイト トーマツ グループの特任上級顧問でもあるFC今治オーナーの岡田武史氏に、5年間の歩みとFC今治そしてスポーツの未来への可能性について伺いました。

 

 

―FC今治をRe:Startしようと決意した時に描いていたビジョンはどのようなものだったのでしょうか?

最初に描いていたビジョンなどはなかったのです。

日本のサッカーが強くなるためには、主体的にプレーできる自立した選手が必要だと思っていました。そのためには、16歳までは自由に育てて、それから戦術を教えるという今のスタイルから、守破離的に型を16歳までに教えてその後を自由にさせるような教え方をすれば、ひょっとしたら主体的に自分でプレーできるヨーロッパのような選手が育つのではないか、それを試してみたいと。

そうすると、結果は10年後に出来るけれども、育成から全てを持たなければできない。ただただ、そういうサッカーチームが持ちたいという想いだけだったんです。

―今治に来て、現在では地方創生など社会課題にも取り組まれています。こうした活動を始めるきっかけは何だったのでしょうか?

いざ今治に家を借りて住んでみたら、市街の中心地であるドンドビ交差点に更地はある、商店街には人がほとんど歩いていない、これは大変だと感じました。

そこで一緒に元気になる方法はないかと、地方創生的なことを始め出し、どうせやるならば「今の社会を変えていきたい」という自分の原点にある想いにつながる活動にしたいな、と思ったんです。

 

自ら街に出ていくと、色々なことに関わらずにはいられなくなりました。それで、「孫の手活動」として地域のおじいちゃん、おばあちゃんのお困りごとを育成の子供たちとコーチでお手伝いし始めたり、FC今治のアドバイザリーボードメンバーを教授とした「バリチャレンジユニバーシティ」を開催したり、と様々な活動が動き出しました。

 

―デロイト トーマツ コンサルティング(以下DTC)とタッグを組んだきっかけは何だったのでしょうか?

「一緒に夢を実現しませんか?」という点に共感をしていただけたことからです。当時はコンサルティング業界のこともよく分かっていませんでしたし、DTCの顧問をやらせていただくということにも「何の役に立てるんだろう?」と思っていました。

ただ、現在の企業理念でもある「物の豊かさよりも、心の豊かさ」という点において、数字で表せるものよりも表せないもの、目に見えない資本を大切にしないと社会が行き詰まることが懸念される今、大きな会社の経営者のマインドを変えていかなければならない。そんなに簡単なことではないけれども、コンサルならマインドを変えていくことはできるかもしれない、と思っていました。

 

社内の会議に出させてもらって得た気付きは会社を経営していく上でも勉強になったし、そこで出会ったネットワークで会社の基盤となるものを作っていただいたことは大きかったです。それがあったから会社も成長できたし、それがなければもしかしたら今のFC今治はなかったかもしれません。

また、FC今治が無名の時代からサポートしてくださったことが信頼につながり、「DTCが付いているなら」とサポートしてくれる企業が増えていきました。

 

単なるユニフォームへの露出では恩返しできないという気持ちがきっかけになり、どうすればいいかと必死になって考え工夫していくことで、他のクラブにはないいろんなことをやるようにもなりました。海外に6人のコーチを送ったり、教育事業をやったり。

 

どんなことがあっても絶対お返ししてやるぞという気持ち、一番苦しい時に支えてくれた方たちへの気持ちは決して忘れません。

Jリーグに昇格して成功した姿を見てもらいたい。その想いを大切にしています。

 

―この5年間を振り返って、大きな転機となったありがとうサービス. 夢スタジアム®が完成した時はどんなお気持ちでしたか?

スタジアムを建設するところまでも苦労がありましたが、次はどう満員にするかという問題があります。スポーツビジネスはスタジアムを満員にするところから始まりますから。プロジェクトチームを組んで議論を重ねて、これまで運動公園に来てくれていた2000人のお客さんのインサイトを分析しました。おそらくサッカーを純粋に観たくて来てくれているのは、200〜300人程度。街に行ったら閑散としていて人にも会わないのに、なぜかこのサッカー場は盛り上がっていて賑やかでわくわくする。「あなた先日も来ていましたね」と新しい絆ができる、だから来てくれているんじゃないかと考えました。そして、それを我々が提示しないといけないんじゃないかと。

スポーツビジネスという観点からも日本では独自の展開が必要だ、という考え方の元でフットボールパークという構想を決めました。サッカーを知らない人が来ても楽しめる。試合を観ないでも、試合に負けて悔しくても「楽しかった」言って帰ってもらえるところを作ろう、と。スタジアムビジョンである「ここにいる全ての人が、心震える感動、心踊るワクワク感、心温まる絆を感じられるスタジアム」。これに合致することは全部やろうと決めました。

 

それでもこけら落としまでは不安は拭えず、前日のギリギリまで自ら電話帳を調べて今治市内のいろんな施設に「岡田と申しますが・・・」と来てくださいと電話をかけ続けました。

当日には、試合開始の3時間前から人が300人くらい並んでくれたんです。「これは行けるぞ」と。最終的には5200人満杯。そのことで頭がいっぱいで、正直当日の試合結果は覚えていないくらいそれが嬉しくて(笑)。

あの時の感動が今も僕らを引っ張ってくれていますよね。

―今治という街の未来には、どんなことを期待しますか?

今治は16万の街で、年々人口が減っていて、例に漏れず高齢化も進んでいます。でもこの街に来たらみんなが幸せになれる、そうなればいいですよね。

ここに来たら人間として本質的な幸せを味わえますよ、というのが理想です。

幸せとは、別にいい関係、苦労がないということだけではありません。達成感があり、夢中になるものがある、要は何か苦しいものを乗り越えた時の達成感が必要です。

 

いい人間関係があって、達成感ややりがいがあるような街、今治に行ってみようかな、住んでみようかな、とみんなが思うような街に。その中心にFC今治があればいいな、と思っています。

 

―スポーツがこれからの社会に果たせる役割についてどう思われますか?

もともと僕は、スポーツは国境を越えられると言っていました。国境とは別にサッカー仲間というボーダーを作って世界平和に貢献できるというのは事実だと思うし、スポーツ仲間という新しい絆を作れます。

けれどここ(今治)で活動をするようになって、スポーツはもっと人と人をつなげていくインフラになれるんだと思えるようになりました。お年寄りに「今までは散歩に行くくらいで他に何もすることがなかった。けれどFC今治がきてから毎回応援するのが生きがいになった」とよく言われるんです。

AIやIoTがどんどん進化して、シンギュラリティとか人間の存在自体が必要なくなってしまうかのような、AIがすべてを判断するような時代になるでしょう。

全てにおいて人間が一切判断しない時が来る。それが人間かと問われる時がくる。それがシンギュラリティかもしれないですよね。

その時に人間を取り戻せるのがスポーツであり、芸術、文化はそういうものではないかと思っているんです。これから前例のない、つまりロールモデルがいない社会になった時に、一番必要とされるものがスポーツなのではないかと。唯一みんなを繋げて人間性を残してゆく、ホモ・サピエンスが生き残るための武器になる。そのレジスタンス基地をここ今治に作りたいと妄想しています。

 

―岡田さんご自身が幸せを感じる瞬間はどんな時ですか?

お客さんから試合が終わったときに「楽しかった」「また来るよ」という声を聞いた時も嬉しいですが、一つ印象に残っている瞬間があります。

2018年、Jリーグに上がれないことが最終戦で決まって、絶対罵声を浴びると思っていたんです。その日は社長と監督が挨拶をする予定でしたが、自分が出ることにしました。罵声を浴びるのは得意ですから(笑)。

 

そしたら罵声を浴びるどころか、今までは「上がれよ」だったのが「来年は上がるぞ!」と自分のこととして言ってくださるようになっていて、ある企業がスポンサー料を上げるから選手を増強してほしいと言ってくださったり、代表電話に「スポンサーをやりたい」とアプローチをいただいたり。なんと寄付したいと1千万円を持ってきてくれた女性もいました。「ありがたい」を通り越した気持ちで、これでやらなかったら俺は男じゃないと。あれでものすごく燃えましたね。

この人たちが笑顔になったら、僕が最高に幸せを感じる瞬間になる時なだと思いました。

 

―最後に、FC今治としてこれからデロイト トーマツに期待することをお聞かせください

FC今治が今目指している次のステージに進んでも、スポンサーとしてのお金だけじゃない人的な交流も大切にしていきたいです。大切な時に、最初に支えてくれた人とは、ずっとこれからも繋がっていきたいと思っています。

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