AI投資の最大化とガバナンスを両立させるDataiku×デロイトのグローバルパートナーシップ ブックマークが追加されました
2013年にフランス・パリで創業したユニバーサルAIプラットフォーム企業のDataikuは、大手企業を中心に約600社の顧客を持つなど急成長している。デロイトはグローバルで同社と緊密な関係を構築し、数多くのユースケースを創出してきた。Dataiku Japan株式会社の佐藤 豊氏、桂井 良太氏、松島 七衣氏の3人と、デロイト トーマツの首藤 佑樹、宍倉 剛、染谷 豊浩が、AI投資によるスピーディな価値創出やAIガバナンスのあり方などついて議論を深めた。
*Dataikuの特徴が分かる3分デモ動画
Dataikuは、AI活用に必要なデータの取り込みからデータ準備、可視化、生成AIの利用、モデル開発、DataOps(データオプス)、モデルの監視と運用(MLOps)、ガバナンスまでをエンド・トゥ・エンドでカバーするプラットフォームを提供する。コーディングのスキルがなくてもノーコード/ローコードで扱えるため、現場のビジネスユーザーからデータサイエンティストなどの専門家まで、同じプラットフォームでAIとデータを共同で活用できるのが大きな特徴だ。
佐藤 もともとデータサイエンティストやデータエンジニアのリソースが限られているなかで、そうした専門家たちの生産性をどう上げるかという課題がありました。その課題を解決するため、データパイプラインに必要な各種機能をシングルプラットフォームでカバーするDataikuを導入する企業が多かったのですが、近年増えてきたのが、AI人材不足というタレントギャップをDataikuで埋めたいというニーズです。
Dataiku Japan
取締役社長 カントリーマネージャー 佐藤 豊氏
Dataikuはノーコード/ローコードでも使えますので、現場のビジネスユーザーがExcelやBI(ビジネスインテリジェンス)ツールの代わりに、日々の業務で利用できます。業務知識は豊富だけれど、これまでAIを使っていなかった人たちをAI人材としてアップスキリングするのに最適なツールだということで、需要が高まっています。
それに加えて、AIを活用する人材が増えてくると、モデルの開発だけでなく運用の効率性をどう高めるかという課題が顕在化してきます。CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリーとデプロイ)を含めたOpsの領域でDataikuの需要が高まっているというのが、グローバルでの現状です。
桂井 当然ながら生成AIに関する引き合いも増えています。例えば、「Dataikuでは、生成AIの回答精度を高めるRAG(検索拡張生成)は使えるのか」といった具体的な問い合わせが多いですね。
Dataiku Japan
パートナーアライアンス営業部
部門長 桂井 良太氏
松島 Dataikuは200社ものForbes Global 2000企業でも採用されており、Dataikuのプラットフォーム上で何百、何千というAIプロジェクトを走らせている企業もあります。日本でも導入は増えているのですが、ユースケースが定まらないという課題を持つケースが多く、プロジェクトの数は欧米に比べるとかなり少ないという事実は否めません。
首藤 変革につながるようなユースケースを生み出していこうとすると、生成AIだけでなく、従来からある認識系や推論系のAIを組み合わせていく必要があります。
つまるところ、社内にあるデータをいかに生成AIでつなげて、大きな仕組みをつくり上げるのかということが問われていて、日本ではこれからそのステージに入ろうとしているところです。
デロイト トーマツ コンサルティング
Chief Growth Officer(戦略・イノベーション・アライアンス統括)
テクノロジー・メディア・通信 アジアパシフィックリーダー
執行役員 首藤 佑樹
宍倉 Dataikuのようなプラットフォームを導入すれば、短期間でモデルを1,000でも2,000でもつくることは可能です。しかし、同じペースでユースケースをつくれるかというと、そこはやはりタレント不足という問題があります。
業種ごとのビジネスの特性や業務プロセスをよく把握した上でユースケースを創出するのが、われわれの本分でもありますから、優れたプラットフォームを活用しながら企業に伴走し、ユースケースを生み出せるタレントを増やしていくことに貢献したいと考えています。
染谷 実際、そういう相談が増えています。かつては、「われわれのデータを使って高度な分析をしてほしい」「わが社が使えるAIモデルを開発してほしい」といった相談が多かったのですが、現在は「うちの社内プロジェクトに伴走しながら、AI人材を育ててほしい」というリクエストの方が圧倒的に多くなっています。
また少し前まではDX推進室といったCoE(センター・オブ・エクセレンス)の人材育成を依頼されるケースが大半でしたが、それだと変革をスケールさせてROI(投資対効果)を高めるのは難しいということに多くの企業が気付いてきました。ですから今は、LOB(ライン・オブ・ビジネス)の人たちと一緒にプロジェクトを進めることが増えています。
AIを日常の業務に組み込む「Everyday AI」をコンセプトとするDataikuでは、アプリケーションと大規模言語モデル(LLM)をつなぐ中間層のソリューションとして「LLMメッシュ」を提供している。これは、エンタープライズ(大規模組織)対応の生成AIアプリケーションの開発・運用を可能にするものだ。
松島 LLMメッシュは、生成AIアプリの共通のバックボーンとなるものです。OpenAIやMicrosoft Azure、AWS(Amazon Web Service)、Google Cloud、AnthropicなどのLLMサービスとビジネスアプリの疎結合、LLMサービスへのセキュアなゲートウェイの提供と監査証跡の保持、データセットごとに使用できるLLMの定義と安全な権限管理、組織全体での適切なコスト管理といった役割を担います。
LLMとRAGを組み合わせて、組織固有のデータを活用した生成AIチャットボットを簡単に構築できるDataiku Answersも搭載しています。
Dataiku Japan
セールスエンジニアリング部
部門長 松島 七衣 氏
佐藤 エンタープライズ対応のAIプラットフォームとして、われわれが強く意識しているのが、安心・安全に使えるデータガバナンスとAIガバナンスです。PII(個人を特定できる情報)のスクリーニング、アプリケーションフロー全体の監査などのコンポーネントがLLMメッシュに搭載されていますし、プラットフォームそのものがEU(欧州連合)のGDPR(一般データ保護規則)に標準対応しています。
また、先頃EUにおいてAIシステムを規制するAI法が成立したことから、当社ではAI法対応ソリューション、コンプライアンスをサポートするAIガバナンス専門家サービス、高度なガバナンスカスタマイズ機能の提供などによって、グローバル企業の責任あるAI活用を支援する「EU AI法サポートプログラム」をスタートさせました。
染谷 われわれデロイトでは、グローバルでTrustworthy AI(信頼できるAI)というビジョンを掲げてきました。自動車と同じで、文明の利器は便利であればあるほど、使い方次第でリスクを伴います。確固としたガバナンスの下にAIを開発・運用しなければ、自社だけでなく社会にリスクを及ぼすことになります。
AIガバナンスにはデータプライバシーだけでなく、正確性、透明性、責任の所在などさまざまな側面があります。エンタープライズレベルでのガバナンスを担保できる御社と共にクライアントに向き合うことで、Trustworthy AIのビジョンに基づいて、安心・安全なAIを実装していけると考えています。
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー
デロイトアナリティクス
パートナー 染谷 豊浩
佐藤 当社の創業メンバーの1人でCEOを務めるFlorian Douetteauは、大学で数学と哲学を学んでおり、倫理学にも深い知識を持っています。ニューヨークに本社を移した今も主にパリを拠点にしており、GDPRやAI法に迅速かつ包括的に対応するソリューションを提供できるのも、当社が欧州出自であることが深く影響しています。
染谷 2024年5月に成立したAI法に関しては、今後2年かけて段階的に適用される見通しです。GDPRと同様に世界的な規制のモデルとなる可能性があり、EU域内で製品・サービスを提供している世界中の企業が対象となります。AIシステムのリスクに応じて、運営事業者に課す義務や罰則が定められており、罰金は最大で3,500万ユーロ(約59億円)または全世界売上高の7%のいずれか高い方と高額です。
日本企業も急ぎ対応が必要ですが、御社と当社とが一緒になって貢献できる部分はすごく大きいと思います。
デロイトは2024年にDataikuの「Global Partner of the Year」を受賞するなど、両者はグローバルで緊密な関係を築いている。デロイトの専門的な知見とDataikuの強力なプラットフォームを融合させた支援を広範な産業に対して行っており、日本でも今後、その動きを加速させていく。
首藤 Dataikuとデロイトは世界中で新たなユースケースを次々と生み出しています。例えば、デロイトカナダはDataikuのプラットフォームを活用して、電力グリッド(送配電網)のデジタルツインを構築しました。発電から電力消費までのバリューチェーン全体のデータを統合し、仮想グリッド上でAIが電力需要を予測、需給バランスをコントロールするシステムです。
EV(電気自動車)の普及などによって電力需要が高まる一方、気象状況に左右される太陽光発電など再生可能エネルギーの導入量が増加していることで、需給バランスのコントロールは複雑さを増しています。また、電力バリューチェーンのデータは、オンプレミスとクラウドを含めてさまざまなシステムに散在しています。これをDataikuのセキュアなプラットフォームで統合し、デジタルツインを構築しているのです。ある地域で新たな工場や再エネ発電設備ができた場合、需給がどう変化するかといったことも、仮想グリッド上で容易にシミュレーションできます。
このように、さまざまな産業で応用可能なユースケースが数多くありますので、日本のクライアントにも積極的に紹介していきたいと思っています。
佐藤 化学メーカーのカネカさんは、散在している製造データをDataikuのプラットフォームに吸い上げ、AIモデルを構築しました。このモデルを他のシステムと連携させ、業務に組み込むことでコストを削減すると同時に、生産量を大きく引き上げる成果を出しています。こういった事例が日本でも増えているのですが、海外のユースケースを紹介し、それを日本企業向けにアレンジして実装するとなると、より多くのリソースや知見が必要となりますが、ぜひ御社との協業を深め、日本でのクライアント支援を強化していきたいですね。
桂井 当社ではAIへの投資によるリターンをROAIと呼んでいますが、これをどう高めていくかが企業にとって共通の課題となっています。ムーンショットと言われるような壮大なユースケースで大きなリターンを狙うアプローチもありますが、リスクが大きいですし、達成するまでに時間がかかります。一つひとつは小さなユースケースであっても、その数をどんどん増やしていくことでROAIを引き上げるのが着実なアプローチです。産業や業務領域ごとに深い知見を持つエキスパートを多数抱える御社と協業することで、顧客企業のROAIを高めることができると考えています。
宍倉 部署ごとにサイロ化しているデータ、ばらばらな分析ツールやプラットフォームをDataikuで統一する、つまりプラットフォームのモダナイゼーションを行うだけでROAIが大きく変わる可能性があります。
また、小さなユースケースをどんどん増やすという点では、Dataikuには小売業向けの需要予測や製造業向けの予知保全といった、業界ごと、業務ごとのテンプレートが用意されていますから、それを活用することでスピーディにROAIを上げていく方法もあります。
デロイト トーマツ コンサルティング
AI&Data ユニット
執行役員 宍倉 剛
桂井 テンプレートは海外のユースケースを基にしたものが多いので、それを日本企業向けにカスタマイズする部分でも、御社に協力いただけるとありがたいです。
また、御社がお持ちのベストプラクティスをテンプレート化してDataikuに実装しているケースもすでにありますので、これをもっと増やしていくことで顧客企業の変革を後押しできると思います。
佐藤 重要なのはAIプラットフォームを導入するだけでなく、変革のアクションにつなげ、カスタマーサクセスをもたらすことです。企業への啓蒙活動を含めて、御社との協業に大変期待しています。
首藤 データパイプラインをエンド・トゥ・エンドでカバーしている御社は、クライアントに提案する変革のリアリティを高めやすいという点で、われわれコンサルタントにとっても非常に魅力的です。協業を大いに加速させていきましょう。
Dataiku Japan
取締役社長 カントリーマネージャー 佐藤 豊氏
Dataiku Japan
パートナーアライアンス営業部
部門長 桂井 良太氏
Dataiku Japan
セールスエンジニアリング部
部門長 松島 七衣氏
デロイト トーマツ コンサルティング
Chief Growth Officer(戦略・イノベーション・アライアンス統括)
テクノロジー・メディア・通信 アジアパシフィックリーダー
執行役員 首藤 佑樹
デロイト トーマツ コンサルティング
AI&Data ユニット
執行役員 宍倉 剛
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー
デロイトアナリティクス
パートナー 染谷 豊浩
テクノロジー・メディア・通信インダストリー アジアパシフィックリーダー メディア/総合電機/半導体/システムインテグレータ/ソフトウェア等の業界を主に担当し、事業戦略策定、組織改革、デジタルトランスフォーメーション等のプロジェクト実績が豊富である。Deloitte USに4年間出向した経験があり、日系企業の支援をグローバルに行ってきた。 関連するサービス・インダストリー ・ テクノロジー・メディア・通信 ・ 電機・ハイテク >> オンラインフォームよりお問い合わせ
AIスタートアップ、国内系コンサルティング会社を経て現職。 先進技術を用いた新規ビジネス創出、業務の変革等、企業のデータドリブン・トランスフォーメーション実現に従事。データサイエンス領域における戦略策定・業務変革、組織設計・人材開発に強みを持つ。 『ビッグデータ総覧』日経BP社等、著書・寄稿多数。 関連サービス ・ストラテジー・アナリティクス・M&A >> オンラインフォームよりお問い合わせ
25年以上に渡り、統計分析や機械学習、AI導入等の多数のデータ活用業務に従事。 同時に数理モデル構築やディシジョンマネジメント領域でのソフトウエア開発、新規事業やAnalytics組織の立上げなどの経験を通じて数多くの顧客企業のビジネスを改善。 リスク管理、AML/CFT、不正検知、与信管理、債権回収、内部統制・内部監査、マーケティングなどの幅広い分野でAnalyticsプロジェクトをリードしている。