Posted: 24 Jun. 2024 10 min. read

「エンタープライズAI」が切り拓く可能性 オラクルとデロイトが語る日本企業の未来

オラクルが日本で大胆な投資を決定した。その背景には、労働力不足という社会課題と、データ主権・ソブリンクラウドへの高まる需要がある。協業を通じてこれまで数多くのユースケースを生み出してきたオラクルとデロイトは、日本企業の生産性向上やイノベーションに向け、提供価値をどう進化させていくのか。日本オラクルの竹爪 慎治氏と首藤 聡一郎氏、デロイト トーマツ コンサルティング(以下、DTC)の首藤 佑樹と岡部 武の4者の視点が交わる先に、そのビジョンが浮かび上がる。

 

“with AI”の新しい働き方をデザインし、労働力減少を乗り切る
 

オラクルは2024年からの10年間、日本でAIとクラウドコンピューティングに80億ドル(約1兆2000億円)以上を投資する計画を明らかにした。これにより、国内の大手企業や政府・行政機関のデータ主権の実現とソブリンクラウド活用が加速されそうだ。

 

竹爪 これからの10年、20年を見据えたときに、日本では間違いなく労働力人口が減少します。

この社会的課題を乗り越えるには、ITやAIを積極的に活用して生産性を上げていかなくてはなりません。

一方、国内のデータを安心・安全な国内クラウド環境で活用するデータ主権やソブリンクラウドへの需要が各国で高まっています。この2つの大きなニーズに応えていくために、私たちは日本での大きな投資を決断しました。

東京と大阪にリージョンがあるパブリッククラウドのインフラをさらに強化すると同時に、運用・サポートのエンジニアリングチームを大幅に拡充します。

 

日本オラクル
専務執行役員 クラウド事業統括
竹爪 慎治氏

 

首藤(DTC) 米国ですと人の仕事をAIに置き換えて、従業員数を調整する(減少させる)ことでROI(投資収益率)を上げるという発想になるでしょうが、日本の場合はそもそも労働力が足りなくなるわけですから、人とAIが協働しながら生産性を上げていかなければなりません。

そのときに、AIに何を任せて、人間は何をするのか。人間にしかできない仕事を定義して、“with AI”の新しい働き方をデザインすることが日本では重要なテーマになると思います。

 

首藤(日本オラクル) おっしゃる通りですね。間接業務はできるだけITやAIで回せるようにして、人間は付加価値を創造する仕事にシフトすべきだと思います。そのときにカギになるのが、データ活用です。

世界的に見て、日本人の情報活用のリテラシーは高いと思います。プライベートでは、スマートフォン一つでいろいろ調べて計画を立てたり、人との交流を深めたり、日常生活を効率よく快適に過ごしたりしています。

ところが、ビジネスの場で、その情報リテラシーの高さを十分に発揮できているかというと、必ずしもそうではない。それは、プライベートに比べて、職場でのデータ活用にさまざまな障壁があるからです。日々の業務で使うソフトウェアのUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザー体験)がその一つです。スマホに比べるとはるかに複雑で、使いこなすにはそれなりのスキルが必要です。

生成AIは全ての業務ソフトのUI/UXを一変させる力を秘めています。自然言語でプロンプトを入力したり、話しかけたりするだけでデータを活用できるようになれば、生産性が飛躍的に高まる可能性があります。

 

日本オラクル
執行役員 バイスプレジデント 事業戦略統括
首藤 聡一郎氏

 

竹爪 AIに限らず、企業が使うテクノロジーは安全性と信頼性が厳しく問われます。意図せず情報が漏れるようなことがあってはならないし、間違った情報が紛れ込んでいたら意思決定で大きなミスを犯すことになりかねません。当然ながら、コストの面でも安心して使えるものでなくてはなりません。

そうした要件を満たしながら、安全かつ効率的にAIを利用し、生産性向上やイノベーションにつなげられるのが、オラクルの「エンタープライズAI」です。


 

ビジネスのコア業務で先端技術を存分に使える「エンタープライズAI」

 

オラクルは、「Oracle Cloud」として展開しているIaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)の全ての層、さらにはデータベースにも、ビジネス用途に適したAIを組み入れる。

 

首藤(日本オラクル) 私たちはこれまでも、ビジネスのコア業務で先端技術を使っていただきたいと考え、そのためのインフラやツールを提供してきました。AIをコア業務で存分に使っていただけるのが、オラクルのエンタープライズAIです。

企業のコア業務では、必然的に自社データや顧客データを活用することになります。機密情報を守る安全性、堅牢性が欠かせないわけですが、実はオラクルという社名は創業者が参画していたCIA(米国中央情報局)のあるプロジェクトのコードネームにちなんだものです。当時のオラクルは、国家の機密データを守ることを最重要課題とした製品を開発し、民生品を出すまでは政府機関や安全保障に関わる組織が顧客でした。

そうやってセキュリティ技術を磨き上げてきた会社ですので、エンタープライズAIにおいても、最高レベルの機密性、安全性が担保された中でデータとAIを活用することができます。
 

竹爪 企業によってAIの活用の仕方はさまざまですが、私たちのエンタープライズAIは多様なニーズに対応することができます。例えば、汎用性の高いLLM(大規模言語モデル)を自分たちの業務に合わせてファインチューンしたい場合は、私たちのIaaSのGPU(画像処理半導体)クラスターを使って、高速かつ効率的にモデルのトレーニングを実行できます。

PaaS上で汎用型LLMをそのまま使うことができますし、RAG(検索拡張生成)を実装していますので、LLMに独自のデータソースからの情報を組み合わせることにより、生成AIの回答精度を上げたり、専門性を高めたりすることも可能です。AIを組み込んだ独自の業務アプリケーションを開発するプラットフォームとしても利用できます。

また、人事系とCX(顧客体験)系のSaaSアプリケーションには、すでに生成AIを組み込んでおり、ERP(統合基幹業務システム)やSCM(サプライチェーン管理)など、他のアプリケーションにも標準機能として順次搭載していく予定です。

 

岡部 デロイトは、オラクルの年次カンファレンス「Oracle Cloud World(OCW)2024」のグローバルスポンサーだったこともあり、東京で開催されたOCWに私も参加しましたが、例年以上に参加者の熱気を感じました。やはり生成AI関連の新たなサービスが発表されたことが、大きな要因だと思います。

セキュアにデータを活用できる点をはじめとして、オラクルのインフラやアプリケーションへの信頼がとても高いことを私たちはよく理解していますが、ここにきてユーザーからの期待が一段と高まっていると感じます。
 

首藤(DTC) ユーザーの立場から言うと、生成AIが登場してから、議事録の作成や文章の要約などに始まり、様々な業務でPoCを進めてきて、この技術が秘めているポテンシャルの大きさはだいたい分かってきた。これから投資を拡大して、より複雑な意思決定や業務、製品・サービスに生成AIを組み込んでいき、大きな効果を引き出していこうというフェーズに変わりつつあります。

そうしたユーザー側のトレンドにちょうど合致したタイミングで、自社の事業や業務に合わせてさまざまな形で生成AIを活用できるOCI生成AIや各種AIアプリケーションを御社がリリースされたわけですから、期待が高まるのも当然だと思います。

 

デロイト トーマツ コンサルティング
Chief Growth Officer(戦略・イノベーション・アライアンス統括)
テクノロジー・メディア・通信 アジアパシフィックリーダー
執行役員
首藤 佑樹

 

 

オラクルとデロイトの協業を加速させやすい環境になってきた
 

グローバルでのオラクルとデロイトの協業は、2024年に30周年を迎えた。生産性向上やイノベーションにつながる数々のユースケースを生み出してきた両者だが、企業のコア業務におけるAI活用が本格化しようとするなか、協業体制をどう進化させていくのだろうか。

 

竹爪 オラクルはデータベースを軸に情報活用を追求してきた会社です。多変量解析、機械学習、深層学習など、これまでも情報活用に必要な先端技術を提供してきましたし、生成AIもその延長線上にある技術と捉えています。

私たちはこれまで通り、安心・安全な環境の中で、高いコストパフォーマンスで情報活用できるサービスやソリューションをお客様に提供していきます。それを使ってどう生産性を上げていくか、どんな新しい価値を生み出していくかといったところで、これまで30年間、デロイトと協業してきました。その軸は変えずに、生成AIという新しい技術を使った、新しいユースケースを御社と一緒にどんどん生み出していきたいと考えています。
 

首藤(日本オラクル) 特にデロイトとの協業を深めたい領域が、大きく2つあります。

新しいテクノロジーや製品が出てくると、多くの企業がまずPoC(概念実証)に着手します。それは当然のことなのですが、実証すべきコンセプトが何なのかを明確にしないまま、技術や製品だけを試してみようとする企業が少なくありません。それでは、大きな成果は望めません。

自社の業務において解くべき課題は何なのか、事業においてどのようなビジョンを達成したいのかを導き出して、それを解決策に落とし込んでいく。そこで初めて、どういうテクノロジーを使うかという話になるはずです。テクノロジー導入の前工程に当たる課題やビジョンの特定と解決策の設計の部分で、御社との協業をより深めたい。それが1つ目です。

もう1つは、チェンジマネジメントの領域です。As Is(現状)からTo Be(あるべき姿)へと変革するには、意思決定プロセスやオペレーションの仕組み、組織構造などを変革するチェンジマネジメントが必要です。それがないと、オラクルのテクノロジーが持つパワーを引き出すことができません。チェンジマネジメントの領域では、ぜひ御社の支援を期待したいと思っています。
 

岡部 われわれとしては、3つの柱で御社との協業を一層深めたいと考えています。



デロイト トーマツ コンサルティング
Enterprise Transformation & Oracleリーダー
執行役員
岡部 武
 

1つ目は、ユースケースのアセット化です。当社には各インダストリーのドメイン知識とコンサルティング経験が豊富なプロフェッショナルが大勢います。インダストリーに特化した変革のユースケースをどんどん生み出し、それをテンプレート化してオラクルのプラットフォーム上で提供することで、より多くの企業が活用できるようにしていきたい。そうすることで、日本の産業界全体の変革のスピードを上げられると考えています。

2つ目は、先ほど首藤さん(日本オラクル)がおっしゃったチェンジマネジメントです。AIを使った高度なデータ活用の仕組みを整えても、データドリブンな意思決定やオペレーションができないと、ROI(投資収益率)は上がりませんし、企業変革につながりません。場合によって組織文化を変えることも必要ですが、われわれはそこまで踏み込んでチェンジマネジメントを実現します。

そして3つ目は、クロスインダストリーでの価値創出です。例えば、サプライチェーンのトレーサビリティ、スコープ3までを含むGHG(温室効果ガス)の削減など、企業や業界の枠を超えたデータ連携が必要な課題が増えています。そうした大きな課題ほど、解決した場合の価値創出が大きくなります。そして、セキュアなデータ連携を担保するオラクルの技術が、より優位性を発揮できる領域でもあります。

当社の各インダストリーを専門とするプロフェッショナルと、インダストリー横断でテクノロジーやアライアンスなどのコンサルティングを提供するチーム、そして御社が協業することで、クロスインダストリーによる価値創出の機会が大きく広がります。

 

首藤(DTC) 企業同士、あるいは自治体同士をつなげてエコシステムを形成し、経済や社会の変革につなげていくのは、当社が最も得意とするところでもあります。

そうしたエコシステムを形成する上でも、データ連携基盤を含めたテクノロジーが欠かせません。御社が、国内のデータを国内で安全に活用できるソブリンクラウドの提供を強化されることは、エコシステム形成の推進力になります。デロイトとオラクルのコラボレーションを加速させやすい環境になってきたと実感しています。

 

日本オラクル
専務執行役員 クラウド事業統括
竹爪 慎治氏

 

日本オラクル
執行役員 バイスプレジデント 事業戦略統括
首藤 聡一郎氏

 

デロイト トーマツ コンサルティング
Chief Growth Officer(戦略・イノベーション・アライアンス統括)
テクノロジー・メディア・通信 アジアパシフィックリーダー
執行役員
首藤 佑樹

 

デロイト トーマツ コンサルティング
Enterprise Transformation & Oracleリーダー
執行役員
岡部 武

オラクル導入支援サービス

プロフェッショナル

首藤 佑樹/Yuki Shuto

首藤 佑樹/Yuki Shuto

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 Chief Growth Officer

テクノロジー・メディア・通信インダストリー アジアパシフィックリーダー メディア/総合電機/半導体/システムインテグレータ/ソフトウェア等の業界を主に担当し、事業戦略策定、組織改革、デジタルトランスフォーメーション等のプロジェクト実績が豊富である。Deloitte USに4年間出向した経験があり、日系企業の支援をグローバルに行ってきた。   関連するサービス・インダストリー ・ テクノロジー・メディア・通信 ・ 電機・ハイテク   >> オンラインフォームよりお問い合わせ

岡部 武/Takeshi Okabe

岡部 武/Takeshi Okabe

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 Enterprise Transformation & Oracle Unit Leader

25年以上に渡り、日本企業のプロセス変革・高度化に従事。日本市場におけるERP黎明期より、ERPを活用した基幹業務・システム変革プロジェクトを構想策定からシステム導入、保守を含むEnd to Endでのサービスを数多く提供。 近年はERPにAI、Analytics、Blockchainなどの先進テクノロジーを組み合わせた業務プロセス、意思決定の高度化プロジェクトを多く手がける。   関連するサービス・インダストリー ・Oracle   >> オンラインフォームよりお問い合わせ