調査レポート

ミレニアル・Z世代 悲観の時代で成功する鍵は「柔軟性・適応性」?

2021年 デロイト ミレニアル・Z世代年次調査日本版 COVID-19に影響を受けたミレニアル・Z世代のマインド

2021年度のミレニアル・Z世代年次調査は、世界でも日本でもCOVID-19(新型コロナウイルス)の感染がまだ拡大傾向にあった本年1月~2月に実施し、パンデミックの同世代への日常生活や社会観、また就業意識における影響を分析しています。今回の調査では、COVID-19の影響を受け、ミレニアル・Z世代が将来に対する悲観的観測を強め、組織の成功のためには「柔軟性・適応性」が必要だと感じる姿が浮き彫りになりました。

本年で10回目となるミレニアル・Z世代年次調査は、世界各国のミレニアル・Z世代約22, 928名を対象として2021年1~2月に実施しました。Z世代の最高齢が26歳となる本年は、Z世代の消費者・労働者としての影響力がますます大きくなる現状を踏まえ、当該世代の調査対象国をミレニアル世代と同範囲に拡大しました。

本稿では主な調査結果をご紹介するとともに、人事・組織課題の側面からの解釈と施策への示唆を提示します。

 

主な調査結果

日本でのパンデミックの日常生活への影響は、グローバルと比較すると小さい

政府による感染防止対策ガイドラインの遵守状況をみると、日本はミレニアルの68%、Z世代の48%が「守っている」と回答しており、グローバルの同世代よりも低い結果となっています(図1)。「公共の場でマスクをしたか」「人が集まる場所を避けたか」についても、日本の実施率はグローバルの同世代よりも低く、特に日本のZ世代(それぞれ48%、51%)は低い結果となっています。

感染防止対策の実施状況
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また、パンデミック期間中の行動として、日本はミレニアル・Z世代ともに、「通勤時間が減った」の他は、「家の片づけ・不要品の売却を行った」(それぞれ25%、18%)との回答が多く、家での生活や環境を見直したとの回答が目立ちました。一方で、「新しいスキルを習得した」(同世代とも9%)といった戦略的な自己投資を行う行動がグローバルと比較し少ないことが判明しました(図2)。

パンデミック期間中の行動
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COVID-19により将来に対する悲観を強め、変化に対応する柔軟性を重視している

今後12か月間の経済見通しをみると、日本・グローバルのミレニアル・Z世代ともに、「悪化する」との見方が年々増加しています。特に日本では、2021年度はミレニアルの54%、Z世代の51%と半数以上が「悪化する」と回答しており、悲観的な見方を強めている様子がうかがえます(図3)。

今後12か月の経済見通し
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この悲観的なマインドがベースとなり、ミレニアル・Z世代は、仕事においてもリスクを分散・低減しながら変化に対応して取り組み、一方では一つのことにコミットしたくないとの志向性を持つ傾向がみられます。本調査における「組織が成功するために必要な人材のスキルは何か?」という質問に対し、グローバル・日本のミレニアル・Z世代ともに、「柔軟性・適応性」が最も多い結果となりました(日本ミレニアル:46%、日本Z世代:41%、グローバルミレニアル:46%、グローバルZ世代:40%)(図4)。これはグローバル・日本で共通する、世代の特徴だと考えられます。

組織で成功するために必要なスキル
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その一方で、「組織が成功するために必要な人材のスキル」の2位以降の傾向はグローバルと日本で違いが見られます。グローバルでは「テクノロジーへの精通」がミレニアル(28%)、Z世代(25%)共に上位にランクインするものの、日本ではミレニアルで12%、Z世代で13%と低い傾向にあります。この結果は、パンデミックによりデジタル化が世界規模で加速化しているにも関わらず、日本においては若年層におけるデジタルトランスフォーメーションの推進基盤が脆弱であることを示唆しています。
 

企業へのロイヤリティは昨年度急降下し、本年も低水準に留まっている

本調査の結果を経年でみると、2019年から2020年(COVID-19感染拡大前)にかけ、2年以内の離職意向は経済成長の鈍化を主な理由として急降下しています。本年の2年内離職意向は微増に転じてはいるものの、元の水準には戻っていません(図5)。ワクチン接種の開始に伴い、若干の明るい見通しが出てきたものの、まだ経済回復には時間を要するとの見方が影響していると考えられます。

2年内離職意向の推移
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離職意向の理由としては、一般的には報酬面での不満や昇進・スキル開発機会の欠如等が挙げられ、昨今ではリモートワークへの未対応も一つの要因と捉えられますが、メンタルヘルスも重要な側面であると考えられます。本年の調査では、ストレスレベルが高い回答者、また、雇用主がメンタルヘルス対策を効果的に実施していないと評価する回答者の間で、離職意向率が高くなる傾向が示されました(図6)。

ストレスレベル別、雇用主のメンタルヘルスへのサポート別2年内離職意向(2021年)
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日本のミレニアル・Z世代は企業のウェルビーイング対策が不十分だと感じている

それでは、日本の企業はメンタルヘルスを含めたウェルビーイングにどこまで対処できているのでしょうか。まずは、風土に着目すると、日本では「雇用主とストレスについてオープンに話したことがない」という回答がミレニアルで70%、Z世代で65%となっており、グローバルの同世代よりも高く(図7)、日本ではストレスを隠す風土が根強く残っていることが示されます。このストレスをオープンにできる職場風土は心理的安全性を高め、ストレスの予防・低減につながると考えられるため、今後改善すべき課題の一つと言えます。

ストレスを雇用主や上司とオープンに話した経験
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次に、ミレニアル・Z世代は、日本企業のウェルビーイングへの対応状況をどのように捉えているでしょうか。まず、パンデミック期間中においては、日本のミレニアルの44%、Z世代の38%が「雇用主は積極的にウェルビーイングに対してサポートをしてくれなかった」と回答しています(図8)。また、パンデミック後についても、「雇用主は身体・メンタルヘルス対策を積極的に計画していない」との回答が日本のミレニアルは46%、Z世代は39%となっています。いずれの場合も日本のミレニアル・Z世代はグローバルの各世代よりも企業の取り組みを低く評価しています。前述の通り、メンタルヘルス面でのウェルビーイングが企業へのロイヤリティにも影響を与えるため、人材のリテンションのためにも、従来より積極的な対策が求められます。

職場におけるウェルビーイングに対するサポート
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ハイライト

今回の調査では、COVID-19のパンデミックにより、ミレニアル・Z世代が将来に対する悲観的観測を強め、組織の成功においては、「柔軟性や適応性」が必要と感じている姿が示されています。一方で、世の中のデジタルトランスフォーメーションを加速させたCOVID-19を経ても、日本のミレニアル・Z世代のテクノロジーに対する意識は依然として低い傾向にあることも注目に値します。また、この世代にとっては、メンタル面でのウェルビーイングや企業のサポートがロイヤリティに影響することも、企業は認識する必要があるでしょう。企業はこれら世代の特徴を理解し、活かすことができる人材マネジメントの実現が求められます(図9)。

解釈・示唆のサマリ
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解説者紹介:

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
ディレクター 澤田 修一

デロイト トーマツ コーポレートソリューション合同会社
シニアアソシエイト 岡田 久美

 

本レポートはDeloitte Globalが発表した内容をもとに、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社が翻訳・加筆したものです。和訳版と原文(英語)に差異が発生した場合には、原文を優先します。

デロイトのミレニアル・Z世代年次調査について

デロイトが2021年1月~2月に世界45 カ国、14,655人の1983年~1994年生まれのミレニアル世代、45カ国8,273人の1995年~2002年生まれのZ世代に対して行った調査。

調査形式

:Webアンケート方式

調査時期

:2021年1~2月

調査対象

:22,928名(内、国内回答者は801名)

 

グローバルのレポート(英文)はこちらをご参照ください。

過去のミレニアル年次調査

2020

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大以前(2019年末)に定点調査(第一次調査)を実施し、その後、世界的パンデミックの影響を把握するために、追加調査を2020年4月~5月に実施しました。今回の調査では、過去調査では増加傾向にあった離職意向が低下に転じ、COVID-19に対する企業の対応についても、概ねポジティブに評価する姿が浮かび上がりました。

≫ 2020年 デロイト ミレニアル年次調査を読む
 

2019

日本のミレニアル世代の約半数が2年以内の離職を見込み、日本の離職意向はグローバル水準に並びました。一方、雇用形態としては企業への所属を望み、4割弱が第四次産業革命に向けた準備に最も責任があるのは企業だと回答しています。

≫ 2019年 デロイト ミレニアル年次調査を読む
 

2018

第四次産業革命の進展によって、労働の本質が変化している中、多くのミレニアル世代が「安心感」を求めています。また、彼らは「企業は収益と同時に、社会や環境に対してよい影響を与えるべきだ」と考えている一方、現実には企業は収益をあげることを最優先としており、そのギャップによりミレニアル世代は所属組織に帰属意識を持てないでいます。

2018年 デロイト ミレニアル年次調査を読む
 

2017

このレポートは柔軟な勤務形態と業務の自動化の進展がいかにミレニアル世代の姿勢とパフォーマンスに影響を与えるかを説明しつつ、従業員の目的意識とリテンションとの関係性を改めて示しています。

2017年 デロイト ミレニアル年次調査を読む
 

2016

ミレニアル世代は、労働人口に一層大きな割合を占めるようになり、上級職に就く人も増えています。もはや未来のリーダーではなく、次第に今日のリーダーになってきていることもあり、彼らのビジネスの手法や姿勢に対する見解は、単なる学術的な関心を超えるものとなっています。

2016年 デロイト ミレニアル年次調査を読む
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