調査レポート

アジアパシフィックにおける生成AI

若手ビジネスパーソンが牽引する一方で、経営層は遅れを取り戻す必要がある

アジアパシフィックの約11,900人を対象とした調査の分析で、若手ビジネスパーソンが生成AIの導入を牽引する一方で、企業はこういった変化に適応しようとする中で新たな課題と機会に直面していることが明らかになりました。

※本レポートはDeloitte Asia Pacificで公開されたGenerative AI in Asia Pacificを翻訳したものです。
(原文と一部構成や内容が異なる部分がございます。)
和訳版と原文(英語)に差異が発生した場合には、原文を優先します。

あらゆる業界や地域において生成AIが企業経営者の間で大きな話題になっています。ChatGPT、Gemini、Midjourney、Claude、GitHub Copilotといったツールが登場し、ソフトウェアベンダーも生成AIを自社製品に取り込むようになったことで、生成AIに対する高い関心が爆発的に高まりました。社会はこういったアプリケーションに高い期待を寄せており、AIが新興のテクノロジーソリューションから汎用アプリケーションになっていくその転換点を迎えていることが分かります。しかもこの現象はアジアパシフィックだけではなく、世界中で等しく起きていることです。

生成AIの導入を牽引しているのは現場の最前線で生成AIを試している一般ユーザーであり、この革命を主導しているのは若手のビジネスパーソンや学生です。本レポートではこういった若手を「AI世代」を呼ぶことにしましょう。AI世代とはスマートデバイスや音声アシスタント、推奨アルゴリズムやAIを活用したさまざまなテクノロジーの時代に育ってきた子供から若者(24歳まで)のことです。この世代は子供の頃からエンターテインメント、教育、医療、日々のやり取りなど、生活のさまざまな場面でAIを体験して育ってきました。よって、デジタル技術を自在に扱い、AIを使いこなせる能力を有している、という特徴を持っています。

Deloitte Access EconomicsとDeloitte AI Instituteが2023年に実施した調査では、AI世代の台頭を受けて、オーストラリア経済の4分の1が急速かつ甚大なディスラプションに直面していることが明らかになりました。この調査から、アジアパシフィック各国でも同様の影響を予見することができます。本調査の対象となったのは、ビジネスパーソン約9,000人、学生2,900人の合計約11,900人です。本調査では、生成AIによって勤務時間が短くなり、新たなスキル開発の機会が生まれ、持続可能な仕事量につながることが分かりました。

アジアパシフィックの先進国は二面性を持った課題を突き付けられています。生成AIの取り込みが遅れている一方で、各産業には近いうちにAIテクノロジーによってディスラプションに直面しかねない働き手が多い、というものです。本調査では、アジアパシフィックにおける生成AIの変革的な影響を浮き彫りにする次の6つのインサイトが洗い出されました。このインサイトからは、生成AIという急激に進化しているテクノロジーに企業も政府も適応していく必要があることが明確に示されています。

  1. アジアパシフィック全体で学生やビジネスパーソンが生成AI革命を牽引しているが、自分が生成AIを利用していることを管理職が把握していると考えているのはその半数に過ぎない。
  2. 新興国は生成AIの取り込みの先頭に立っており、普及率は先進国を30%上回っている。
  3. 生成AIによってアジアパシフィック全体で毎週110億時間以上の労働時間が影響を受ける見込み。
  4. 生成AIの利用によってユーザー1人あたり1週間でほぼ1日分の労働時間が浮き、新たなスキルを習得する時間が生まれる。
  5. 生成AIによって仕事や学習の満足度が高まる。
  6. 自社が生成AIの導入に遅れを取っていると考える従業員は4分の3近くに上る。

こういった主なインサイトからの学びを使って、企業経営者が自社のポジションを高めていくために役立つ提案を策定することができました。CEOをはじめとする企業幹部には、生成AIを使って効率性を高めることだけを考えるのではなく、プロセスやビジネスモデルを見直すことが求められているのです。生成AIという成長著しいテクノロジーによってディスラプトされるのではなく、ディスラプションを起こしていく必要があります。

図表1:生成AIはアジアパシフィックの働き方を既に変革しつつある、若手がこの変革を牽引している

 

デロイト アジアパシフィックのリーダーシップインサイト

「生成AIは私たちの生き方や働き方を改革するだけではなく、差し迫った課題に対応できる可能性も秘めています。持続可能性の高い経済を作り上げ、世界中で貧困に直面している人々の生活水準を引き上げていく、この大きな2の課題意識が今のあらゆる人の念頭にあるでしょう。生成AIのポテンシャルを認識している企業や政府には、既にさまざまなソリューションがもたらされています。あらゆるリーダーには、アジアパシフィックをより良くしていくために、このテクノロジーを正しく理解しうまく使いこなしていくべき責務があるのです」

David Hill
Chief executive officer
Deloitte Asia Pacific

 

「生成AIに関する取り組みは、世界中のあらゆる物事やあらゆる場所で一度に起きています。これが最もワクワクするポイントです。インドネシアやインドのクライアントが直面していた課題が、イタリアやアイルランドのチームの課題とほとんど同じであった、ということを私たちはこの12カ月間で目にしてきました。1つ明確になったことがあるとすれば、AIの急速な導入が仕事を奪うことにはならず、逆に、AIに順応できなかった企業こそがAIの影響を受けることになる、ということです。こういった企業の従業員は、AIアプリケーションを利用して時代にあった未来の働き方に変革していけるライバル企業に魅力を感じるようになるでしょう」

Chris Lewin
AI and data capability leader
Deloitte Asia Pacific

 

「生成AIによる生産性向上の影響について言葉を尽くすことはできません。アジアパシフィックは世界の中でも最も言語的な多様性に富んだ地域であり、文書化された言語は3000以上も存在しています。テキストやスピーチの翻訳に生成AIが使われる場面が増えており、言語の壁を下げ、世界中の人や企業がつながりやすくなってきました」

Kho Wei Ang
Senior manager of analytics and cognitive strategy, Growth and Innovation,
Deloitte Asia Pacific

1. アジアパシフィック全体では学生やビジネスパーソンが生成AI革命を牽引しているが、自分が生成AIを使っていることを管理職が把握していると考えているのはその半数に過ぎない。

アジアパシフィックの学生やビジネスパーソンの間で、生成AIの利用率は驚くほど高くなっています。今回の調査では、大学生の81%、ビジネスパーソンの62%が生成AIを利用していることが明らかになりました。実際、調査対象となったビジネスパーソンの43%は業務目的で生成AIを利用しています。

今までAIを身近なものとして育ってきた若者(AI世代)のほうが、このテクノロジーをすでに試したり、使ったりしている傾向が高く、生成AIを利用している18歳から24歳のビジネスパーソンの数はそれより年齢の高いビジネスパーソンのほぼ2倍になっています。年齢だけではなく、子供のころからデジタルテクノロジーに触れてきたことが生成AIの高い利用率につながっていることが分かります。

2023年にデロイトは調査レポート「Deloitte, Generation AI: Ready or not, here we come! (2023)(AI世代:モタモタしていても現実のものに)」 を発表しましたが、このレポート発行以来、オーストラリアの職場における生成AIの利用率は全従業員の32%から38%に増加しています。1既に急激に導入が進んでいる状況にあって、1年以内に利用率が20%も増加したのは非常に大きな伸びであると言えます。

生成AIの重要性は急激に高まるでしょう。生成AIの取り込みが進むかどうかは、アクセスのしやすさにかかっています。生成AIはIT部門によって効果的に管理されておらず、生成AIの管理に組織的な戦略も存在していません。今のところ、生成AIの取り込みはオープンソースコミュニティが牽引しており、こういった利用者によって大規模言語モデルの正確性が向上し、アプリケーションが急速に進化しています。新たなユーザーにAIツールを試すよう後押しするなど、生成AIユーザーのオープンソースコミュニティがこの急成長を下支えしています。LangChainやHugging Faceといったオープンソースのプラットフォームを通して、AI世代には知識の共有や迅速な問題解決などの機会がもたらされています。さらに、アジアパシフィックには人口が増加している国・地域もあり、今後の急成長を予見することができます。事実、生成AIを日常的に利用する見込みのユーザーの割合は今後5年間で3倍になるでしょう(現在の11%から32%へ)(図表2)。

図表2:生成AIを日常的に利用するユーザーは増加

 

生成AIのユーザー数は増加していますが、アジアパシフィックの企業はそのペースに追いついていません。業務目的で生成AIを利用しているビジネスパーソンの半数は、自分が生成AIを利用していることを経営陣は把握していないと考えています。企業はテクノロジーベンダーや専用プラットフォームが開発した安全性の高いアプリケーションを導入しようと考えていますが、実際には自社の従業員に遅れを取っており、巻き返していく必要があるのです。

2. 新興国は生成AIの取り込みの先頭に立っており、普及率は先進国を30%上回っています。

今までの技術革新では、先進国がいわゆる「アーリーアダプター」(初期採用者)でした。たとえば2000年時点で、韓国、ニュージーランド、オーストラリアでは人口の約半数がインターネットにアクセスしていましたが、中国、インド、フィリピンではこの割合は2%を下回っていました。2 クラウド採用も1つの例として挙げられるでしょう。先進国では2000年代半ばにクラウド導入が進みましたが、新興国で採用が進んだのは2010年代後半であり、先進国に追い付くのに10年を要しました。生成AIではこのパターンが逆転しており、今のところ、新興国のビジネスパーソンや学生のほうが先進国よりも早いスピードで生成AIを受け入れています。

新興国(中国、インド、東南アジア)の生成AIユーザーの割合は、先進国(日本、台湾、シンガポール、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)を30%上回っています。3さらに見ると、生成AIを利用したことのあるインドの学生やビジネスパーソンは、アジアパシフィック全体の学生やビジネスパーソンを30%上回っています(図表3)。日常的に利用している人の割合もインド(調査対象の32%)や東南アジア(同19%)がオーストラリア(同8%)や日本(同4%)を上回っています。

図表3:アジアパシフィックでは新興国のほうが生成AIの利用率が高い

 

この利用率のギャップは、利用率が高い地域では全人口に占める「デジタルネイティブ」人口の割合が高いことも1つの要因です。実際に、インドの調査対象者のほぼ半数(46%)が18歳から35歳でしたが、この年齢層に入る日本の調査対象者は30%でした。

新興国ではビジネスパーソンも生成AIを熱心に取り入れようとしています。新興国のビジネスパーソンと学生の半数以上(53%)は生成AIテクノロジーに対して基本的に高い期待を持っていますが、先進国の学生やビジネスパーソンで同じように感じているのは4分の1を下回りました(23%)。対照的に、先進国のビジネスパーソンの3分の1以上(36%)は生成AIに対して基本的に不安を感じており、新興国ではこの割合は12%にとどまりました。

非常に重要な点を挙げましょう。新興国におけるAI世代は生成AIの急激な登場に対してより積極的にアクションを取っていることが分かりました。そのアクションとは、生成AIの基本について調べる、プログラミングスキルを磨く、生成AIについて他人と協働する、正式な学習を進めるといったことです。中国では、学生とビジネスパーソンの71%が少なくとも1つこういったアクションを取っており、アジアパシック全体の平均49%、オーストラリアの平均31%を上回っています(図表4)。

図表4:生成AIに対してアクションを講じている学生とビジネスパーソン

 

新興国による生成AIの積極的な取り込みやスキル向上が図られる中で、新興国にAI世代が集中しているということは、アジアパシフィック全体でテクノロジーの既存ヒエラルキーに重大なディスラプションが起こる可能性があることが分かります。本レポートでは新興国において生成AIの利用が進んでいることが明らかになりましたが、これは、生成AIという新しいテクノロジーが労働コスト削減だけではなく、生産性の向上や人間の潜在能力の最大化に資するものであることを示しています。

先進国はすぐにでも、生成AI利用におけるこのギャップに対応する必要があります。新興国に比べて生成AIの利用率が低いことに加えて、先進国では専門性の高い仕事や経営に携わる働き手の割合が高いことから、こういった業界において短期的に大きなディスラプションに直面することになるでしょう。4

もちろん、生成AIが経済に及ぼす影響については、利用率やスキル向上といった要素以外のものも存在しています。たとえば、デジタルインフラ、規制環境、熟練労働力などです。主にこういった要素を測定基準として用いたSalesforceによる「2023年のAIレディネス指数」では、アジアパシフィックの中で企業と政府におけるAIレディネスの上位にはシンガポール(100点満点で70.1)と日本(同59.8)がランクインし、以下、中国(同59.7)、韓国(同59.2)、オーストラリア(同58.2)、ニュージーランド(同54.6)、インド(同49.8)、東南アジア(平均40.5)が続きました。5AIの利用が今後も増加していく中で、新興国の組織はAIレディネスという分野に注目していく必要がありそうです。

生成AIの各国での利用状況

アジアパシフィックの多様かつ多面的な地理的状況を反映して、生成AIテクノロジーの取り込みは各国それぞれの文化や経済、社会状況によって左右されます。アジアパシフィック全体の俯瞰からも生成AIの利用状況に関するインサイトを得ることができますが、各国それぞれの微妙な差異や特色を理解すると、生成AIによって生活やビジネスがどのように変革されていくのか理解を深められるでしょう。各国のAIの取り入れ状況に関するインサイト(英語)を詳しくご覧ください。オーストラリア、中国、インド、日本、ニュージーランド、シンガポール、韓国、東南アジア、台湾のビジネスパーソンと学生による生成AIの利用、生成AIに対する考え方、生成AIの活用方法を比較できます。

3. 生成AIによってアジアパシフィック全体で毎週110億時間以上の労働時間が影響を受ける見込み。

生成AIの取り込みの先頭に立っているのは新興国ですが、アジアパシフィックのあらゆる市場や産業がこのテクノロジーの影響を受けることになります。アジアパシフィック全体では、生成AIによって毎週、勤務時間の16%(110億時間近く)が影響を受けるとデロイト では試算しています。AIによってタスクが自動化され人間が関与する必要がなくなる場合や、タスクそのものの幅が広がるため人間がタスクを完了するためにAIの利用が必要になる場合などが考えられます。大きな変化に直面する労働者や日常業務の再トレーニングが必要となる労働者もいますが、一方で、一定程度のスキル向上しか求められない労働者や、業務の裏側で生成AIを利用することになるだけの人もいるでしょう。

こういった分析でさえも、労働者の今のタスクに対するAIの真の影響を低く見積もっている可能性があります。この分析では、現時点で特定の役割に求められるタスクに基づいてAIの導入による影響を予測した調査を使っていますが、今後AIの新たなユーザーが出てくる中で、新たなタスクが生まれ、経済活動に求められる働き手の種類に変化が生じ、今まで考えもしなかった役割が作り出されることになるでしょう。

生成AIによる自分の業務への影響をビジネスパーソンに尋ねたところ、今後5年間で自分の現在の業務の61%が影響を受けるだろう、という回答を得ました。

過去のディスラプティブなテクノロジーと同じように、生成AIによって労働者は新たなタスクに時間を割くことができるようになり、過去には想像もできなかった新たな種類の仕事も生まれるでしょう。仕事全体は今後も増えていく可能性が高く、職業や業界によっては大きな変化に直面したり、移行にあたってサポートが必要になったりすることもあるでしょう。たとえば、1980年にスプレッドシートが登場すると、経理担当者の需要が激減し、経理の仕事は高いスキルを備えた会計士に取って替わられました。これから起きる変化を乗り越えていくためには、どの業界や業務がより大きなインパクトを受けるのかを認識することが不可欠です。

アジアパシフィックにおける生成AIの影響をもっと詳しく説明するために、Deloitte Access Economicsは18の業界について、生成AIのインパクト(「衝撃」と呼びます)と、それぞれの業界が影響を受けるまでの期間(「導火線」の長さ)という観点からマッピングしました。期間の決定には、今回の調査においてどの業界が生成AIのアーリーアダプターの特徴を見せているか検討しました。インパクトの試算には、それぞれの業界においてAIを応用し得る10の分野の業務時間を調べました(この手法の詳細は付録をご覧ください)。

図表5:生成AIが各業界に及ぼすインパクトとその時期

 

「導火線が短く、衝撃が大きい」シナリオに入った業界は金融、情報通信技術(ICT)とメディア、プロフェッショナルサービス、教育の4つでした。こういった業界の重要性は各国ごとに異なるものの、アジアパシフィック全体で平均するとこの4業界で経済の5分の1を占めます。6プロフェッショナルサービス、金融、ICTといったインパクトの大きい業界に向けて経済活動がシフトしていく国もあることから、この割合は今後増加していくと考えられます。また、生成AIを利用している学生の40%がこの4つの業界のいずれかでキャリアをスタートさせたいと考えているため、トランスフォーメーションも加速することになるでしょう。

あらゆる業界が生成AIによって変革されることになりますが、知識集約型の業界と比較すると、農業や建設、輸送や卸売り・小売りといった労働集約型の業界では長期にわたるディスラプションは比較的小さくなります。

 

ディスラプションを主導しそうな企業はどこか?

生成AIの世界で成功しそうな企業を予測するのは難しいものの、スタートアップ企業やスケールアップ企業が主なプレイヤーになりそうです。こういった企業は製品やサービスについて既存企業との差別化を図ろうとしており、さらに大規模なレガシーシステムにも引きずられないことから、経済全体にわたってイノベーションの源泉となる傾向が高いと言えます。より確立されている大企業はこういった新規参入企業の成功を目の当たりにして、そうした企業を買収したり、革新的な着想を拡大したりしようと模索することになるでしょう。生成AIの登場でオープンソースのコミュニティを通じてデータや情報の民主化が進み、スタートアップ企業やスケールアップ企業がアジアパシフィック地域全体でさらにディスラプティブな役割を果たすようになるでしょう。

4. 生成AIの利用によってユーザー1人あたり1週間でほぼ1日分の労働時間が浮き、新たなスキルを習得する時間が生まれる。

生成AIのユーザーは既に仕事や学習の成果向上を実感しています。今回の生成AI調査によると、生成AIユーザーの80%がタスク完了にかかる時間がスピードアップしたと回答しています。

平均すると、生成AIを日常的に利用するユーザーは1週間で約6.3時間を節約しています。

こういった生産性の向上は他の調査でも裏付けられています。ある調査では、アジアパシフィックで調査した4カ国(オーストラリア、インド、日本、シンガポール)の回答者の85%がAIによって仕事のスピードと効率が向上すると考えていることが明らかになっています。7別の調査では、製造業と金融業にいる調査対象のAIユーザーの約80%がAIによって仕事のパフォーマンスが向上したと回答しています。8

では、AI世代は浮いた時間で何をしているのでしょうか? 生成AI利用によって浮いた時間で、ビジネスパーソンは他のタスクを完了させたり、新たなスキルを習得したりしています。ビジネスパーソンの54%が浮いた時間で他のタスクを完了させると回答しており、45%が追加的な学習やスキル習得に時間を投資していると回答しています。

新たな情報を学ぶ能力も生成AIによって改善されています。今回の生成AI調査では次の回答を得ました。

  • 生成AIユーザーの71%が生成AIによって新しいアイデアを生み出す能力が高まったと回答
  • 67%が新たなスキルを習得する能力が高まったと回答
  • 73%が生成AIによってアウトプットの質が高まったと回答
  • 65%が生成AIによってアウトプットの正確さが高まったと回答

スキル構築を向上させたビジネスパーソンの40%近くが、スキルの習熟にかかる時間が生成AIによって半分になったと考えています。

5. 生成AIによって仕事や学習の満足度が高まる

現在の職場環境は今までとまったく異なっています。コロナ禍を通じて働き方改革が急激に進みました。その後、アジアパシフィックの多くの国はコスト圧力の高まりだけではなく、経済見通しの鈍化に見舞われています。

こういった圧力は従業員の燃え尽き症候群につながりかねません。実際、アジアパシフィックでは仕事に従事する人のほぼ50%が毎日の終業時に心理的または身体的な疲れを感じているとした調査結果もあります。9メンタルヘルスに関連した長期欠勤によって、オーストラリアだけで1年間に136億米ドルの損失になると試算されています。10

生成AIによる大幅な時間の節約によって、ルーティーン業務や反復的なタスクを効率的に終わらせて、クリティカルかつクリエイティブな思考が求められる付加価値の高いタスクに集中していけるようになります。これは、維持しやすい仕事量を担保し、従業員の過労を防ぐことにつながります。今回の調査では、時間を節約できた人の41%がワークライフバランスを改善できたと考えていることが分かりました。この結果は他の調査でも裏付けられています。たとえば、ある調査では労働環境に関するさまざまな指標の中で(仕事の満足度、身体的な健康、メンタルヘルス、経営の公正さ)、生成AIによって労働環境が改善されたと回答した人は製造業と金融業の生成AIユーザーでは4倍以上になっています。11

クリエイティブな思考などの付加価値の高いタスクに割く時間が増えると、仕事が楽しくなります。実際、大半の生成AIユーザーが自分の仕事または勉強の性質が向上し(81%)、満足度が高まった(67%)と考えています。ある調査ではこの影響には2つの面でメリットがあるとしています。テクノロジーによる生産性の向上に伴って、従業員のエンゲージメントも高まる、ということです。12

もう1つユースケースを挙げるとしたら、コーチングサービスでしょう。生成AIは個別コーチングや相手にあわせたコミュニケーションをサポートできます。今回の調査では、コーチングやメンタリングなどにおいて、生成AIテクノロジーを使うことでチームメンバーや同僚をサポートしやすくなった、という点に同意した生成AIユーザーは74%に上ります。

図表6:ユーザーの大半が生成AIによって仕事が楽しくなったという点に同意

 

6. 自社が生成AIの導入に遅れを取っていると考える従業員は4分の3近くに上る

AI世代が生成AIを活用した新たなツールを急速に取り込む一方で、企業経営者は生成I導入の遅れを取り戻す必要があります。アジアパシフィック全体で、企業は生成AIをさまざまな形で試し、取り入れようとしています。IDCのデータでは、ChatGPTが最初に登場した2022年には250億米ドルであったAI投資は、2030年までに1,170億米ドルに増加すると見込まれています。

8年間で5倍近くも投資が増加するということであり、新しいエンタープライズテクノロジーの中でAIの実装が最も早く進むことになりそうです。生成AI投資がもっとも急激に成長しそうな国は、既に生成AIの利用率の高いインド、インドネシア、フィリピンです(図表3を参照)。

この投資によって生成AIの取り込みにいっそう拍車がかかるでしょう。ある調査では、アジアパシフィックの中規模企業の半数近くが生成AIテクノロジーのユースケースの可能性を検討しているか、既に利用しているかのどちらかであるということが明らかになっています。13テクノロジーベンダーや社内開発などを通して、安全性や機密性を確保して使える特定のAIアプリケーションへのアクセスを提供している企業もあります。

投資や活用が拡大しているにも関わらず、それでも多くの企業が後れを取っています。従業員に対して、生成AI利用の成熟度に関して自社がラガード(遅滞層)、レイトマジョリティ(後期追随者)、アーリーマジョリティ(前期多数派)、アーリーアダプター(初期採用層)、イノベーター(革新層)のどのグループに属していると考えるか尋ねました。自分の会社がアーリーアダプターまたはイノベーターであると考えている従業員は29%にとどまり、4分の3の企業には大きな改善の余地があることが示されました(図表7)。別の調査では、生成AIに関する自社の専門性が「高い」または「非常に高い」とした企業幹部は44%に上り、この調査と対照的です。14

さらに、従業員は自社事業がこれから改善していく可能性についても慎重な見方をしています。従業員から見てイノベーターまたはアーリーアダプターになりそうな企業の割合は、今後5年間で38%までしか増加しません(図表7)。

図表7:従業員は自社による生成AIの迅速な取り込みに対して概ね懐疑的

 

生成AIの時代には、事業を成功に導いていく上で従業員が非常に重要な役割を担うようになります。生成AIの利用によって従業員の満足度が高まることから、従業員にうまく生成AIを活用させられない企業は革新的な競合他社に自社従業員を奪われることになりかねません。

ここからどこに向かうのか?

ビジネスパーソンは高い割合で生成AIを利用していますが、その中で業務目的での生成AI利用に付随する主要なリスクを挙げています。具体的には、85%の人が生成AIの利用が個人情報や機密情報の悪用につながることを懸念しています(図表8)。悪意のあるコンテンツの作成(83%)や法的リスクと著作権侵害(81%)を懸念している人も同程度いました(図表8)。

図表8:幅広い利用が進んでいるが、ビジネスパーソンは生成AIのリスクを懸念している

 

企業経営者はこういったリスクに対応し、AIアプリケーションから得られる大きなメリットを実現できるように、従業員によるAIの活用を全面的に後押ししていく必要があります。生成AIを利用しないという大きなリスクもあります。より長期的には、自社の事業や業界全体で生成AIを利用しようとしない企業は競合他社に取り残される恐れがあります。

その他のデジタルテクノロジー革命から学べること

生成AIは利用の広がりが非常に早く、従業員主導でディスラプションが起きているという点でインターネットやスマートフォン、クラウドコンピューティングといった他のデジタルテクノロジー革命とは異なっていますが、それでも今までの革命から学び取れることがあります。つまり、新しいテクノロジーを拒むのではなく、変化を受け入れるべきだ、ということです。今までのテクノロジーの進化では、既存ビジネスはビジネスへの意味合いを考え、規制やリスク管理を中心として新しいテクノロジーのディスラプティブな影響を制限する動きがありました。しかしその機会に乗じてディスラプションを起こしている当事者は、まったく新しいビジネスモデルや顧客体験を打ち立てたのです。その結果、既存ビジネスは最終的に新しいテクノロジーを受け入れるか、そうでなければ淘汰されてしまいました。

企業は生成AIの取り込みにさらなる努力が必要

業務目的で生成AIを利用しているビジネスパーソンが43%存在している一方で、経営層の29%は仕事の場における生成AIの急激な拡大に対応する方策を認識していません。アクションが欠如しているか、または、幹部と現場の間でこの重要な動向に関してコミュニケーションの断絶があるか、そのどちらかを示していると言えます。

生成AIの出現に対して無条件反射的な反応をしている企業もあります。アジアパシフィックのビジネスパーソンの22%が生成AIの利用を禁止または制限している企業で働いています。しかし、生成AI利用の禁止や制限には利用の抑止には効果がないことが示されています。実際、生成AIが禁止されている企業に勤務している従業員のほうが生成AIを利用する傾向が高くなっています。生成AIを利用したことがあるビジネスパーソンは全体で62%ですが、生成AIが禁止または制限されている企業の従業員ではこの割合が76%になっています。

従業員の生成AIの利用を後押ししようとしている企業も多数存在しています。生成AIの登場への企業の対応策として一番多いのは、従業員に話をする(企業によるこのアクションを認識している従業員は42%)、業務中の学習を推奨する(同39%)、生成AIの限界について話し合う(同35%)となっています。生成AIに関する正式なトレーニングを受けたことのあるビジネスパーソンは33%にとどまっています。生成AIに関する正式なトレーニングを受けたことのある人のうち、35%がトレーニングに不満であったと回答しています。生成AIの利用に関するトレーニングは労働生産性を引き上げ、従業員の職場環境を改善することが分かっています。15

後悔しないための3つの手だて

生成AIの拡大を受けて、急速に変化する環境に対応するために企業経営者も従業員も戦略的に考え、積極的に動く必要があります。生成AIの使い方やビジネスでの活用方法を自ら学ぼうとしなければ、従業員も企業も重要な機会を逃すことになりかねません。企業経営者は今どのような方策を取ることができるでしょうか? 今回の調査結果の分析に基づいて、影響力の高そうな3つの手だてをご紹介しましょう。

  1. 自社のコアバリュー分野に注目した生成AI戦略を策定し、実行する
  2. 従業員自らがAIの学びを進められるよう後押しする
  3. 生成AIを取り込むために、必要に応じてデータインフラやデータガバナンスを反復的に開発する

1. 自社のコアバリュー分野に注目した生成AI戦略を策定し、実行する

生成AIの潜在能力を開放するために、企業経営者としては生成AIを利用することと生成AIから生まれる価値を混同してはなりません。

あらゆるビジネスに応用できる幅広い使い道の可能性が広がっている一方、特定の業界や事業だけに対応するものもあります。

こういったノイズの多い環境の中で、企業経営者としては自社ビジネス戦略のビジョンにしっかりと目を向け、そのビジョンを支えるようなAI戦略を策定する必要があります。顧客向けに競合他社からの差別化を図れる分野から手を付け、AIによって事業の競争力を高めていく方法を模索していくことが理に適っているでしょう。また、企業の目標実現の妨げとなっている課題を洗い出し、こういった分野にAIを振り向けることが新たなソリューションを見つけることにつながるでしょう。

自社戦略にあわせた形で生成AIを利用しようと考えている企業は、既製のソリューションではなく専用のAI製品が必要になる可能性が高いと言えます。「State of Generative AI in the Enterprise(グローバルの企業における生成AIの現状:今こそ次の一手を考える」レポートの最新版では、標準的な既製のソリューションに投資している企業が多いことが明らかになっています(68%が標準的なアプリケーションを利用)。業界特化型のソフトウェアアプリケーションを利用している企業ははるかに少数です。16

AI戦略の中心となるのが従業員です。しかし、従業員のほぼ3人に1人(29%)は、AI利用に関するトレーニング、従業員に対する啓蒙や教育、ガイドラインの提供といった生成AI登場に対応して企業が講じているアクションについて1つも把握していません。

企業によるアクションの欠如は先進国においてより顕著です。経営層が生成AIについて語るのを耳にしたことのある従業員はオーストラリアで29%、日本で24%しか存在していません。この割合はインドでは64%、東南アジアでは57%です。

生成AIの効果的な活用に求められるスキルを洗い出し、そういったニーズを満たすためにスキル向上や追加人材の採用の筋道を示す戦略こそがよく練られたAI戦略だと言えます。企業が取り得る最も効果的なアクションとして、従業員は「仕事でのAIの利用方法についてトレーニングを実施する」(41%)、「生成AIを業務プロセスに組み込む戦略を策定する」(41%)ことであると考えています。

技術進化から得られる効率性を手に入れるためには、ただ技術を導入するだけではなく、新たな技術を活用できるように業務を再編することが必要になります。17CEOを始めとする企業幹部に求められているのは、新たなテクノロジーを採用して既存のプロセスやタスクの効率性向上を図るだけではなく、そのテクノロジーを使っていかにプロセスやビジネスモデルを全面的に見直せるかを検討することです。

生成AIに関する取り組みを実施している企業と、実施していない企業の間には非常に大きな差が開いています。生成AIに関する自社の取り組みを把握している場合、自社を生成AIのイノベーターだと考える従業員はそうでない場合の6倍になります。この数字は他の調査でも裏付けられています。トレーニングやその資金が提供されている企業でAIを利用している人は、それ以外の人よりも非常に高い割合で職場環境に対するAIの成果を前向きに評価する傾向があります。18

業界リーダーからのインサイト

「生成AIがどのようにビジネスの課題解決につながるか理解することこそが、生成AIをビジネスの中で生かすということです。つまり、時間が節約できるのであれば、浮いた時間で何ができるようになるのでしょうか? その価値は何でしょうか? 」

Rachel Edwards
Vice President,Strategy,portfolio and performance,BHP

 

「Gen AIは、従業員の生産性を向上させ、顧客エンゲージメントをパーソナライズするという点で、大きな可能性を示しています。私たちは、それがビジネスと顧客のために大きな価値を生み出すことを確実にする必要があります。」

Saut Saragih
Senior executive vice president,Digital and transaction banking,
Bank Syalah Indonesia

 

「オープンソースのデータを頼りにするのではなく、従業員が利用しているデータと生成AIが統合されて初めて最大限のメリットを手にすることができます。ChatGPTなどの汎用モデルは幅広い基本的なタスクに役立ちます。逆に、自社が直面している状況に最も関連性の高いインサイトを得ていくためには、自社に合わせたモデルが役立つでしょう」

Amanda Saunders
Senior manager,
NVIDIA

 

「シュナイダーエレクトリックでは、潜在的なユースケースに関して実証実験していくことが生成AIのポテンシャルをテストするカギになっています。当社のAIハブでは常に複数の概念実証を開発し、たとえば社内の効率性向上や顧客体験の向上といったメリットを得られるよう、生成AIのさまざまな利用方法を模索しています」

Suneetha Nagaraj
Global digital experience leader,
Schnelder Electric

 

「CEOを始めとする企業幹部に求められているのは、新たなテクノロジーを採用して既存のプロセスやタスクの効率性向上を図るだけではなく、そのテクノロジーを使ってプロセスやビジネスモデルを全面的に見直していくことです。生成AIを活用できるように業務を改革することで従業員や顧客の満足度が高まり、収益性も改善するでしょう」

Rob Hillard
Consulting Business Leader,
Deloitte Asia Pacific

2. 従業員自らがAIの学びを進められるよう後押しする

AIの取り込みで中心的な役割を果たすのが従業員です。仕事で生成AIを活用するという点で、AI世代は企業よりも先を進んでいます。それでも企業経営者としては、仕事の中でAIというツールを効果的に活用できるよう、従業員の知識や能力構築に向けて従業員を後押ししていく必要があります。

従業員による生成AIアプリケーションの利用率や利用頻度が高いからといって、従業員がこのテクノロジーを完全に活用できているとは限りません。生成AIのポテンシャルを全面的に活用できていると感じているビジネスパーソンは50%にとどまっています。理解を高めていくには積極的なアクションが役立つでしょう。仕事において生成AIを全面的に活用していると感じる割合は、AIについて調べる、アプリケーションを試してみる、同僚と協働する、といったアクションを取っている人は、そうでない人よりも51%高くなります。

生成AIアプリケーションは急速に変化していることから、企業が従業員向けに包括的なトレーニング資料やコースを作ろうしても、そういった資料の賞味期限は長く続きません。具体的な事例を伴った短いトレーニングセッションや、時には実際のケーススタディのほうが従業員の学習意欲を高める上では効果的です。

さらに、信頼できるパートナーやベンダーの専門性を生かすと、従業員に最新の情報を提供できるようになるでしょう。こういったパートナーは自社製品を最も効果的に活用する方法を把握しており、クライアント企業から得られたベストプラクティスに基づいた演習を提供することができます。

従業員が力を付けていくためには、企業内でユーザー間の協働を後押ししていくことも1つのやり方です。場合によっては、関連性の高い事例を紹介するために、また、思いもよらない新しいアイデアを得ていくために、従業員間のコンテストや事例紹介を利用することもできるでしょう。

3. 生成AIを取り込むために、必要に応じてデータインフラやデータガバナンスを繰り返しに策定する

AI戦略とあわせて、価値実現に向けたユースケースを策定したら、求められるユースケースを実現できるデータインフラやガバナンスを確保する必要があります。

生成AIの急速な導入を促したのはオープンソースのプラットフォームやサポートのコミュニティでした。そこから一歩進んで、ビジネスへのリターンを最大化するような進化したユースケースには、社内の事業データに基づいて訓練したAIモデルが必要になります。

既に利用されているAIでは、スプレッドシートや顧客リレーションシップマネージャーのデータベースといった構造化データの品質改善の必要性が示されてきました。生成AIはテキスト文書、Eメール、動画、音声録音といった半構造化データや、非構造化データに対して非常に高い価値を発揮することが分かっています。半構造化データの活用例として、たとえばエンジニアリング企業であれば、過去の提案書のテーマ、経験、手法に基づいて、新たな契約獲得につながる提案書を策定する、といったものが考えられるでしょう。

データ品質こそが、生成AIモデルをビジネスに関する情報で訓練し、活用していく決定的なカギとなります。しかし、アジアパシフィックの企業のデータ成熟度を調べたDeloitte Access Economicsの調査では、データ成熟度が「基本的」または「初歩的」とされた企業が半数に上りました。つまり、アジアパシフィック全体ではデータ管理能力に大きな改善の余地があるということです。19

では、データ品質の改善について、企業はどこから手を付けるべきでしょうか? まず、生成AI戦略から、どのデータ品質を改善するとリターンや価値の最大化につながるのか導き出すことができるでしょう。また、データクリーニングについては、従業員自身がアクセスする従業員データ、人事報告目的や採用目的のデータといった複数の目的で利用されるデータセットを優先する必要があります。

生成AIをうまく取り入れられるかどうかは、しっかりとしたデータガバナンスがあるかどうかにかかっています。責任あるAIを実現するために、ビジネスのユースケース向けの大規模言語モデルには、品質とプライバシーに対する配慮が求められます。デロイトの「State of Generative AI in the Enterprise(グローバルの企業における生成AIの現状:今こそ次の一手を考える)」レポートのための調査では、企業とテクノロジーのリーダーの懸念が、ガバナンス関連の最大の懸念事項は、「知的財産の問題」(35%)と「顧客データの悪用」(34%)であることが示されました。20こういったガバナンス上の懸念に対応するために、リスク管理や倫理問題、その他さまざまな帰結に備えたガバナンス体制を整えておくことが、生成AIのあらゆるユースケースの必要条件となります。

生成AI革命を取り込む

AI世代の影響力が引き続きアジアパシフィックの未来を作っていくことになりますが、その中で経営層としてはAIテクノロジーの急激な進化に適応し、この進化を取り込んでいくことが不可欠です。そうすることで、働き手の進化のペースについていけるばかりか、生成AIが経済や社会の変革に大きな力を発揮していく中で、その非常に大きなポテンシャルを生かしていくことができるのです。アジアパシフィックにおいて、未来の仕事は従業員や経営層の間でさまざまな形のコラボレーションやイノベーションを推進していけるかどうかにかかっています。

付録:手法について

デロイトによる生成AI調査

2024年2月~3月に、デロイトはオーストラリア、中国、インド、日本、シンガポール、台湾、韓国、ニュージーランド、東南アジア(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の13カ国・地域の大学生2,903人とビジネスパーソン9,042人を調査しました。

最初の調査はオーストラリアで始まったもので、今回の調査はそれを拡大したものです。今回の調査では、生成AIの現在の利用状況、メリット、障壁、生成AIに対する姿勢などを理解するための質問をしました。

生成AIの影響について全体的な視点を得られるよう全業界のビジネスパーソンと全分野の学生を調査の対象としました。

Deloitte Access Economicsは、Deloitte AI InstituteおよびDeloitte Insights共同で本レポートを策定し、アジアパシフィックの13カ国・地域におけるビジネスパーソンと学生による生成AIの利用状況、個人・企業・教育機関によって現在取られているアクション、生成AIを取り入れていく上での障壁、今後に対する期待を理解しようとしました。

本レポートはDynata社が実施した調査の情報を元にしています。調査回答者は、幅広い業界のさまざまな階層に所属する学生またはビジネスパーソンです。

手法についての詳細は原文をご確認ください。

Generation AI in Asia Pacific

巻末の注

1.

Deloitte, Generation AI: Ready or not, here we come! (2023),
https://www.deloitte.com/au/en/services/consulting/analysis/generation-ai-ready-or-not.html

2.

World Bank (2,024), Databank,
https://databank.worldbank.org

3.

International Monetary Fund, Groups and Aggregates Information (2024),
https://www.imf.org/en/Publications/WEO/weo-database/2023/April/groups-and-aggregates

4.

Pizzinelli, C., A. Panton, M. M. Tavares, M. Cazzaniga, and L. Li, Labor Market Exposure to AI: Cross-country Differences and Distributional Implication, IMF Working Paper 23/216 (2023)

5.

Salesforce, Asia Pacific Readiness Index (2023),
https://www.salesforce.com/content/dam/web/en_sg/www/documents/pdf/salesforce_ai_readiness_index_2023.pdf

6.

Asian Development Bank, Key Indicator Database (2024),
https://kidb.adb.org/

7.

Google and Ipsos, Our life with AI: The reality and the promise of tomorrow (2024),
https://static.googleusercontent.com/media/publicpolicy.google/en//resources/our_life_with_ai_google_ipsos_report.pdf

8.

Lane, M., Williams, M., and Broecke, S., The impact of AI on the workplace: Main findings from the OECD AI surveys of employers and workers, OECD (2023),
https://www.oecd.org/publications/the-impact-of-ai-on-the-workplace-main-findings-from-the-oecd-ai-surveys-of-employers-and-workers-ea0a0fe1-en.html

9.

AON, 2023 Asia Mental Health Index (2023),
https://www.aon.com/getmedia/c36a31bd-273e-446f-b0f5-6944a038f128/Aon-and-TELUS-Health-Asia-Mental-Health-Index-Report-2023.pdf

10.

Productivity Commission, Mental Health Inquiry Report Volume 1 (2020),
https://www.pc.gov.au/inquiries/completed/mental-health/report/mental-health-volume1.pdf

11.

Lane, M., Williams, M., and Broecke, S., The impact of AI on the workplace: Main findings from the OECD AI surveys of employers and workers, OECD (2023),
https://www.oecd.org/publications/the-impact-of-ai-on-the-workplace-main-findings-from-the-oecd-ai-surveys-of-employers-and-workers-ea0a0fe1-en.html

12.

Deloitte, Operating in the new normal (2020),
https://www.deloitte.com/au/en/services/economics/perspectives/operating-new-normal.html

13.

International Data Corporation, Future Enterprise Resiliency and Spending Survey (2023),
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prAP51823124

14.

Deloitte, Now decides next: Insights from the leading edge of generative AI adoption, Deloitte’s The State of Generative AI in the Enterprise Quarter one report (2024),
https://www2.deloitte.com/us/en/pages/consulting/articles/state-of-generative-ai-in-enterprise.html

15.

Lane, M., Williams, M., and Broecke, S., The impact of AI on the workplace: Main findings from the OECD AI surveys of employers and workers, OECD (2023),
https://www.oecd.org/publications/the-impact-of-ai-on-the-workplace-main-findings-from-the-oecd-ai-surveys-of-employers-and-workers-ea0a0fe1-en.html

16.

Deloitte, Now decides next: Insights from the leading edge of generative AI adoption, Deloitte’s The State of Generative AI in the Enterprise Quarter one report (2024),
https://www2.deloitte.com/us/en/pages/consulting/articles/state-of-generative-ai-in-enterprise.html

17.

Frey, C. B., Osborne, M., Generative AI and the future of work: A reappraisal (2023),
https://bjwa.brown.edu/30-1/generative-ai-and-the-future-of-work-a-reappraisal/

18.

Lane, M., Williams, M., and Broecke, S., The impact of AI on the workplace: Main findings from the OECD AI surveys of employers and workers, OECD (2023),
https://www.oecd.org/publications/the-impact-of-ai-on-the-workplace-main-findings-from-the-oecd-ai-surveys-of-employers-and-workers-ea0a0fe1-en.html

19.

Deloitte, Demystifying Data: Unlocking the benefits of data maturity (report commissioned by Amazon Web Services, 2022),
https://resources.awscloud.com/apj-demystifying-data/asia-pacific-report

20.

Deloitte, Now decides next: Insights from the leading edge of generative AI adoption, Deloitte’s The State of Generative AI in the Enterprise Quarter one report (2024),
https://www2.deloitte.com/us/en/pages/consulting/articles/state-of-generative-ai-in-enterprise.html

21.

Felten, Edward W. and Raj, Manav and Seamans, Robert, How will Language Modelers like ChatGPT Affect Occupations and Industries? (March 1, 2023).
http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.4375268

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