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生成AI(Generative AI)から企業価値を生みだす方法
デロイト トーマツの生成AI活用支援サービス
本ページはデロイト グローバルで発表された記事『Benefits and limitations of Generative AI』の翻訳となります。英語原文と日本語訳との間で相違や矛盾が発生する場合は、英語原文を優先します。
着実に活用し、成果を出すために
世界を席捲する生成AI(Generative AI)
MidJourney、Stable Diffusion、ChatGPT等に代表される生成AI(Generative AI)という強力かつ汎用的な人工知能の登場によって、世界中で多くの人々が予想したよりも早く創造力や想像力を必要とするスキルの自動化が始まっています。一部の組織にとって、生成AIは、新しいサービスやビジネスモデルの創出等、より高次の機会につながっていく貴重な可能性を秘めています。デロイト トーマツは、生成AIを活用していくためのユースケースを生みだす手法と、The Age of With™という人とAIが協調して価値を作り出していく時代で、ビジネスリーダーはどのように舵を取っていくべきかのステップを提供しています。
生成AIは、世界中のメディアや人々の間で注目を集めており、この革新的技術に関する議論が毎日のように行われています。
企業、研究機関のみならず多くの一般ユーザーも生成AIを試して熱狂し、ますます関心を高めていることもあり、ビジネスにおけるそのポテンシャルと影響をより詳しく見ていくことが重要です。
デロイト トーマツでは、生成AIの潜在的な利点と制約についてグローバルで調査・整理を行っています。これらの高度なAIをどこでどのように活用すべきかを判断する方法を紹介し、生成AIを導入する際にビジネスリーダーが考慮すべき重要な論点を網羅した支援を行います。
生成AIは、テキスト、コード、音声、画像、動画、作業手順書や業務プロセス設計書、さらにはタンパク質の3D構造等の形式で、機械が新しいコンテンツを作成するという人工知能の一分野です。いくつかの種類の生成AI技術がこの10年間で確立されてきましたが、容易にアクセスできるチャットインターフェースを用いた大規模な言語モデル(LLM)が生成AIのブレークスルーをもたらし、AIの専門家たちをも驚かせるに至りました。それ以前のAI技術がそうであったように、この新たなAIの看板技術は、組織や個人がビジネス、そして社会に利益をもたらすためにこのツールをどのように使用していくべきかと人々の想像力を刺激しています。生成AIは、企業におけるデジタル化の段階的な促進や基本的な生産性向上(例:テキストベースのより効果的な処理の実現)に役立ちますが、それ以上に、これまで経済的に実現できなかった新しいサービスやビジネスモデルといった、より高次の機会への可能性を拓いています。一般的な生成AIや大規模言語モデルで駆動されるチャットボットはリスクも伴います。この技術が人々の仕事を奪い、知的財産と所有権に関する法的問題等を引き起こす可能性があるとの議論が起きています。さらに、そのようなチャットボットは人間の言い回しを模倣し、表現に一貫性があるため、AIが、人が入力した言葉の意味を理解しているという印象を与えることがあり、このことは、ユーザーがチャットボットに人格を感じてしまう原因ともなります(コンピュータ科学者ジョセフ・ワイゼンバウムの研究によってELIZA効果として知られている現象)。
デロイト トーマツは、生成AIがクライアントにもたらす機会やビジネス価値を探求する様々なプロジェクトに取り組んでいます。これまでのプロジェクトにおける経験と議論を通して、他すべてのAIと同様に、生成AI活用に向けた明確な道筋は、すでに現れているリスクを責任ある形で管理しながら、生成AIによって可能となることを識別して活かしていくことです。
まだ始まったばかりですが、急速に発展しています
すべての産業において、公共サービスでの応用から気候変動への対応、ビジネス機能の変革に至るまで、AIをいかに活用し差別化を実現していくかは、企業や組織の関心事です(参考「業界別AI活用のすゝめ」)。私たちは様々な業界やスキル分野で、こうした技術による自動化が行われるのを見てきました。これまで想定されていたAI技術のロードマップでは、短期的には、AIは運用スキルを自動化する方法として最も価値があるもので、創造的なスキルは予見可能な未来においても人間の思考の専売特許であり続けると思われていました。ですが生成AIの躍進によって、このロードマップは予期せぬ方向に進もうとしています。
2022年後半に、使いやすい生成AIチャットボットがリリースされ、より多くの人々がこの新しい技術がクリエイティブな分野でどのように使用できるかを試行錯誤して見出し、さらなる活用に向けて想像を膨らませ始めました。コピーライティングから3D構造の生成、組織におけるビジネスプロセスの出力まで日々チャットボットのユースケースが発見され、生成AIの可能性を幅広く考えるきっかけともなっています。そのため、創造力や想像力を必要とするスキルも、多くの人々が予想したよりも早く自動化されるようになっています。
ですが、まだ発見すべきことがたくさんあります。The Age of With™ 人とAIが協調する社会とは、人間が知的な機械と協力して、どちらか一方だけでは達成できないことを実現する社会です。生成AIは働き方の未来に影響を与え、日常生活のさまざまな側面で一般的なツールとなります。生成AIが使われていることがわかりやすいサービスもあるかもしれませんが、サービスの裏側に組み込まれて使用されることでその価値を発揮するケースも多いことでしょう。
生成AIの仕組み:基本を理解する
生成AIがビジネスや生活にどのような影響を与えるかを理解するためには、それが何であり、何ができるのか、そしてまだできないことは何かを理解する必要があります。
通常、AIモデルが構築される際、トレーニングや学習と呼ばれる工程では、アルゴリズムに大量の入力/出力のサンプル(学習データ)を投入し、入力データからパターンを抽出し、期待される出力に関する結論を導き出します。例えば、スパムフィルターは、これらのパターンを使用してスパムメールに見られる特徴との類似性を特定し、それらを分類に用います(すなわち、スパムフォルダにメールを分類します)。AIモデルの高度化とともに、入力データは単純な数値の配列から高解像度の写真に至るまでその複雑さが増してきましたが、モデルの出力側はこれまでのところ「スパム」や「非スパム」、「猫」や「犬」、または7℃や3千円といったカテゴリーや数値にほとんど限定されていました。これまでに展開された多くのAIがこのアプローチによって作られており、そのため、AIアプリケーションは単一の目的のためのタスクしか実行できない結果となっていました。
しかし、生成AIは状況を一変させました。生成AIで用いるモデルは通常、大型であり、リソースを多く消費します。これらのモデルを作成するには、テラバイト単位の高品質なデータとそれをGPU対応の大規模・高性能コンピューティングクラスタで数週間にわたって処理することが不可欠です。このようなモデルを構築するために必要なリソースと人材を持つ組織・機関は数えるほどしかありません。モデルの作成だけではなく、実行にも多くのコンピューティングパワーが必要であり、このため、この種のモデルは、GPU搭載の専用ハードウェアやクラウドにて動作し、しばしばAPIを介してそのアクセスが提供されます。これにより、開発者は既存のソフトウェア製品に組み込む形でモデルを使用することができます。これらの生成AIのモデルは多機能であり、特定のタスクに合わせて調整が可能なため、基盤モデル(Foundation Models)と呼ばれています。(大規模言語モデルは基盤モデルの一種です。)

生成AI活用のリスクとリターン
現在の生成AIモデルには、大きな制約があります。最もよく知られているのは「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれる現象で、これは学習データに基づいていないにも関わらず、自信満々に見える生成AIの回答を指します。言い換えれば、架空の、創作された回答です。アート生成のようなアプリケーションでは、これは問題にはなりませんし、むしろ生成AIの望ましい「創造的」な機能でといえるかもしれません。しかし、コピーライティングやコンピューターコード生成等のアプリケーションでは、ハルシネーションによって、全てが適切である、あるいは、全てが正しい、とは完全に言い切れないようなアウトプットが出力されることもあり、生成AIの価値を損なうことがあります。
もう1つの制約は、モデルのカスタマイズに工夫が必要ということです。現在の生成AIモデルは、モデル自体と入力プロンプトに基づいてアウトプットを生成します。企業が生成AIに独自のデータソースを追加したい場合は、(プロンプトエンジニアリングによる簡易的な手法以外では、)現在のところ、コストのかかるモデルの再トレーニングやファインチューニングを行うことで、生成AIの内部モデルと統合していく必要があります。ただし、生成AIは、他のシステム(例:検索、対話型AI)と組み合わせることで、それぞれの利点を踏まえた活用ができます。例えば、生成AIを信頼できるデータベースや検索エンジンと連携させて、コンタクトセンターの既存のチャットボットと接続することで、ユーザーのニーズに即した信頼できる適切な回答を返す対話型AIを実現し、ユーザーエクスペリエンスを向上させるのに役立てることもできます。
他のAIモデルと同様に、基盤モデルは、トレーニングデータの潜在的なバイアスを再現し、差別的なアウトプットを出力することがあります。結局のところ、基盤モデルとはあくまでも言語モデル、画像モデル、音声モデルであり、正しい判断を下す知識モデルのようなものではなく、もちろん、人間のような理解力や推論能力は持ち合わせていません。そのため、信頼されるモデルとするために、適切なガバナンスが必要になります。例えば、バイアスや不正確な情報の問題を軽減するための方法が開発される必要があります。そして、データの透明性や、モデルの結果を監視・評価するためのアプローチも必要です。また、ユーザーが提供された情報の信頼性を判断できるように、情報源やリファレンスを提供する方法を組み込むことも重要です。デロイト トーマツは、Trustworthy AI やAIリスクチェーンモデルというフレームワークを提供しており、これにより、企業は生成AIを非常に高い品質で機能させ、多くの新しいユースケースを実現することが可能になります。

生成AIを使って収益を上げる
この技術によってビジネスベネフィットを生み出す方法として、2つのアプローチを考えることができます。
第一のアプローチでは、ChatGPTやStable Diffusionのような現在利用可能な生成AIモデルをそのまま使用し、チャット形式のテキストや画像生成ツールとして活用することです。第二のアプローチは、生成AIを、自社のシステムや他の技術と統合してプロセスを自動化することです。例えば、既存の業務システムや会話型AIシステム(すなわち、チャットボットや音声ボット)によってワークフローを制御しつつ、信頼できるデータベースにより事実の正確性も確保しながら、生成AIによって人間レベルの自然なアウトプットを作成し、ユーザーとインタラクションします。これにより自動化された生成AIを搭載した業務システムやコンタクトセンターが実現します。最終的には、このような第二のアプローチが最も価値のあるものになると予想されます。
デロイト トーマツは、生成AIによってビジネス成果をどのように生みだすか、またその成果をどのように検証していくかの方法論(Digital Artifact Generation/Validation)を提供しており、企業におけるイノベーションリーダーがアイデアを、生成AIのポテンシャルを活かす有益なユースケースに変えていくことを支援します。この方法の肝は、生成AIを使用するところ以外の処理、特にマニュアル処理を必要とする箇所のデザインと、生成AIからの出力を検証またはファクトチェックするための処理のデザインです。どれだけマニュアル作業が必要であり、またどれぐらいユーザー自身が結果を検証するべきなのか、という2つの軸に基づいて分析をすることで効果的なユースケースの作成を助けます。
生成AIから企業価値を生みだすには、良いユースケースを特定するだけでは不十分です
デロイト トーマツの生成AIプロジェクトからの洞察
ユースケースの特定はやるべきことの一部に過ぎません。革新的な技術が登場するたびに、企業や組織がその真新しさのためにとにかく実験をしてみることが大切とトライアルに挑むことはよく見られますが、無作為なトライアルゆえに結果として期待していたリターンを得ることができないことも少なくありません。生成AIを使ってビジネス成果を上げるには、戦略と、多様な分野のチームとの協力が大切です。さらに、生成AIのように急速に進歩・成熟している技術では、独力で前進する誘惑に陥らず、この分野の知見を持つパートナー企業、協力企業、第三者組織からの支援と知識を求めることも重要です。
現在の生成AIを活用したプロジェクト固有の複雑さは、AIのライフサイクル管理を困難なものにする可能性があり、ゆえに専門家チームとのコラボレーションが意味を持ちます。多様な分野の専門家と連携することによって、ビジネスが結果を出すのを助けることができます。これには以下のようなものが含まれます:

企業のビジネスリーダーは、生成AIがもたらす熱狂の渦中にあっても冷静な判断と着実なアクションを行うべきでしょう。デロイト トーマツの分析とプロジェクト経験に基づき、私たちは次のようなアプローチをお勧めします。
- 生成AIの戦略を策定し、それを企業の既存のAI戦略と統合・調和させる。AIを活用した組織に必要となる原則は、生成AIの活用においても適用されます(例:収集された企業データへのアクセスコントロール、AIガバナンスの実施、AI人材を活用するためのプロセス変革等)。このような急速に進化する技術では、独力で進む誘惑に陥らず、この分野で活動するパートナーや第三者組織からの支援と知識を求めることが重要です。
- 生成AIを実現する基盤技術や生成AIの現在の能力と限界を理解する。AIの使用、リスク、能力について従業員への研修を実施し、トレーニングを通じて基本的な知識を確立する。また、技術の進歩やビジネスリスク、ビジネスオポチュニティに対する影響を継続的にモニタリングしていくことも重要です。
- ドメイン知識を持つ多様な分野のチームを集め、潜在的なユースケースについて創造的に考える。ビジネスリーダー、技術リーダー、クリエイターが外部の専門家と協力し、価値あるアプリケーションを特定しつつ、事業リスクやサイバーリスク、適用される法律や規制への対応も検討することで、実効力のある生成AIの展開をデザインすることができます。
- デロイト トーマツのビジネス成果創出のための方法論(Digital Artifact Generation/Validation)を活用して、生成AIが貴社のバリューチェーンにどのような影響を与えるかを特定する。基本的な生産性向上のためのユースケースから、新しい差別化されたサービスやビジネスモデル等の高次の機会まで、デジタル化の段階的推進を実現します。
- 独自データの収集と整備を行う。 これは貴社独自のユースケースを生みだすために重要であり、企業の競争優位性や差別化を実現します。貴社が持つデータを使用して、生成AIモデルに特定の業界や市場に関するインサイトを持たせることができます。
- デロイト トーマツのTrustworthy AI(信頼できるAI)原則に基づいてユースケースを評価する。 バイアスや誤情報、帰属、透明性、および生成AIからの影響に対する企業の説明責任を含む様々な課題に対処する必要があります。Trustworthy AIは、技術が持続可能で倫理的な方法で使用され、その結果が正確で公正であることを確認するための基本原則を提供します。これらの原則に沿ってユースケースを評価することで、生成 AIの導入が企業と顧客にとって安全で価値あるものとなります。
目的地へたどり着くには、信頼できるパートナーを見つける
これまでの議論から、生成AIに関するより深い理解が必要であることが示されています。これには、基礎技術の詳細からビジネスや業界の将来に関する洞察まで幅広く含みます。生成AIの活用にあたってはその戦略的意義だけではなく、リスクとそのコントロール、信頼性の担保とガバナンスという多様な側面を検討することが重要です。
生成AIがもたらす可能性は、これまでのAI技術をはるかに超えるものであり、様々な産業や生活の側面で活用されることでしょう。しかし、それらのモデルを適切に活用し、リスクを最小限に抑えるためには、企業のリーダーや利用者がその限界と潜在的な問題を理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。
生成AIを用い、価値を生み出していくための旅路の同伴者として、私たちがいます。私たちは、世界中の組織やAI専門家と協働し、スタートアップやベンダー企業を含むAIエコシステムと連携しながら、クライアントとともにその未来に向けて前進していきます。
確かにカバーすべきトピックは多く、議論はまだまだつきません。デロイト トーマツは、The Age of With™という人とAIが協調する社会における、よきパートナーとして、生成AIの活用を支援します。
デロイト トーマツの生成AI活用支援サービス
デロイトトーマツグループは、生成AI(Generative AI)の普及と発展に伴い、企業が変革的な技術を適切に活用して競争力を向上させるための支援を続けていくことを目指し、「生成AI活用支援サービス」の提供を開始しました。
「生成AI活用支援サービス」は、デロイト トーマツ グループ横断のAIエキスパート連携組織である Deloitte AI Institute を中核として、コンサルティング、監査・アシュアランス、税務、法務、リスクアドバイザリー、フィナンシャルアドバイザリーの各プロフェッショナルが連携し、また、国内外のAI専門家とのネットワークも活かして、貴社における生成AIの戦略的活用とガバナンスの実現を支援します。