「自分で変える」ことが、社会の変化につながる。コンサル×女性活躍の新機軸

働く女性が自分らしくキャリアを築くためには、何が必要か?

3月28日、NewsPicks Studiosの人気番組『The UPDATE』では国際女性デー特別企画の第2弾を実施。

ライフステージを乗り越え、さまざまな舞台で自分らしく輝くゲストを招き、前半では「自分らしさを極めるキャリア開拓術とは?」、後半では「自分らしさを発揮できる環境とは?」をテーマに議論が繰り広げられた。

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  • 久保田 詩音 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ディレクター
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本記事では、The UPDATEにゲスト出演したデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下、DTC)ディレクターの久保田詩音さんに、いかにして自分らしいキャリアを築いてきたか、また、DTC内で立ち上げた女性のキャリアをエンパワーする新イニシアティブについて聞いた。

久保田詩音

自分らしさを発揮させる「変化を許容する文化」

The UPDATE本編での議論で、久保田さんは前半テーマ「自分らしさを極めるキャリア開拓術とは?」について「相手・自分・環境」と回答した。

「仕事をする上で、何に重心を置くのかを考えると自分らしさが見えてくると思います。

例えば、一緒に働く人なのか。自分のやりたいプロジェクトなのか。柔軟に働ける環境なのか。

もちろん全て大事ですが、私は一緒に働く人にこだわってきました。尊敬できる人や好きな人と働けることが、何よりも大切だと。

自分は何を大切にしたいのかを考えて、意識的に重点を置いてキャリアを選択することが、自分らしいキャリアを築くカギだと思います」

加えて、「今は、相手だけでなく自分も大切にするようになりました。自分らしさも、どんどん変化しているんです」と久保田さん。

「私自身、妊娠、出産、介護といったライフイベントを経て、自分が楽しくワクワク働ける仕事をすることが自分らしさにつながるようになりました」

後半の「自分らしさを発揮できる環境とは?」に対しては、「変化を許容する環境」と回答。

「自分らしさを発揮できる環境は、同時に、誰もがみなその人らしさを発揮している環境だと思っています。

自分らしさは変化するものなので、たくさんの変化を許容できる必要がある。そして変化を許容するためには、挑戦と、変化による成功体験が重要です。

挑戦を後押しして、メンバーが成功体験を積み重ねることで、変化を許容でき、自分らしさを発揮できる環境ができあがっていくのではないでしょうか」

番組終了後、久保田さんに追加インタビューを実施。いかにして自分らしくキャリアを築き、そしてなぜ、DTC内で女性活躍を支援する新ブランド「Deloitte Women in SAP」を立ち上げたのか、変化する自分らしさとの向き合い方を軸に聞いた。

「心に体がついていけなかった」

──久保田さんご自身は、出産を機に壁にぶつかったと伺いました。

そうですね。新卒からコンサルファームに入り、楽しく働いていたんですけど、子供が生まれると物理的に仕事をやり切れない状況になりました。

打ち合わせを途中で抜けなければいけなかったり、クライアントの対応ができなくて同僚にサポートをお願いしなければいけなかったり。

これまでのペースでやれると思いたい心に対して、体がついていかなくなってしまうんです。やり切りたいけど、30分時間が空くなら、資料を作るよりも眠りたい。そんな状態でした。

当時はそれまでの自分との落差に、モヤモヤしていました。「こんなの自分らしくない」って。それでも、1年くらい子育て生活を続けると、徐々にルーティンができて、余裕ができます。

朝は子供と一緒に起床して、家を少し片づけて、昼間は疲労が蓄積するから少しゆっくりして、回復したら戻る。これなら続けられる、という働き方に落ち着きました。

そこで気づいたのは、それまでと大きく異なるリズムで生活をすると、自分らしさが変わるということ。

できるだけ生産性高く価値提供するために工夫をしていた自分から、「ゆとりを持って働こう」と、柔軟でできるだけ快適に楽しく働けるように工夫する自分に変わっていったんです。

──ライフイベントを機に、自分らしさが変わったんですね。

はい。子供を育てながら働くとか、一定期間は子育てに専念して少し仕事を休むとか。子育てをする上での働き方の選択肢はたくさんありますし、どれが正しいとかではないんだと気づきました。

自分が決めたやり方が一番正しい選択ですし、それが「その人らしさ」だと考えています。

ただ、一つお伝えしたいのは、「子育ては大変だろうから、仕事はセーブした方がいいよ」と人に言われて自分のスタイルを変えるのと、自分で試行錯誤してたどり着くのとでは、自分の中での納得感が違ったということ。

──自分で決めて、試行錯誤の末に見つけるから、自分らしく輝ける。

そうです。私の場合、自分で見つけることが大切だったと思います。

ただ、自分で見つけるって意外と難しくて、現在、3カ月前に立ち上げた「Women in SAP」を通して社内の女性たちと交流していますが、まだまだモヤモヤしている方はたくさんいらっしゃいます。

ライフイベントによる価値観や自分らしさの変化に対して、自分自身が追いつかなかったり、環境が整備されていなくて閉塞感を感じてしまったりして、パフォーマンスが落ちてしまう。

自他ともに、変化を許容することこそが、自分らしさを発揮させる一番の方法だと思います。

自分らしさって一度見つけると、心が軽くなって、道しるべや灯台のようなものになるんです。何か迷った時に、「私いま自分らしくないな」と振り返る指標にもなる。

だから会社や組織は、誰もがその人らしさを見つけられるように、真摯にサポートしていく姿勢が求められると思います。

そうなれば、みんなが自分らしく輝いて働けるようになると思うんです。

自分がぶつかった壁は、丁寧に取り除きたい

──そんな久保田さんが主導する「Women in SAP」とは、どういった組織なのでしょうか。

DTCでは、女性活躍を戦略上不可欠な成長ドライバーだと位置付け、「Women in Tech」というブランドを通して学生からキャリア層まで、ワークショップやキャリアフェスなどの機会を提供しています。

テクノロジー領域に進出する女性の増加をミッションとする中で、SAPに関わる女性を増やすことに特化したブランドが「Women in SAP」です。日々クライアントのビジネス課題に向き合い、ビジネスの根幹を支える経営基盤や基幹業務に対するテクノロジー・デジタル導入を支援しています。

この領域では、経理や購買といった専門性を極めたり、経営視点が開拓されるなど、幅広いキャリアの選択肢が用意されています。だからこそ、経験・未経験問わずに多様性に富んさまざまなバックグラウンドの人材が活躍しています。

しかし、ここで活躍する女性人材はまだまだ少なく、採用で人を増やそうにも、そもそもマーケットに人がいない状況です。

ならば、マーケット自体を変えていこうと立ち上がったのが「Women in SAP」です。これからキャリアを考え始める学生や、キャリアを悩まれている女性に向けてSAPキャリアに特化したプログラム提供や啓発活動を行っています。

Women in SAP 活動の様子

本来、テクノロジーに関わる仕事は比較的柔軟に働けるはず。にもかかわらず、周囲の働き方や男性比率の高さがネックとなり、経験者の方もライフイベントを機に転職されるケースがあります。

こういった現状も変えていく必要があると感じて、組織内の女性活躍推進も担っています。

──久保田さん自身の思いが込められたプロジェクトでもあるということですね。

私は、自分がぶつかった壁に対して、真剣に立ち向かいたいんです。そして後進のためにも、その壁は丁寧に取り除きたいと考えていますし、そういったサイクルが社会に変化を与えていくんだと思います。

私が取り組むことで全ての課題が解消されるわけではないけれど、私自身が感じたやりづらさは良い方向に変えられるかもしれない。そして、次に同じシチュエーションになった方に、同じ苦しい思いをしないでほしいな、と。

──「Women in SAP」はどういったメンバーで活動されているのでしょうか。

IT業界出身者ももちろんいますが、看護師出身の方や、薬の臨床研究をされていた方もいます。

「SAPでどういったキャリアを描くといいか分からない」「自分らしさが分からない」「女性のキャリアパスとは」といった悩みに共感する方々が集まって、定期的に会話を重ねています。

やっていることとしては、まずはメンバーと話して、個人またはチームとして「実はやってみたいこと」「興味があること」を引き出す。そして、周辺の小ネタを集めるというか、Women in SAPの目的に照らし合わせて施策化できるようなヒントを探索します。社会の変化だったり、社内でのアンケートだったり。

実際に走り出すと、メンバーみんなが進めていく中で「これがやりたかったことだ」とオーナーシップを持つようになっていますね。それに「意外と変えてもいいんだ」ということにも気づくようになります。

この「変えてもいいんだ」というポジティブなインパクトの連鎖が広がっていくと、挑戦がより後押しされて変化を許容しやすい環境が育っていくと思います。コンサルファームなので変化や挑戦に寛容な文化が支えになっているのかもしれません。

──最後に、なぜ久保田さんはそこまで「Women in SAP」に熱量を持って取り組めるのでしょうか。

本気で現状を変えたいんですよね。

「未来を変える」って、すごく大きく聞こえますけど、ずっと続けていれば、例えばここから20年先の未来なら変えられそうじゃないですか。

今と違う世界を見てみたい。自分が悩んだことは、解決された未来をつくりたい。そんな熱量に突き動かされている感覚があります。

あとは、自分自身が自分らしく輝きたいんだと思います。

そのために、みんなが自分らしく輝ける環境をつくる必要があると思っています。

SAP領域で働く女性を増やすために考えなければいけないことは多いですが、今ここで働く女性一人一人が自分の「なりたい姿」や「できたいこと」を見つけられるようになることが土台になる気がしているので、まずは私にできることから後押ししていきたいですね。

NewsPicks Brand Design制作
※当記事は2023年4月20日にNewsPicksにて掲載された記事を、株式会社ニューズピックスの許諾を得て転載しております。

【関連リンク】

Women in SAP
私が創る私の未来がここに

※本ページの情報は掲載時点のものです。

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